第7話

 「ドン」


 二人が練習場で、再び訓練していると、隣の訓練場から、爆発音のようなものが聞こえた。


 「何だ?」


 「いって、見ましょう。レッドさん」


 そう言って、二人は訓練場から出て、隣の訓練場に向かった。


 「こ、これは


 その訓練場にて、二人が目にしたのは、モンスターだった。


 「モンスター?」


 「グロルだ」


 「グロル?」


 「グロルは、言わばゴキブリ。ナイトキャッスルにだけ、なぜか住むモンスターで、ゴキブリと違うのは、成長すること。こいつみたいに、なる時もある」


 二人の目の前にいるのは、高さ二十メートルの訓練場いっぱいの、大きさの下半身はサソリで、上半身は蟹のような化け物だった。


 「行くぜ!ブラスト」


 「はい」


 お互い武器を構えると、グロルに走って行った。


 レッドは、グロルの巨体の後に回っると、愛剣のアグルを抜くと、サソリの尻尾のような尻尾に、叩きつけた。


 そうすると、簡単に尻尾は切れた。


 「やっぱり、ゴキブリか」


 巨大化したとはいえ、やはり下級モンスター。簡単に倒せそうだ。


 「ブラスト!」


 「は、はい」


 反対側で、双剣をグロルに手際良く叩きつけているブラストは、レッドから何やら指示されると、攻撃をやめ、後にバックステップした。


 「こっちだ。グロル」


 グロルを挑発すると、グロルは気になったのか、ブラストを向いていたが、レッドの方を向いた。


 「はああああ」


 レッドは、アグルを鞘にしまうと、手にマゲリマムという、赤い大剣を自分の能力で転送させると、自分の方を向いたグロルめがけて、大剣のマゲリマムを叩きつけた。


 そうすると、でかくなっても弱いグロルは、見事に左右に真二つになり、闇に消えて行った。


 「やりましたね。レッドさん」


 「・・・」


 ブラストが話しかけたが、レッドはまだマゲリマムを出しており、何かに備えて構えていた。


 「ブラスト。訓練場から出ろ!」


 ブラストに怒鳴り散らすレッド。少し、汗っているようでもあった。


 「は、はい」


 怯えたように返事をしたブラストは、双剣のフラルベをしまい、ドアを開けて廊下に出て行った。 


 「でてこい」


 何かを感じたレッドは、ブラストがいなくなったことで、レッドしかいなくなった訓練場で、どなった。


 「ばれたか」


 レッドの反応にこたえる、謎の声。


 そのあとに、レッドの前に、モンスターやワイルドタイム状態になった者を包む、暗黒の闇の渦が現れると、そこから、一人の騎士が現れた。


 その騎士は、魔騎士ではない。力が暴走して、闇におぼれている、亜騎士だった。


 「ぶ、ブリッツ!」


 その騎士のことを、レッドは知っていた。


 レッドをかばって、モンスターに攻撃されて、ワイルドタイムに入ったが、止められず亜騎士になってしまった、コードネームブリッツだった。


 「久しいな」


 不気味に微笑むブリッツ。


 「ブリッツ。ごめん。俺のせいで、亜騎士何かに」


 「そうだ」


 亜騎士は、もとは魔騎士。闇におぼれている亜騎士を嫌っている。それは、亜騎士になってもだ。だから、自分を亜騎士にさせたレッドを恨み、ここにやってきたのだろう。


 「だが、ブリッツ。お前は、亜騎士だ。倒す」


 そう言ったレッドは、赤い大剣のマゲリマムを振りかぶり、ブリッツに走っていった。


 「亜騎士になった俺に、勝てると思うな」


 二人の距離が縮まると、レッドはマゲリマムをブリッツに叩きつけた。


 「何!」


 だが、その場所からブリッツは消えた。そのため、マゲリマムは訓練場の地面に叩きつけられた。


 ブリッツの能力は、時間制限なしでワイルドタイム状態になれる能力。その力は、亜騎士になったことで強化され、ずっとワイルドタイム状態になっている。つまり、無敵と言っていい。


 「遅いんだよ!」


 レッドは、ブリッツの声がした後を振り向くと、目の前にはブリッツに右足が存在していた。


 「ぐわあ」


 顔面にブリッツの蹴りをまともに食らったレッドは、地面に転がりながら吹っ飛ばされていき、兜が力に耐えられなかったのか、レッドの頭から兜が外れてしまい、倒れたレッドの一メートルほど先に転がって行った。


