第5話

その日からヒナと私は帰り道が別々になった。


やがてヒナは彼氏の朝練に付き合って早く登校するようになり、朝も一緒に登校することが減った。


たまに朝会えても、話すのは恋人との事ばかり。相談もあれば、惚気もある。

今までみたいに毎日同じような話をして笑っていた時間は、もう無かった。


季節は巡り、花は萎れ、やがてセーラー服は長袖になり。


ヒナは彼氏と過ごす時間が増え、それに反比例するように私とヒナが過ごす時間も減った。



私は、本当にヒナが好きだった。


毎朝時間をかけていた身だしなみも、そこまで時間をかけなくなってしまった。

起きるのも、朝食を食べるのも、また億劫で。


「失恋って、こんな辛いっけ?」


鼻を刺すように冷たい空気が漂う。

寒い冬は特に、学校に行きたくなかった。


私は恋愛対象が女性な訳では無い。

ヒナだから好きになっただけ。

だからこそ、世間一般的ではない恋をした自分が受け入れ難い所もあった。

でも、そんなのどうでもいいくらいにまっすぐヒナが好きだった。


もう私の想いが掬われることも、実ることもない。


「ねぇアカネ、今日彼がね?」


そう笑顔で話すあなたを受け入れられなくてごめん。


素直に応援できなくてごめん。


親友という関係でいたのに、私が恋心を抱いてしまった。



18歳になった私は、ちっとも大人になんかなれていなかった。

むしろ失恋の痛みでもっと子供になってしまった気さえした。



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