85 開高健『日本人の遊び場』⑨脱線:遊びの予算は? その2
前回の続きで、遊びの値段を見ていきます。
●「パチンコ・ホール」
ここのパチンコは昔のパチンコ、チーン、ジャラジャラ、の、あれですので、ひとり平均いくら、の話題はありません。つぎ込む人はつぎ込むからねえ。
その代わり、産業としてどのくらいのお金が動いているのか、また、パチンコ台という精巧な機械をどんな技術者、仕事師が関わっているのか、が取り上げられます。
〈名古屋へいって、パチンコ・メーカーの親玉氏に会った。〉
ここからとても興味深いのですけど、ひとりいくらの遊び代の話から離れるので、ここまでにします。
●「マンモス・プール」
池袋のマンモス・プール。二時間二百円で、ほかのプールの倍だそうです。
〈文句がでないように、それだけのことはしてある。広くて自由に泳げるということのほかに、たとえば水温をいつも27度から28度、一定に保ってある。〉
プールサイドではハワイアンバンドの演奏、スナック・コーナーで軽食も取れ、少年少女たちが仲よく遊んでいるのだそうです。
後楽園のプールはどうでしょう。
〈二時間で大人百エン、子供六十エンである。〉
東京都の教育委員会運営の千駄ヶ谷のプールは。
〈一般八十エン、学生七十エンである。これになにやかや小さなものを食べたり飲んだりすると、だいたい二百エンぐらいのことになるだろうと思う。これぐらいが今の日本人が一回の遊びに使う限度であるようだ。〉
〈とにかく二百エンを今日の日本の大衆は一回の遊びに使う。パチンコもそうだったし、“くいだおれ”でもそうだった。いままでに見まわった庶民の遊び場のどこへ行っても、この数字に出会うようである。〉
パチンコの回、読み直したけど二百円の話なかったけどな。まあ、取材の時に聞いていたのでしょう。
赤坂、麻布などのホテルのプールはどうでしょう。泊まってなくても泳げるそうです。
〈高いよ。平日八百エン。土曜、日曜は千エン。夕方五時からの夜の部だけが六百エン。ちゃんとテラスにレストランがつくってあるから、お帰りにそこで休んでちょっとツマめば、千エンや二千エンはふわふわと飛んでゆく仕掛けである。〉
会社帰りの女子たちがテラスで食事だけしていく姿が多いそうで。涼しいしバンド演奏はあるし、いい雰囲気です。
しかし、彼女たちが何を召し上がるのかというと、スパゲッチ・ナポリタンです。
〈スパゲッチと水だけでいくらするのだろうと思ってメニューを見たら、二百エンであった。ちゃっかりしている。うまいところを狙ったものだ!……〉
二百円。
奥が深そうです。
次回に続きます。
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