 「恨みをはらす」


 そう言って、ブリッツは高速で倒れているレッドに走っていった。


 レッドが、ワイルドタイムを発動した後でなければ、ブリッツと互角に戦えただろう。だが、ブラストを止めるためにワイルド愛無に入ってしまったので、ブリッツを止めるのは、不可能と言っていい状態だ。


 そして、もう一つ。さっきは、ブリッツを倒すと言ったが、もとはアクアの前の、レッドの相棒。レッドにとっては、ブリッツが初めての相棒でもあり、友達でもあった。だから、倒したくない思いも強かった。


 亜騎士を助ける方法は、いまだ解明されてない。亜騎士を葬るには、殺すしかない。だが、レッドは悩んでいた。


 「うおおお」


 兜を外したまま立ちあがったレッドは、襲いかかってくる高速のブリッツの攻撃を、ギリギリで避けると、鞘におさめられているアグルを抜くと、レッドが避けたことでガラ空きになったブリッツのわき腹に、叩きつけた。


 だが、それを読んでいたブリッツは、再び瞬間移動と言ってもいい早さで、レッドの後に回り、再び右足でレッドの背中を蹴り放った。


 「ぐ!」


 痛みのあまりアグルをはなしてしまったレッドは、訓練場の壁へと飛ばされ、壁にぶつかり、ずるずると地面に落ちて行く。


 「終わりだな」


 ブリッツは、服のポーチからナイフを取り出し、ナイフの矛先を倒れているレッドに向けた。


 「ブリッツ・・・やめろ。お前は、そんな奴じゃない・・・」


 「それは、昔の話だ。今は、憎い亜騎士なんだよ!」


 怒りの表情を浮かべたブリッツは、ナイフを倒れているレッドの、顔面に向かって投げつけた。


 「俺は、死ぬのか?いや、俺はまだ生きる。お前を救うために!」


 そう叫んだレッドは、すぐさま立ち上がり、ナイフをよけると、レッドの体が鎧ごと光り出した。


 「ワイルドタイム?」


 「おおおおおおお」


 レッドは、確かにワイルドタイムに先ほどなって、今はなれないはずだ。だが、それは自分でということだ。死に直面して、ワイルドタイムに入るぶんには、ワイルドタイムが使えない状態でも入れる。


 「雄叫びを、狼のようにあげたレッドは、ブリッツのスピードより速いスピードで、ブリッツの背後に回った。


 「おりゃああ」


 だが、それを読んでいたブリッツは、後に右手を回した。


 だが、そこにはレッドの姿はなかった。


 「こっちだよ!」


 レッドは、ブリッツに攻撃するのではなく、兜とアグルをとるために移動していたのだ。


 ワイルドタイムに入ったレッドは、兜を頭にはめ、アグルを構え、今度は音速の領域で走り、アグルを叩きつけた。


 「はああああ」


 戦闘隊背になったブリッツは、レッドの攻撃を避けた。


 そして、通り過ぎていくレッドの後頭を、左足で飛んで、右足で蹴り飛ばした。


 レッドは、再び壁に向かって飛ばされた。だが、壁に当たるはずのレッドの体がなかった。


 「何所行った?」


 「後だよ!」


 ブリッツは、言葉通り後を振り向いたが、そこにもレッドはいなかった。


 「何所いった」


 先ほどのワイルドタイムにはいったブラストのように、あたりを見回すブリッツ。だが、レッドの姿はない。


 「は!上か」


 そう思って上を向いたブリッツ。だが、そこにもレッドいなかった。


 「何所行った」


 「行くぜ」


 そう言ったレッドが、出てきた場所は、隣の訓練場とつなぐ壁を、破壊して現れたのだ。


 音速の領域で走ったレッドは、即座に隣の訓練場に移っていたのだ。


 「何!」


 驚いたブリッツ。だが、遅かった。煮えたぎったような赤色をはなつアグルによって、真二つに引き裂かれた。


 そして、その遺体は闇に包まれ、消えて行った。


 「うおおおおおお」


 だが、レッドのワイルドタイムは終わらない。


 だが、そんな時。


 レッドの前に、現れた一人の気が現れた。


 「てめえは誰だ?」


 「・・・」


 その魔騎士は、言葉を発する前に、刀の零式を抜き、ワイルドタイムになったレッドに、横から切りつけた。


 「ぐわあああ」


 そうして、レッドは闇に包まれると、もとの姿に戻り、気を失い倒れた。


 そして、その騎士の名前は、孤独の戦士コードネーム ゼロだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る