第10話サークル名を決めよう(1)

ナスさんと、合同の同人誌を作成することが決まった。なんの作品にするかはもう決まってる、カップリングだって決まってる。


しかし、どんな内容にするのか、タイトルは、サークル名は、印刷所は。考えることは多い。


今日は休みだし、色々考えて、あとでまとめてナスさんに連絡しようかと思っていれば、偶然なのかなんなのか彼からちょうどメッセージが来た。


『今日、仕事が夕方までなんですが、その後同人誌についての話し合いしませんか』


ラッキーだった。


融通の効く仕事というのはすごい。会社を経営してるとか金融関係とか言ってたけど、こう、誤魔化すような言い方がなおさら彼の人柄を表している気がするな。


まぁ、そんな堂々と「ヤクザです」とは言わないか、普通。


それならそれで、私もヤクザなんだなと思わないで接するべきだ。彼からのメッセージに笑いながら、休みの日の朝、早速私は作業に取り掛かった。


『了解です。どこかで落ち合いましょうか』


続いて送られたメッセージは『予約しておくから、18時にこのお店に。那須川という名前で予約してます。』はやっ、思わず出た言葉に、スマホを握る。いつだかの彼みたいに握りつぶす勢いだ。


送られてきたurlをぱっと見て、そしてすぐにまたくるメッセージが『仕事始まるので、夕方まで見れないかもしれません、行けなくなったら17時まに連絡してもらえたら』どこまでこの人は気遣い屋さんなんだ。


やっぱり社長とかにもなると人間関係とか大事だから?女の私よりちゃんと周りを見ている。素直に、尊敬をしてしまった。そういうところは私も見習わなければ。恐れ入ります那須川さん、机の上に置いたスマホに頭を下げて、よし、と、顔を上げたのが8時半。オタクの休日は、オタク活動のためにあるのだ。


テレビをつけて、七恋のアニメを流しながら、私は指をキーボードの上に置いた。まずは内容を決めて、最初のお話を考えよう。そっからじゃないと、ナスさんとの同人誌の内容を決められない。


うおおおお!!


まるで少年漫画の主人公のように燃え上がる炎を背負って、私はタブレットの画面と睨めっこを始めた。

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