第15話

 闇から現れたカリバーは、レッドに向かってこう発した。


 「久しぶりだな、レッド」


 「カリバーさん?何であなたが?」


 「今は魔騎士カリバーではない。亜騎士のネストだ」


 そう、レッドの父を見捨てたカリバーは、その後すぐに、自らもしに直面し、ワイルドタイムに入って、とまらず亜騎士になったのだ。


 「なんで、父さんを裏切った」


 「なんで?うらやましかっただよう。お前やきれいな奥さんに囲まれて、凄腕の魔騎士とちやほやされて、理想の生活を送っていたお前の父親が。そして、今はお前も幸せそうじゃないか。だから、ダークの後継者になった俺が、お前を獣に襲わせたんだ」


 ネストは、伝説の災厄の亜騎士 ダークの後継者になったのだ。


 「あんたが、俺を?」


 「ああ。だから、今日はなかなか死なないお前を、俺が直に殺しに来た・・・といいたいところだが、俺が殺しに来たのは、ゼロ、お前だ」


 ネストは、倒れているゼロを指差す。


 「何でだ?ゼロは関係ないだろ」


 「うるさい」


 ネストは両手を挙げると、そこから出た闇の玉が、観客に襲い掛かる。


 そして、叫び声とともに、観客、MC、スタッフ全員がバトルドームから姿を消した。


 「なぜかって?お前は、こいつと会ってから、幸せそうな顔をしてんだ。お前を直接殺すのもいいが、大切な人が自分の目の前で死んでから、死ぬってのもいいかなって思って」


 「やめろ!」


 ワイルドタイム状態じゃなくなったレッドは、ぼろぼろの体で立ち上がり、ネストに襲い掛かる。


 「お前は、邪魔なんだよ」


 ネストがレッドに向けて腕を振るうと、そこから出た闇の波動によって、レッドは再び壁にたたきつけられ、気絶した。


 「そういうことだ、ゼロ。いっておくが、バトルドームの能力はきっておいた。だから、控え室には転送されず、ここで殺されるんだ」


 「・・・」


 立ち上がったゼロは、零式を構えて、ネストにダッシュして言った。


 「おりゃあ」


 両手に暗黒の玉を出したネストは、向かってくるゼロに向けて、放った。


 「・・・」


 それを、二つすべてよけ、不適に笑っているネストにたたきつけた。


 「ふん」


 だが、ネストは右手に暗黒に染まった件を出すと、零式の斬撃を防ぎ、ゼロを後ろに弾き飛ばした。


 「・・・」


 ゼロは、足をまげてすぐさま、再びネストに襲い掛かっていった。


 「こりないねえ」


 レッドにやったように、闇の波動を飛んでくるゼロにたたきつける。


 「・・・」


 攻撃を受けたにもかかわらず、ゼロは一言も発することはなかった。


 「むかつくやつだね」


 高速で、ゼロの前にやってきたネストは、暗黒の剣をゼロに向かって振り下ろす。


 即座に、ゼロは零式で防いだ。


 「はあああああ」


 ネストは、剣に体重を乗せるネスト。


 だが、ゼロはそれを力を入れて、今度はネストを弾き飛ばした。


 「ぐ、やるじゃん」


 弾き飛ばされたネストは、何小物の暗黒の玉を、ゼロにたたきつけた。


 「・・・」


 ゼロは、暗黒の玉が自分に来る前に、零式をその場で振るった。


 そうすると、なんと刀から斬撃の波動がくり出された。


 その波動は、玉すべてにあたり、破壊された。


 「能力かい?教えてくれよ、お前の能力は何だ?」


 「ただの・・・」


 「ただの?」


 「ただの人間だ。能力はない」


 「何?」


 「・・・」


 それだけを言って、黙ったゼロ。


 ゼロは、ただの人間。


 魔騎士は能力がなくてもできるが、能力なしに戦う場合、死と隣り合わせになる確立が倍になる。


 だが、ゼロはそれでも強い。


 さっきの波動は、一流の剣士が出せるか出せないかの技。それを、ゼロは一ヶ月で自然に身につけたのだ。


 そして、ゼロは音速でネストに走っていき、一メートルぐらいになると、零式をたたきつけた。


 それをネストは黒い剣で防いだ。


 だが、ゼロは一回、もう一回、もう二回と剣にたたきつけ、七回目にしたから切り上げ、剣を中に弾き飛ばし、がら空きになったネストのはらに、零式で斬り放った。


 の、はずだった。


 だが、なんと零式の鋭い銀色の刃が、ネストの体を通り過ぎた。


 零式がどんなに切れ味が鋭くても、人を真っ二つにすることはできるかもしれないが、亜騎士のネストは、黒い鎧を着ている。なので、不可能といっていい。


 だが、通り過ぎたのだ。


 「ふふ」


 不適に笑ったネストは、ゼロを蹴り飛ばした。


 「はははは」


