第5話
「こい!ブラスト」
二人は訓練場に着くと、すぐさま戦闘を開始していた。
「はい。はああ」
ブラストの武器は、双剣。風をまとったフラルベと言われる双剣だ。
ブラストは、風の双剣のフラルベを、両方とも真上に抱えたまま、相手のレッドに向かってダッシュしていった。
「訓練だからって、容赦しねえぜ」
レッドは愛剣の、アグルをさやから抜き、右手で掴むと、ダッシュしてくるブラストの攻撃に備えた。
「風よ。ふけ」
そうブラストが、ダッシュしながら叫ぶと、地面から小さな竜巻が現れ、その竜巻はだんだんだかくなって行き、レッドに走っているブラストを囲んだ。
ブラストの走るスピードは時速三十キロほどを出しており、すぐさまアグルを構えているレッドの前に、たどり着き、距離が一メートルほどになったところで、振り上げているフラルベを、両方同時にレッドに叩きつけた。
「はあああ」
向かい打つように、レッドはアグルを、フラルベ二本とも防げるように、横にして、剣の先を左手手で掴み、風の力を変えて、力がさらに増したフラルベの攻撃を、足を地面にめりこみながら防いだ。
「まだまだ」
いつものブラストとは違い、大声をレッドに吐き散らしたブラストは、さらに両手に力を入れ、フラルベの斬撃の威力を上げた。
「甘い」
だが、レッドはそれでも、負けじとさらに足を地面にめり込まして防ぎ、攻撃に必死で、ガラ空きのブラストの原に、めり込まれている右手を地面から話し、左足だけで攻撃の体重を防ぎ、あいた右足で叩きこんだ。
「ぐ!」
防御力が、他の防具と比べて弱いノーマルスーツを着ているブラストは、痛みのあまりフラルベをアグルから話し、自分事吹っ飛ばされ、ブラストを囲んでいた真空の風は、いつのまにか、消えていた。
「ほら、立ち上がれ」
ブラストは、本気で攻撃をしていたつもりだったが、レッドは余裕の表情を浮かべている。二人の実力は違いすぎる。だが、レッドは本当に手加減してないので、ブラストがこの勝負に勝てる可能性は、ないと言っていい。
「は、はい」
だが、ブラストはそれでもあきらめない。今ので、実力の差は、ブラストも割っているはずだ。だが、あきらめない。
この、あきらめの悪さは、レッドは唯一ブラストの買っているところだ。
「そうだ。新技、見せてやろう。なずけて、赤色ブレイクだ」
適当に名前をその場でつけたレッドは、訓練場の丸いドームのようなフィールドの壁に、左足で地面を蹴って踏みこみ、右足で壁に足をつき、今度は右足で壁を蹴り、瞬間移動したかのような早さで、反対側の壁に移り、逆に左足で壁に着地をして、斜め右に、さっきのように左で踏みこんで、右足で壁に着いた。そうすると、いつのまにかブラストが立っている良子の壁に映っていた。
狙った道理に行動で来たレッドは、地面に落ちないように、右足で壁を蹴って、アグルを空中で飛んでいるときに構えて、勢い乗ったまま、何が起こったのかまだ分かっていない無防備なブラストに、叩きつけた。
「は!」
ブラストは、やっとレッドに気がついたが、もう遅かった。レッドのアグルは、もうすでに振り向いたブラストの目の前にやってきた。
レッドは、攻撃を止めるわけではなかった。なので、ブラストにアグルは直撃されるかと思ったが、突然、訓練場にほとんどなかった風が吹き荒れ、レッドを飛んできた壁に吹っ飛ばした。
「ぐわ!」
吹き荒れる風によって吹っ飛ばされたレッドは、見事に背中を壁にぶつけた。
「僕は、強い」
「ヤバい」
レッドは何かに気付いた。
それは、ワイルドタイム。
ワイルドタイムは、死を目の前にした魔騎士に、まれに現れる時間のこと。ワイルドタイムになると、魔騎士の力が活性化し、ハッキリ言うと無敵の状態になる。だが、それが行き過ぎると、魔騎士を超えた邪悪な存在 亜騎士に変貌する。
「僕は、レッドさんを変える」
ワイルドタイム状態になった者は、意識を失って暴走する。それがだれにも止められず悪化すると、亜騎士になってしまうという仕組みだ。
なので、バトルアリーナは、亜騎士を生まないために、ああゆう仕組みになっているのだ。
「早めに、止めないとな。俺も、ワイルドタイムに入るぜ」
そう言ったレッドの体は、鎧ごとさらに赤くなり輝いた。まるで宝石のルビーのようだった。
レッドは特殊で、自分自身でワイルドタイムにいつでも入れる。だが、いつでも入れるが、亜騎士にならない代わりに一分間しかなれず、体力と魔力を、急激に使ってしまう。なので、めったに使わない。
「はああああ」
何と、ブラストの体は再び真空に囲まれ、宙に浮いたのだ。そして、その真空の風で、鎌イタチを起こし、ワイルドタイムに入ったレッドに繰り出した。
「行くぜ!」
ブラストが、暴走しているというのに、気楽な表情と口調なレッド。だが、そんな表とは裏腹で、心の中では、ブラストを倒す手段を考えていた。
そして、レッドは自分から、鎌イタチに避けるのではなく、向かっていき、攻撃のパターンを、バトルゲームをしているように読むと、無数に繰り出される鎌イタチを正確によけ、二人の距離は、五メートルほどに近づいた。
「赤色ブレイク」
少し気にった必殺技の名前を叫んだ。普通、バトルマンガのように、戦闘になると必殺技を言いたいが、ハッキリ言って無理だ。必殺技を出している間に言えるとは限らないし、なんせ、舌ベロを噛んでしまう。だけど今回は、ネーミングセンスのない必殺技を、すごく気に入ったみたいで、舌をかむ覚悟で言った。
ワイルドタイムに入ったレッドは、先ほどよりも早く、壁から壁に移って行った。
その速さについていけず、レッドを見失ったブラストは、技が同じなら、くる場所も同じだと考え、さっきレッドが飛んできた横を振り向いた。
だが、そこにはレッドの姿はなかった。なので、ブラストはあたりを見渡したが、レッドは何所にもいない。
「おおおおおおお」
「は!」
ブラストがレッドに気付いたが、もう遅かった。
レッドは、天井から落ちてきた。レッドは壁だけではなく、天井も使って移動していたのだ。
「目を覚ませ、ブラスト!」
そして、レッドのアグルは、上を向いたブラストを切り裂いた。
ワイルドタイムに入った者は、死を超える攻撃でも耐えられ、その代りワイルドタイムが終わる。
「うわあああああ」
叫び声をあげたブラストは、闇に包まれ、ワイルドタイムから脱出し、闇から時はなれた。
そして、気を失ったブラストは、訓練場の地面に倒れた。
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