暁の薔薇の伝説～滅ぼされる国の王女みたいです～

第2話 亡国の虚弱王女として覚醒

　気がつけば再び私は暗闇の空間の中でいた。

　暗い中で周囲を見渡すとどこまでも濃い闇の中。先程までの音も光も何も無かった。

　その中で、私はさっきの光景を見た衝撃で私は思い出したことがあったからだ。

　ここがフリーシナリオ制のＲＰＧゲームの『暁の薔薇の伝説～光と闇の神々の聖戦～』の世界に似ているということを。

　そのゲームは通称『薔薇伝（ばらでん）』と呼ばれ、結構人気を博していた。

　プレイとしてはまずメインの主人公の五人の中から一人を選び、それぞれの選んだキャラによってゲームは進行する。

　基本はＲＰＧなのでモンスターを倒したりイベントや依頼をこなすと得られる経験値でレベルが上がるようになっていた。それからキャラによって個々のエンディングまでのストーリーが変わっていく。よくあるマルチエンディング・システムというものだった。

　但し、どのキャラを選んでも変わらないメインのストーリーがあって、それはゲームや小説によくある王道のパターンのもので、この世界を司る主神、光の神と闇の神が世界の覇権を争うことにより主人公達が巻き込まれて、闇の神と戦うことになるとというものだった。

　私は最初に選べる主要キャラの五人のうちの一人で、そのゲームの舞台が始まるきっかけとなった闇の神により滅ぼされた国のリルアという名の王女様というこれまたベタなキャラなのだ。

　ゲームの設定では確か国が滅亡したのは私の一歳上の兄でこの国の王太子でもあるフォルティス王子が光の主神の祝福を受け、この世界を破滅の闇から救う勇者だと予言さたことによる。それが敵である闇の神にも伝わったことで闇の神の手下どもに光の勇者を殺すように命じたため、闇の軍勢に国ごと攻め滅ぼされてし

　私、リルアはその攻めてくる闇の軍勢からお兄様と共に逃げ延びる最中に離れ離れになってしまう。

　これもベタな設定過ぎるけれど、リルアはこの戦いで悲運の王女として語り伝えられ、流行りの歌にまでなっていた。そう、酒場なんかで詩人に歌われるの。この歌のシーンは何かとイベントの前振りとして使われていた。オープニングやエンディングにもね。

　落城したあとは私もお兄様も二人ともほぼ死亡よりの生死不明となるけれど、お互い希望を捨てず行方を探して再び王国を再興をしようと旅に出るのがこの二人のストーリーの始まり。そして、それがメイン・ストーリーでもある。

　そして、捜索の旅の中、光の神の導きにより、迫りくる闇の軍勢に対抗する勢力も各地で出来つつあり、それぞれのキャラが各地を回ると、友軍に誘われたり、闇の手下に対抗して共闘したりするイベントが起きる。これは全キャラ共通のもので、そこには冒険と友愛のイベント満載だったように思う。

　因みにフォルティスお兄様はこのゲームのメイン中のメインキャラでゲームのパッケージイラストの中央で武器を持って構えている三人のうち真ん中に描かれている。

　そして、私はその右端で両手を組んで儚げな様子で天を仰ぐようにしている。公式設定ではリルアは亡国の薔薇、カルナシューンロサとか暁の姫、エイリーバン・プリセサとか呼ばれて、ゲーム内でも慕われていることになっていた。実際、プレイヤーからも人気が高かった。

　なんたってリルアは神絵師によって描かれて超絶可憐な美少女様、白金の髪は緩やかに波打ちまるで光のベールのような美しい長髪。愛らしくそれでいていつも潤んだような薄青の瞳。本当に超絶可憐な美少女に描かれていたのだ。

　なんといってもゲームのメインヒロインの一人だしね。

　それに人気の発端となったのは国が滅亡するときから、リルアに護衛として付き添っている魔法使いのサブキャラとの許されない主従愛のようなイベントがあって、そこから二次創作界隈では沸いていた。

　一応、私も当時リルアを選んでゲームをプレイしてみたことはある。

　あるけど実は基本ステータスが弱すぎて物足らず、途中で放棄してしまったのだ。私にはちょっと使えないキャラのイメージだった。

　私はそんなこと思い出していた。

　するとここは真っ暗なはずだったのに微かに自分の姿がぼんやりと光っているから自分の姿が見えることに気が付いた。――するとどこからか、

『救って……、どうか……』

　微かに聞こえた声に私は慌てて周りを見渡した。でも周囲は仄暗い闇だけだった。

「え？　なに……」

　私の声に合わさるように急に周囲の闇が蠢き、周囲で渦巻き始めるとその流れに私は巻き込まれるように意識を失ってしまった。