 蹴り飛ばすと、ネストの体が元通りになっていく。


 「お前のその剣は、封印刀だろうが、俺の闇は防げないようだな」


 「・・・」


 「行くぜ」


 矛先が地面に刺さっている剣に手をかざすと、剣が闇になり、ネストの手に転送された。


 そして、その剣を構え、ゼロに走っていき、剣をたたきつけた。


 「・・・」


 ゼロは軽やかにターンして、その攻撃をよけて、再びネストを斬りつけた。だが、また刃は通り過ぎ、ゼロはネストの攻撃によって、 「終わりだ」


 ネストは剣を天にかざすと、その矛先から暗黒の巨大な玉が現れ、剣を下に振るうと、暗黒の玉も、倒れているゼロに向かっていく。


 「・・・」


 その暗黒の玉を、もろに食らうゼロ。


 「ははははは。死んだか」


 暗黒の玉が消えると、そこには鎧もろともぼろぼろになっているゼロの姿だった。


 「まだ・・・」


 だが、ゼロは死んでなかった。


 あのゼロとは思えないふらふらなすがたで立ち上がるゼロ。その目は、死んでいなかった。


 「俺は、弟も、レッドも守る。ついでに世界も守ってやる。俺は、守りたいものがあるんだ!」


 そう叫んだゼロの体が、白く輝いていった。


 「何?ブリッツ遺伝子?」


 そう、ゼロは能力はないが、ブリッツ遺伝子の持ち主。


 ゼロは刀を鞘にしまうと、武器を持たない状態でネストに走っていき、距離が縮まったところで、左足を炊く上げ、その左足が元に戻る勢いで、右足を上げて、ネストに向かってハイキックを放った。


 「ぐう」


 なんと、その蹴りは闇のはずのネストにあたり、ネストは壁にたたきつけられた。


 「ふん。ワイルドタイムで、俺に触れるようなったか」


 「・・・」


 再び零式を抜いたゼロは、立ち上がったネストに、雷速で走っていった。


 「はあああ」


 その場で剣を振り払い、さっきの波動よりもより強力な黒き波動が放たれた。


 だがそれを雷速でよけ、零式をたたきつけた。


 「く」


 ネストはそれを、剣でぎりぎりでよけてはじいたが、ワイルドタイムに入ったゼロは、すぐさまネストを斬りはなった。


 「ぐわああああ」


 倒れるネスト。


 ゼロは零式を突き刺そうと思ったが、ネストは闇になって、反対側の壁に映った。


 「おおおおお」


 ネストは無数の暗黒の玉を放つ。


 ゼロはそれを感知して、ネストのほうを振り向くと、暗黒の玉が襲い掛かってきていた。


 「・・・」


 それを、裸子億で走りよけたり、零式で斬り放ち、ネストに近づいた。


 だが、ワイルドタイムの時間が、五秒に差し掛かった。


 五秒


 零式を構えた。


 四秒


 ネストの懐に入る


 三秒


 お尻を後ろに引く。


 二秒


 体をネストに寄せる。


 一秒


 ネストを斬りつけた。


 零秒


 刃がネストにあたった。


 だが、その零式の刃は、ネストの体を通り過ぎた。


 「はっはは。時間切れだ」


 ゼロを殴り飛ばしたネスト。


 「こうなったら。あれしかないか・・・」


 そう小さな声でささやいたゼロは、零式の矛先をネストに向けた。


 「ま、まさか」


 ゼロが何をやるのか察したネストは、あせりお恐怖感が芽生えた。


 「・・・」


 ゼロがゼロ式に力を入れると、ネストは強制的に闇になり、零式に吸い込まれていった。


 「俺を封印したら、お前の命も引き換えだぞ」


 封印刀は、モンスターや亜騎士の能力を低下するほか、強力なモンスターなどを、自分も封印することで、封印することができる。


 「うわああああ」


 闇になったネストは、零式に封印された。


 「レッド?」


 ふと、レッドのほうを向いたゼロ。だが、そこにはレッドの姿がなかった。


 「俺にもかっこいい格好させろよ」


 そうレッドの声が聞こえると、零式が何者かによって奪われた。


 その人物は、いつの間にか目覚めたレッドだった。


 「じゃあな」 


 そうにっこり笑って、零式に吸い込まれた。そして、完全にネストは封印された。


 「レッド・・・」


 両膝を突き、刀を両手で持つゼロ。


 「うわああああああ」


 ゼロは、泣き叫ぶ。


 だが、レッドは後悔してないだろう。


 いつものように、にっこり笑っているだろう。

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ナイトゼロ 高見南純平 @fangfangfanh0608

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