告白!
「見てほしいんだ! 僕の気持ちが書いてあるから!」跪いている男はそう言った。
「ふん……スマホ係!」神楽坂は言った。
「はい!」するとスマホを持った女の子がスマートフォンを神楽坂に差し出す。
「どれどれ……神楽坂さん。3年前からずっと好きでした。初めて出会った時神楽坂さんは微笑んでくれましたね……その時から……あーーもう長いわ!」神楽坂はそう言ってスマホ係にスマホを返す。
「よっ読んでくれないの?」男は言う。
「なんで読まないといけないの。3年間ねぇ……最初に告白しとけば3年間も無駄にせずに済んだのにねぇ」意地悪そうに神楽坂は言う。
「え? それはどういう意味?」男は引きつりながら言う。
「ところでねぇ。あんた。あれは持ってきたの?」と神楽坂は言う。
「あぁ持ってきたよ。告白料3万円……」男は封筒を取り出して言う。
「告白料3万円?……また値上げしたのかよ」周囲のギャラリーがそうざわつく。
「告白するだけで3万円って」女の子がそう言った。
告白している男は封筒を神楽坂に渡す。そして言った。
「その封筒の中に俺のラブレターも入っている。どうか見てほしい。あと電子マネーじゃ駄目?」男はそう言う。
「電子マネーだと税務署の連中にバレちゃうでしょ……そんなことも分かんないの? あんた」神楽坂はそう言うと封筒から3万円を取り出し数える。そしてラブレターらしき便箋を取り出した。
「サクラ!」神楽坂はそう言う。するとサクラと呼ばれた女性がシュレッダーを持って神楽坂の前に姿を表す。
「何をするんだ。ちょっとまってくれ……」男はそう叫んだが、ウィーーーーン!!
神楽坂は容赦なく男の書いたラブレターをシュレッダーでズタズタに裁断した。
「あぁ……」うなだれる男。
「ヤベエなぁ。神楽坂の必殺技だ。目の前で必死に書いたラブレターをシュレッダーにかけられる。これは効くぜ」俺の隣りにいた獅子雄がそう言った。裁断する前にせめて中身を見ればいいのに。俺はそう思った。
「そうねあなた一応チェックしとくか……木苺! チェックして!」神楽坂はそう叫んだ。すると小柄な女の子が前に出てスマホを取り出す。
「イケメン度チェックします……」そう木苺と呼ばれた女の子はスマホのカメラを告白してきた男に向けた。
ピピピピピ……不気味な音が廊下に鳴り響く。
「出たよ! イケメン度5」周囲がざわめく。
「イケメン度5ってヤバいだろ……」
「よくそんなんで告白しようと思ったな……」
「身分不相応にも程がある! 恥を知れ! 下衆!」様々なヒソヒソ声と怒号が廊下に響く。
「イケメン度5? なにそれ雑魚じゃん。あーー時間の無駄だった」神楽坂は残酷な笑みを浮かべてそう言う。
「そっ! そんな数字だけじゃなにも分からないじゃないか!」男はそう言った。すると神楽坂は「フンッ!」っと鼻で笑う。
「それが分かるんだよね。このアプリを使ったら」小苺が喋りだす。
「このイケメン度チェッカーはかっ……カメラで写した対象の将来性、人気度、顔やスタイルなどからしょ……総合的に判断するアプリケーションなの。悪いけどあなたの市場価値は5ってこと!」と小柄でたどたどしい喋り方ながらそう言う。
男はうなだれた。絶望に打ちひしがれて声も出ないようだ。
「なんて奴だあいつ……」獅子雄は思わず唸り声をあげる。
「あのイケメンチェッカーはとっくにサービス終了したハズじゃん」トウマが言う。
「あぁ。人間の価値を数字で示すなんて明らかに差別だからな。とっくにあのアプリは規約違反でBANされたハズだが……なぜあいつが……」ネコマルが言う。
「お願いです。土下座するので足で頭を踏んで下さい!」男はそう言って土下座した。
「土下座ぁ? 弱い男の土下座になんの意味があるの? 日常的にヘコヘコしながら歩いているようなあんたが?」神楽坂はそう言った。
「クソっ! 流石に言い過ぎだ!」俺はつぶやく。
「おい! 気をつけろ! シュレッダーズに聞こえるぞ!」シシオはそう言って俺に耳打ちした。歯を食いしばる俺。シュレッダーズ。要するに神楽坂の取り巻きだ。常にシュレッダーを抱えて神楽坂と歩いているからそう言われている。
「ねぇ! 誰か! 誰があたしに告白してみない? 今なら気分が良いからオッケーするかも知れないよ!」神楽坂がポーズを決めてそう言う。ざわめく周囲。
よしっ! 俺がここで汚名返上してやる!
「よしっ! みんな……俺が行く! 下がってくれ!」俺は言った。周囲がどよめく。
「あのスクールカースト上位者の朱雀樹が!」
「すげぇ! 竜虎相打つだぜ!」ギャラリーが叫ぶ。
よし! 俺が……! 俺が行ってやる! あいつに復讐するために俺はリア充イケメンになったんだ。俺はそう思いながら一歩踏み出した。あ? 踏み出せてない! 恐怖で足がすくんでまったく動かない!
俺にあの時の思い出がフラッシュバックする! 夕焼けの教室で悲惨なフラレ方をした俺。あの時の記憶が俺の足を止めた。動けない! 一歩たりとも。
「さぁ! どうなの! これだけ男がいて誰も告白出来ないの?」両手を上げながら神楽坂は言う。クソッ! 俺は……まだ駄目なのか?
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