第二章・尻ヶ島 の尻鬼娘ウ~ラ
尻ヶ島が朝日に染まる
尻自慢の尻鬼娘たちが居城する【尻ヶ島】──鬼の城に、尻鬼娘たちの歌声が響く。
「お尻の『お』の字はどう書くの♪」
「こうして、こうして、こう書くの♪」
歌に合わせて、円台の上で腰を振る、尻自慢の尻鬼娘たち。
「お尻の『し』の字はどう書くの♪」
「こうして、こうして、こう書くの♪」
鋼鉄の尻を持つ、尻鬼娘の首領は、歌に合わせて腰を振る。
「お尻の『り』の字はどう書くの♪」
「こうして、こうして、こう書くのぅ!」
ケツ圧一発、尻鬼娘の首領『ウ~ラ』の尻が、砲撃のように対戦相手の尻鬼娘を吹っ飛ばす。
尻鬼城に転がる、ウ~ラに敗れた敗者の屍。
勝者となったウ~ラは、首領の座にもどり
「もっと、腰骨があるヤツぁいねぇのか……つまらん」
傍らでヒョウタンから、朱盆に酒を継ぎ足している着物姿の、美女尻鬼娘が言った。
「噂では、強い尻で連勝中の『桃尻姫』という女が、お供を連れてこの尻ヶ島に向かってきているみたいですよ……尻鬼の宝を奪うために」
美女尻鬼娘は、宝箱を満たす、黄金色に輝く尻型をした金塊に目を向けた。
ウ~ラが言った。
「オレに尻相撲で勝ったら誰だろと、お宝はくれてやる……勝てたらな」
尻ヶ島を望む磯場の海岸──潮風を浴びながら、腕組みをして立つ男装をした『桃尻姫』の姿があった。
「あれが尻ヶ島かぁ……うちら、ここまで来たけれど。あと一人くらいは家来が欲しいかもね」
桃尻姫の後ろには『桃尻姫の尻は世界一!』と書かれた、昇り旗を持った。
パーティー用のサルの着ぐるみを着た、乳女神の『チ・チリーナ』と。
キジの着ぐるみを着た、第四の壁越え女神『ロヴン』がいた。
読者の視線に気づいたロヴンが、第四の壁を越えて読者に話しかけてきた。
「奇遇ですね、また変な場所でお会いしましたね……えっ? あたしがどうして。キジの格好をしてそこに居るのか……ですか? それはですねぇ」
モノクロ場面に変わり、時間の流れが高速でもどる。
尻宮殿──尻大神と、尻女神オ・シリーナ。
オ・シリーナのお尻を眺める白ヒゲのエロジジィ……もとい、尻大神が言った。
「思わずワシづかみして、触り回してみたくなる美尻じゃのぅ」
赤面しながら返答する、オ・シリーナ。
「し、尻を誉めていただき、光栄で……す」
場面がモノクロストップして、ロヴンの声が聞こえた。
「失敗、もどしすぎた……もう少し先へ」
再び場面が高速で進み、尻ヶ島を望む磯場で倒れているロヴンのシーンで止まる。
呟くロヴンの声。
「お腹すいたぁ……もう一歩も歩けない、しくじったぁ……読者のみなさん、今まで愛の女神ロヴンを愛していただいで、ありがとうございます……さようなら」
その時、ロヴンに向かってきて。しゃがんでキビ団子を差し出してきた者がいた。
空腹だったロヴンは、何も考えずに数個のキビ団子を夢中で食べる。
食べ終わったロヴンに、サルのパーティー着ぐるみをかぶって昇り旗を持って立つチ・チリーナを家来にした、桃尻姫が言った。
「食べたなぁ……キビ団子、コレで君もうちの家来だね……はい、このキジの着ぐるみ着て、ついてきてね♪」
場面が素の時間軸にもどる。
「と……いうワケで家来やっているんですよ。みなさんも知らない人から食べ物をもらう時は、注意してくださいね」
チ・チリーナが訝る目で見ながら、見えない壁に向かって話しているロヴンに言った。
「なに、独り言呟いているんだ? 変わったヤツだな?」
今度はチ・チリーナが、ボソボソしゃべりはじめる。
「
団子の中に、何か従順依存性の薬物が混入されていると気づいた時には、すでにチ・チリーナはキビ団子を呑み込んでいた。
「桃尻姫は狡猾だな、『朝にキビ団子を三つ、夕暮れにキビ団子を四つ』やるから家来になれと言われて……文句を言ったら、『じゃあ、朝に四つあげるから、夕暮れには三つで我慢して』と、言われて大喜びして家来になったけれど……よく考えてみれば、一日にもらうキビ団子の数はどっちも同じじゃないか……ダマされた」
ロヴンが小声で、読者の方を向いて語る。
「実はあたしも似たような方法で桃尻姫と、家来契約を結ばされて……あたしの場合は『三度のご飯を食べさせてくれたら、家来になってもいい』と言ったら。白米のご飯をオカズに、炊いた白いメシを食えと……うぅ、ご飯のオカズが、ご飯って何? 塩やコショウの調味料は付けてくれるみたいですけれど……うぅ、酷すぎる」
チ・チリーナとロヴンが不平不満を漏らしているのを無視した桃尻姫が、磯浜をこちらに向かって歩いてくる人物を見つけて言った。
「三匹目の家来になりそうな、女神みたいな女がこちらに向かって歩いてくる……キビ団子を与えて犬の着ぐるみを着せてしまおう」
桃尻姫の近くまでやってきた尻女神『オ・シリーナ』が言った。
「遠目でどこかで見たコトがあると思ったら。やっぱり、デカ乳女神のチ・チリーナだ……こんなところで何をしているの?」
「見りゃわかるだろう……サルやっているんだよ」
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