第36話 護衛騎士バルド

「リルア様。今日から自分もリルア様の専任の護衛に付かせていただきます」

「バルド。一体どうしたの? その頬も……。誰かに何かされたの?」

 王宮の私室でアナベルに身支度を整えて一息入れていたところバルドが訪ねてきてそう言われてまじまじと彼を見つめてしまった。だからバルドの頬が少し赤くなっていた気がついた。

 バルドは黙り込んでしまったが、どうみても叩かれた跡のように思える。

 ――フォルティスお兄様が叩いたとか、まさかね。それとも聖地の聖女様か……。もしかして神官様? でも、どうして?

「フォルティス様から私はもう側に必要ないと言われました。あの聖地の聖女のマリカ様や神官のルドガー様の前で。これから聖地の神官がフォルティス様をお守りするそうです。食い下がりましたが、このざまです。あまりにも無念」

「そんな……。バルドは小さい頃から、お兄様の為に頑張っていましたのに。一体どうして……。私から一度お兄様に尋ねてみましょうか?」

 でもあのようになってしまったお兄様と正常な話ができるのだろうか?

 一抹の不安が胸をよぎった。でもそれを周囲には悟らせてはいけない。

「いいえ。どちらにせよ。このような状態になっておりますのでリルア様さえよければ是非とぞお願い申し上げます」

 そう言ってバルドは私に頭を下げた。

 ――バルドを手放すなんてフォルティスお兄様は変わられた。悪い意味でだけどね。

 最近の王宮はどこかおかしい。

 私はまだ子どもだから、夜会にはまだ出席したこはないのでエイリー・グレーネ王国全体の動きは良く分からないけれど。あまり良くない感じ。

 エイリー・グレーネ王国の王城を我が物顔で練り歩く聖女マリカ。彼女は可愛い天真爛漫な様子だけどあれで本当に聖女なの?

 私はバルドを自分の側におくことにした。

 正直なところ護衛と言うか、一緒に戦える仲間が欲しい。

 確かにバルドは十分強いし戦力になる。

 強さならお城の武道大会でバルドの戦うのを何度も見たことがあるからそれなりに分かるつもり。

 でも、バルドは『薔薇伝』には出てこないからどのような役回りなのか分からないのが不安だった。

 でも、私にとってバルドは兄のような存在だった。

 いつも王宮でバルドとフォルティスお兄様、私、アナベルで遊んでいたから。たまにあのマドラも乱入してきたけどね。

「戦力だけでなくいろいろとバルドには頼むことが出来ると思います。よろしくお願します」

 バルドにそう言うと王宮の私側の部屋へ移るように話していたらドアがいきなり開いた。

 ――部屋の前に護衛が立っていたはずどうなっているの?

 私は身構えた。だが、入ってきた人の顔を見て内心でうんざりしてしまった。

「あら、ここが王女様の部屋ね。白くて可愛い部屋じゃない。私にぴったりよね。私はあんな客間でなくてここが良かったな。そうだ。代わってよ! ね、いいでしょ?」 

「聖女マリカ様。マリカ様に用意してある部屋は最上級です。私の部屋より余程良い部屋ですが……」

「いやよ。あんな陰気臭い部屋。ここみたいに可愛い部屋がいいの」

「失礼。聖女様。どうかご用意されているご自身のお部屋にお戻りください」

「あら、あなた。バルドね! 王女様に取り入ったの?」

「御冗談を」

 バルドはそう呟くと頭を下げたままだった。

 ――聖女ってこんなに空気読めなくて、わがままだったの? 『薔薇伝』でやったことのないキャラだものね。


 ◇◇◇あとがきめいたもの◇◇◇

 初稿になるので訂正が入るかもしれません。他サイトでも掲載しておりますが、全く別物と言えます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る