過去のトラウマ(胸クソ注意!)

◇過去のトラウマ回です。ちょっと胸クソ展開かも知れません!


銀色の髪、透き通るような肌。だれがどう見ても信じられないほどの美少女だった。だが、俺はあいつのことが大嫌いだった。


「来たよSSS級美女。誰にも討伐できねーわ」ネズオがため息をつくように言う。

「神楽坂さんやっぱり可愛いな……性格にちょっと難ありだけど、それがまた魅力的って言うか」トウマが言う。


「なんだよお前らあんなのが好きなのかよ。俺あいつで100回くらいしかオナニーしたことねぇわ」シシオが言う。おいおいお前ここ教室だぞ。


「流石にやりすぎだろ」トウマがシシオに突っ込む。照れたようにシシオは笑った。


俺は昔のことを思い出していた。小学校時代のことを。俺と神楽坂は小学生の時にクラスメートだった。俺は例にもれず神楽坂のことが好きだった。神楽坂は小学生の時から美少女として有名だった。ただその性格の悪さを除いては……


小学生の頃……


繰り返すが俺は神楽坂が好きだった。なぜなら神楽坂も俺のことが好きだと思っていたからだ。教室でよく目が合うし、俺にだけ笑顔を1.5倍盛りで見せてくれる。神楽坂に朱雀くんの好きな人って誰? って聞かれたし、手をギュッと握られたりもした。だが、ここにいる神楽坂はまるで俺を汚物を見るような目で見ていた。


小学校の教室。俺は神楽坂に告白していた。

「ちょっと! オタクって無理!w」神楽坂は笑った。え? 俺は神楽坂の態度にビックリする。

「てかさ、君みたいなオタクくんの告白って暴力だよ。それ分かってる?」神楽坂は俺に止めをさす。

「メガネもダサいしさぁ。服もダサイ。ちゃんと歯を磨いてる? ごめん。やっぱ全部ないわ」神楽坂は鼻で笑う。夕焼け放課後の教室で神楽坂は言う。


俺はショックで手がプルプル震えた。俺はこの日のコーディネートはバッチリ決めたつもりだった。家にあった一番いい服を選んだ。それで、お母さんに採点してもらって100点が出たのに……


「ユイーーここ?」と言いながら神楽坂の友達が教室に入って来た。

「あっ! サクラ」空気を読まず教室に入って来たのは同じくクラスメートの成宮桜だった。短髪でいわゆるスポーツ少女だった。


「あっ! ひょっとして今告白されてる感じ?」サクラはそう言うと口に手を当てて慌てた。

「あー大丈夫だよ。すぐ済ませるから」と言うと神楽坂は俺に向き合った。そして笑った。


「私面食いだから。格好いい人じゃないと無理なんだ。だから無理。出来たら二度と話しかけないで」と言って神楽坂はサクラの方に走っていった。


うなだれる俺。

「ごめんね。ユイちゃん。邪魔しちゃって」サクラは言う。

「いいよ。サクラが来てくれて助かったよ。もう少しで襲われるところだった」ユイはそう言いながら教室をあとにする。


俺は膝をついた。涙がこぼれ出る。初恋だった。それをこんな風に終わるなんて。恋心はなんて厄介なものなんだろう。俺は小学6年生の時、そう悟った。


次の日学校に行くと女子たちの様子がなんだかおかしい。まるで俺を恐れるような……怯えたような表情で見ていた。俺は教室の席に座った。すると教師から声がかかった。


「おい、朱雀! 朱雀! こっちこい」教師に呼ばれて俺は行くと女子たちがクスクスクスと笑う。一体なんなんだこれは……俺は状況が掴めない。


「朱雀お前神楽坂に告白したか?」教師が俺にそう聞いてきた。えっ? 俺は驚く。なんでこんなおっさん教師が知ってるんだ。


「神楽坂が泣いててなぁ。イキナリ教室に呼び出されて二人っきりにされて。怖かったって……お前本当か?」教師はそう言う。えっ? 俺は衝撃を受けた。唇がワナワナ震える。


「はい。僕が告白しましたけど……」俺はそれ以上の言葉が出てこない。


「お前悪いけどそういうのはやめてくれ。神楽坂が怖がってるんだ。お前の告白で。分かるな? これは大人でもそうだぞ。あまり知らない人にイキナリ告白されたら気持ち悪いだろ?」教師はそう言う。


「はい……ごめん……ごめんなさい……」俺はそんなに大事になるとは思ってなかった。俺は泣いた。目から大量の涙がこぼれ落ちた。悔しい。悔しい。悔しい。なんで先生に怒られなくちゃならないんだよ! メガネに涙が落ちて俺はメガネを外した。俺が誰かを好きになるのはそんなに罪なことなのか?


「これから気をつけてくれたらいいから」そう言うと教師は俺の前から消えた。俺は教室に戻った。すると女たちはビクッっと大げさに怯えて見せた。その反応は俺の心をズタズタに引き裂くのに十分だった。


クスクス笑う女たち。結局こういうことだ。俺みたいなオタクは人を好きになってはいけないんだ。それは加害行為なんだ。女たちにとっては。俺みたいな陰キャは性欲のないマスコットみたいな存在なんだ。


決して欲情してはいけない。決して愛を伝えてはいけない。その瞬間クラスの女たちから嘲笑という銃口を突きつけられる。


俺は一人席につき眠るふりをして机に突っ伏した。それで、腕で耳を塞いだ。


そこからの卒業までの日々は最悪だった。まぁ軽いイジメのようなものだ。クラスメートたちの中で俺のあることないことが噂される。俺はそれに抗うすべはない。


クラスメートから見たら俺はとんでもない性犯罪者みたいなものなんだろう。でも俺はそれに反論出来なかった。何を言われてるのか分からないし、俺が話しかけるだけで向こうは逃げていくだろう。


俺は復讐を誓った。



「ユイ! 俺と付き合ってくれ!」突然男の声が聞こえる。俺はハッっとして現実に引き戻された。よく見ると男子学生が跪いている。そして、花束を持って神楽坂に告白していた。女たちがキャーーー!! っと騒ぐ。


「マジか! あいつ神楽坂に告白するつもりか!」シシオはそう言う。


「オイオイ何だアレは……」俺はつぶやく。スマホを取り出して告白シーンを撮影する生徒たち。マジか。廊下でみんなの見てる前で告白するのか。しかし、これをスマホで撮ってどうするんだよ。SNSに拡散するのはやめてやれよ。俺たちもその告白を見守るギャラリーに参加する。


「なに……あなた」神楽坂が見下したようにそう言う。そして告白してきた男を見据える。

「ずっと好きだったんだ! 神楽坂さん! インスタでDM送ったの見てくれた?」とその男は跪きながら花束を持って叫んだ。


「DM? そんなのあたしが見るわけないじゃない」冷酷に神楽坂唯は言う。なんてやつだ! 変わってないじゃないか! 神楽坂!

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