第6話

 「おい、ブラスト」


 レッドは気を失ったブラストを心配し、深くしゃがんで、声をかけながらブラストの体をゆすった。


 「う、ん?」


 ぐっすり寝ていて、無理やり起こされたかのように、目を覚ますブラスト。取りあえず、無事は無事なようだ。


 「覚えてないか・・・」


 ワイルドタイムに入ると、暴走しているため、その時の記憶が無くなる。なので、ブラストもさっきのことは覚えてないようだ。


 「レッドさん?そうだ、僕、レッドさんと戦っていて・・・それから思い出せないや」


 少し起き上がったブラストは、思いだそうとしたが、頭が痛くなりやめた。


 「お前、ワイルドタイムに入ってたんだぞ」


 「え!」


 新人のブラストでも、魔騎士の敵でもあり味方でもあるワイルドタイムのことは、知っていたようだ。


 「そりゃあ、驚くか。もう少しで、亜騎士になるところだったんだぞ」


 「あ、ありがとうございます」


 ブラストは、レッドに向かってさっきのように、深くお辞儀をした。どこまでも、礼儀正しいブラスト。女の子みたいだ。


 「いいんだ。一様、でしだしな」


 「え、それって・・・」


 自分事を、でしだと認めてくれたと思ったブラストは、緑色の瞳をキラキラ輝かせ、レッドの顔をじっと見つめた。


 「う、うるせえ。一様だ、一様」


 少し照れているレッド。あまり、こういう事には練れていないので、告白した女の子みたいに、顔を赤らめた。その赤らめ方は、尋常ではなく、熱があるんじゃないかと言うほどだった。レッドは、そのコードネームとあっているかは分からないが、赤面症な時がある。


 「でも、こんな言い方失礼ですけど、僕なんかでも、ワイルドタイムになったら、かなり強くなりますよね。よく、倒せましたね」


 自分が強いとは言ってないが、少し気になったので聞いたブラスト。


 「ああ、言ってなかったか。俺は、ブリッツ遺伝子の持ち主だからな」


 「ブリッツ遺伝子?」


 ブリッツ遺伝子とは、ワイルドタイムが発生する確率と同じくらいの確率で、赤ちゃんに備われている遺伝子のこと。


 このブリッツ遺伝子が備わっていると、先ほどのレッドのように、自分でワイルドタイムに入れる。


 「まあ、自分で調べてくれ。だけど、お前は、本当に才能があるみたいだな」


 「はい?」


 レッドの言っている意味が分からなかったbラストは、少しから買われているんじゃないかと思っていた。


 「知らないか。ワイルドタイムは、才能のあるやつに、現れるんだ」


 「ん?」


 ポカーンとした顔をしているブラスト。わかっていなようなので、レッドは続けて説明した。


 「ワイルドタイムは、ブリッツて神様が、さずけるらしい。なぜだかわかるか?」


 「いえ」


 「ブリッツは、才能があるやつを、ワイルドタイムを使って、まだ生きろって言ってんだ。でも、そのワイルドタイムで亜騎士になっているようじゃ、ブリッツの見込み違いって、言われてる。今はまだ、何でブリッツ遺伝子と、ワイルドタイムが起きているのか、解明されてないんだ」


 「へー。だから、ブリッツ遺伝子なんですか」


 「そう言うこと。だから、お前はブリッツに認められた、才能の持ち主ってことだ」


 「そんなめっそうもない。僕なんかまだまだ」


 ブラストは、いつもどうり謙遜している。


 「なあ、ブラスト」


 「はい」


 「そろそろ、自分の力、認めてもいいんじゃないか?」


 「はい?」


 「お前は、強い。もしかしたら、俺よりつよくなるかもしれねえ。だから、もっと自信もって、成長しろ。謙遜して、自分の才能に気付かなかったら、強くなれねえぞ、一生」


 「でも、僕なんか」


 「ああ、じれったいな。いいか、お前は強いんだよ。皆に言ってやれ、自分は強いって。それで批判されたら、俺が言ってたって言え。俺は、お前の強さを認めてるんだからな」


 「レッドさん・・・はい。僕は強い。これからも、頑張ります」


 「おお、その域だ」


 こうして、ブラストはもうひとまわり成長した。


 そして、レッドも成長したのかも、知れない。


 「あ、そうだ」


 「何だよ」


 「僕、思ったんですけど、ブリッツ遺伝子持ってたって事は、ずっと、魔騎士にあこがれてたんじゃ、ないですか?」


 「・・・ああ、昔はな。だけど、今は、魔騎士をいやいややってんだ」


 「え!」 


 そのあとに、レッドは全てを話した。


 レッドはの家計は、武士の家計のように、魔騎士をずっと続けている家計だ。


 そのため、レッドも子どものころから、魔騎士になるための訓練を受けてきた。レッド本人も、魔騎士になるのが夢だったので、訓練に毎日励んでいた。


 だが、ある日。レッドの父が、仲間の魔騎士に裏切られ、モンスターに殺された。


 レッドは、それから魔騎士が嫌というより、怖くなったしまった。皆が皆、仲間を


見捨てるとは限らないとは、思っているのだが、レッドにとって父とは、憧れだったので、今でも心のもやもやが、取れていなかった。


 レッドは、魔騎士をやめて、別の道に歩もうと思ったが、武士の代わりになった魔騎士は、代々続いている家計だと、止めるにも止めれなかった。なので、いやいや、レッドは魔騎士をやっているのだ。


 「そうだったんですか・・・」


 話を聞き、理解しようとしたブラスト。だが、まだ十六歳のブラストには、理解ができなかった。


 「で、お前は、何で戦ってる?」


 「ぼ、僕ですか。僕は、その、いじめで」


 「いじめられてたのか・・・」


 「いえ、その逆です」


 「逆!」


 まさか、と思うレッド。だが、ブラストの顔は真剣だった。


 「僕、いじめてたんです。でも、魔騎士を知って、思ったんです。自分は、強いと思って、いじめてた。でも、モンスターを倒すと思ったら、途端に怖くなって。それで、自分はいじめで、自分が強いと主張していたことに気がついて、自分はなんて弱いんだと思って、魔騎士を始めたんです」


 真剣なまなざしで、ブラストは全てを話した。ブラストは、昔は今とは比べ物にならないほど、やんちゃっていじめっ子だったのだ。


 「へえ」


 「へえって」


 ブラストは、真剣に話したのに、へえで、受け流すレッドに、少し腹が立った。


 「ごめん、ごめん。でも、自分が弱いって気付けたら、どんどん強くなれる。がんばれよ、ブラスト」


 「は、はい」


 そういって、ブラストは再び深くお辞儀をした。

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