第2話

この夏で18歳になる私は、なんだか一気に大人になれる気がした。

数年後には成人年齢は18歳になり、現在でも18歳から選挙権が与えられる。

「18歳」は特別な年に感じる。

早く誕生日が来ないかな、なんて考えながら今日も夏の補習授業へと向かう。

猛暑日と謳われる様な夏の日に学校に行くのなんて一切気乗りしないし、何度もずる休みしてしまおうかなんて考えてしまうのが普通だろう。

実際私も高校1年生まではそう感じていたのだから。


けれど今は全くそうは思わない。

学校へ行きたくて行きたくて堪らない。

苦手だった早起きだって今では一切辛くないし、疎らだった朝食も毎日摂っている。

毎朝丁寧に前髪にアイロンの熱を通して、スタイリングスプレーを吹き掛けて。

もうすぐ胸あたりまで到達する髪の毛は、明るい茶褐色のヘアゴムで少し高めにポニーテールにする。

柔軟剤の香りがするセーラー服に袖を通して、プリーツスカートのチャックを閉めて。

玄関の姿見の前で、笑顔の確認をする。


__うん、大丈夫!今日も私は可愛い。


「ママ、いってきます!」


行ってらっしゃい、気をつけてね、と笑顔で送り出してくれるママに笑顔で応えながら玄関を飛び出す。


ああ、心臓がトクトクと弾んでいるのが分かる。

早く、早く。


田舎の夏の早朝は案外涼しい。

真っ青な空と、微かな風に揺られる緑。

セミも一所懸命に鳴いている。

沢山の自然の中をズンズンと目的地を目指して歩みを進める。


ああ、会いたい。早く会いたい。


自然と足取りは軽やかになるのが分かる。


角を曲がった先に見える無人駅に、その後ろ姿を見つけた。


「ヒナ!」


そう声をかけると、彼女はこちらを向いてパァっと笑う。


「おはようアカネ」


そう言って彼女はパッと笑顔になる。


私は、まるで向日葵のように、眩しいほどに明るい彼女の笑顔が大好き。

笑顔だけじゃない。肩までの艶のある黒髪も、宝石のように透き通った瞳も、笑った時にできる笑窪も、全てが大好きだ。

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