『パーティ』らしい

 男はどうやら一人ではないようだった。他にも3人程いて、その後ろに立つ男性二人と女性一人。

 軽装の男のすぐ後ろに立つのは魔法使いのローブに身を包んだ細目の青年。

 その隣には、背中に弓を携えた白髪を随所に生やした初老の男性。一番年長者っぽいな。

 そして一番後ろには白を基調とした厚手のローブを着た金髪の女性。見た目的には最年少っぽいか? 二十歳前後って雰囲気だが。って……成る程、コイツ等『パーティ』か。



「んだよガキかよ。しかも魔族かぁ? 謝って損したぜ、ったく!」



 人を一方的に突き飛ばしておいて、その言い草か。冒険者は基本偏った性格の輩が多いから俺だったら大して気にしちゃいなかったが、それが息子――もとい娘だったら話は変わって来る。



「ガキじゃないもん。フレアっていうママが付けてくれた名前があるんだもん!」


「おおそうかそうか。そりゃ失礼したなぁ。じゃ早くマンマの所へ帰っておネンネしな。ここはお子ちゃまの来るような場所じゃねえんだよ」



 子供だと思ってか、はたまた虫の居所が悪い時に悪い偶然が重なったのか、言葉遣いがとにかく荒い。フレアもフレアで挑発に乗りやすかったりカッとなりやすいのも俺譲りなのか、怒っているのが目に見えて分かる。



「……。だったらボクが『ガキ』かどうか試してみる……? 今ここで戦ってみてもいいんだよ??」


「んん? いいぜえー? 好きなだけ暴れて満足しな。ホラホラ」

 

 

 ――不味い。今のフレアに怒りを超えた感情を沸き立たせると、何をするか分からない。流石に止めないとと思って、制止しようと手を差し伸べる――。

 

 

「おいアーノルド! そんな子供相手に油を売ってないでさっさと『氷晶の洞窟』へ行くぞ! ただでさえ戦果を上げられなくて俺はDランクに降格寸前なんだ! 早く行ってアイスリザードを狩りに行くぞ!!」

 

 

 だが、その前に魔法使いの男性が割って入り、なんとか事無きを得たのである。



「ちっ……わーったよ! ほら、後ろのお前もしっかりついてこいよ! んーと……何て言ったか」


「……ルルエです」


「あーそうだそうだ、ルルエちゃんだった。まだヒーラーとしちゃ半人前らしいけど俺達がサポートするから大丈夫さ。えーとDランクだっけ?」


「Eです……」


「あれ、そうだっけ? まあどっちでもいいさ、いないよりはマシだからな。ルルエちゃんもよかったな、Cランクのパーティに参加出来てよ。普通なら俺等みたいなこんな良パーティ、滅多に参加出来ないんだからな。契約分はしっかり働いてくれよ? じゃないと何の為に安く雇ったんだか――」


「だ大丈夫です……! 私、しっかりサポートに務めますので……!」


「おおそっかそっか。ま、ルルエちゃんも生活がかかってんだもんなぁ? ヨロシク頼むぜぇー?」



 その後も終始畏まった様子で、オドオドした素振りを見せる度にニヤついた笑みをして、俺達の元から去って行った。愉快そうな様子は俺の視界から消えるまで絶えず続き、何処までも不快感の塊を見せつけていた。

 

 それにしても……あのルルエとか言う子、根が臆病なんだろうか。終始ビクビクしてたような。ランクもそれ程高くないという事はまだパーティ活動に慣れていないのもあるんだろうが。



「ふんっっっだッッ! パパが止めてなかったら、今頃お前なんかペチャンコなんだからねっ!!」


「止めなくてもヤメテくれ。頼む」



 あの潰れたゴブリンを見てしまっては、比喩でもなんでもない『事実』なのだと背筋が思わずゾッとする。

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