第5話:七つの光

 お兄ちゃんの部屋から出て二階の自室に向かう。階段を上がる度にざわめきが近くなっていく。

 この気配、あたしの部屋から?

 足音を立てないように廊下を進み、突き当たりのドアの前に立つ。なにかの気配を感じる。怖い。怖い。怖い。


 でも──



『悪いものじゃない』

『僕が保証する』



 お兄ちゃんはそう言った。

 だから大丈夫。


「どりゃあ!!!」


 勢いよくドアを開けた瞬間、ざわめきがピタリと止んだ。


「あれ?」


 気合いを入れて開けただけに、何もないと拍子抜けしちゃう。室内を見回してみても、朝と同じで物の配置も変わってない。

 さっきまで何かがいたはず。隠れるような場所はない。ザワザワは聴こえなくなったけど気配自体は消えてない。この部屋には!!


「あー、お腹空いた。おやつ食べにいこっと」


 ワザと大きな声でそう言いながら、あたしは勉強机の上にカバンを置いた。そのまま踵を返して部屋から出て、後ろ手にドアを閉める。

 廊下を歩いて階段に向かうフリをして再び部屋の前に戻り、今度は無言でドアを開け、隙間から覗いてみた。


 ──あ。


 視界に入ったのは、部屋の中を漂う光の塊。それが、いち、にい、……七つ!

 しかも、ひとつひとつ色が違う。


「きれい」


 思わず声が出た。そしたら、光の塊がチカチカと点滅し始めた。あたしに見られたことに気付いたみたい。光は隠れるのを諦めたようで部屋の真ん中に集まった。


「……オバケ?」


 さっきまでの恐怖はもうない。見た目もきれいだし、動きや反応が可愛く思えてきたからだ。


『我らはオバケなどではない』

「しゃべったァ!!」


 突然男の人の声がして、あたしはその場で飛び上がった。自分で聞いといて失礼だとは思うけど、光の塊が喋るとか、驚くなってほうが無理でしょ。


其方そなたが生まれた時から側にいる』

「え、そうなん……ですか」


 思わず敬語になっちゃうのは、相手が自分より年上っぽいからだ。声からして大人なのは間違いないもんね。


 ていうか、今なんて言った?





 

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