美尻女神【オ・シリーナ】~尻乙女バトル大戦~

楠本恵士

第一章・天空の尻女神「尻仲間を探せ」

天界尻バトル優勝

 ここは尻天界──ギリシャ神話かローマ神話のような神々が暮らす楽園。


 今、最強の尻女神を決める決勝戦が、尻神殿で行われようとしていた。

 広間の中央に設置された、石の低い円柱台の上に熾烈な尻バトルを勝ち抜いてきた。

 二人の女神が、互いに背中を向けた状態で立っていた。

 尻女神【オ・シリーナ】──その尻に神を宿し美尻女神。

 オ・シリーナと対戦する尻女神が構える、軽快な天空のリズムと共に神々の合唱が聞こえてきた。

「♪お尻の『お』の字はどう書くの?」

 二人の女神が、歌に合わせて臀部で文字を書く。

「こうして、こうしてこう書くの♪」

「♪お尻の『し』の字はどう書くの?」

「こうして、こうしてこう書くの♪」

 高まる緊張、二人の尻女神は互いの間合いとタイミングを計る。

「♪お尻の『り』の字はどう書くの?」

「こうして、こうしてこう書くのぅぅぅ!!」


 激突する尻と尻、押し合う尻。一瞬の隙を突いて引いたオ・シリーナの大臀筋に、パワーがみなぎる。

 一撃に賭けた、オ・シリーナの尻から激突の衝撃波が神殿に広がる。

 空中に吹っ飛ぶ対戦相手の尻女神。

 観客席から聞こえた声。 

「すげぇ、ケツゥゥゥ」

 オ・シリーナのケツ圧力に突き飛ばされた尻女神の体は壁に激突して、めり込み動かなくなった。


 勝者を告げる声が尻神殿に響く。

「天界尻バトル優勝は、美尻女神【オ・シリーナ】!」

 優勝を祝福する声の中、オ・シリーナは。

(なんだろう? 優勝したのに、あまり嬉しくない)

 そう感じた。


 優勝者のオ・シリーナは、尻大神の間で玉座に座った尻大神の前で背を向けて、お尻の谷間にバトル水着が食い込んだ美尻を披露する。

 オ・シリーナのお尻を眺める白ヒゲのエロジジィ……もとい、尻大神が言った。

「思わずワシづかみして、触り回してみたくなる美尻じゃのぅ」

 赤面しながら返答する、オ・シリーナ。

「し、尻を誉めていただき光栄です」


 尻大神の方に向き直し、ひざまずいたオ・シリーナに尻大神が言った。

「尻女神オ・シリーナよ……来るべき時に備えて、尻乙女の仲間を探し集めるのだ……下界に行け、下界は広いぞ尻の猛者たちがいる」


(来るべき時って何?)

 そう思いながらオ・シリーナは尻大神に、控え目に言った。

「あのぅ……尻大神さま、お言葉ですが。その役目誰か他の人に頼んでくれませんか……親戚には胸を張って言えないメチャクチャ恥ずかしい、使命なんですけれど」


 尻大神の頬が、オ・シリーナの言葉にヒクヒクと痙攣する。

「恥ずかしいだと……言っている儂の方が数倍恥ずかしいわ! さっさと下界に行け!」

 渋々とオ・シリーナが神殿から姿を消すと、円柱の後ろに隠れていた胸がデカイ、乳女神【チ・チリーナ】が現れて言った。

「あんな尻女よりも、あたしに命じて頂ければ……下界で乳乙女を集めて、乳の軍団まで作りましたのに」

「おまえは、乳天界を追放されて尻天界に身を寄せている身……儂は脂肪の塊の乳よりも、大臀筋の尻がいい……この尻天界の者たちも、オ・シリーナの活躍を期待している」

「そうですか」


 チ・チリーナは横を向くと小さく「チッ」と舌打ちをしてから、尻大神に言った。

「では、オ・シリーナの動向監視役で地上に降りる許可を頂ければ……尻乙女の集まり状況を、尻大神さまにお伝えできます……あたしを、乳を地上に行かせれば尻天界と地上を繋ぐ連絡役になります」

「ふむっ、尻天界と地上を繋ぐ者は必要だな……良かろう、地上に行くがよい。チ・チリーナ」

 チ・チリーナは、一礼すると尻大神の前から去って自分の館にもどった。


 チ・チリーナが館の侍女に言った。

「しばらく、地上に行ってくる留守を頼む」

「かしこまりました」

 チ・チリーナは、侍女の胸を見て、せせら笑う。

「おまえも、もっと胸を大きくした方がいいぞ……男にでも揉んでもらえ」

「そうしたいのは、やまやまですが……彼氏が尻にしか興味が無くて、一度だけ胸を触ってはくれましたが」

「そ、そうか」

 自分の部屋に入ったチ・チリーナは、怒りの形相で壁に巨乳をぶち当てる。

「ちくしょう! ちくしょう! あの程度の胸で男だと! ふざけやがって!」

 壁には胸を打ちつけて、陥没した跡が無数に残っていた。

「あたしなんか、あたしなんか、一度も男に胸を触られたコトもねぇんだよぅ! ざけんじゃねぇ!」


 落ち着いたチ・チリーナの呟く声が聞こえてきた。

「今に見ていろ、尻より胸の方が優れていて民衆は胸を求めていると証明してやる……せいぜい、今のうちに尻を磨いて手入れをするがいい尻乙女たち、覚悟しろオ・シリーナ」


 胸でも尻でも、どちらが優劣でも、どーでもいいと。ドアの隙間から覗き見していた侍女は思った。


~次のエピソードに続くかも知れないし、続かないかも知れない~

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