第64話やり直し
22時になり、知努と染子は脱衣所で本日最後の愛の営みを行っていた。彼の生殖器が淫道の柔らかい部分へ当たる度、締め付けられる。
着衣より半裸の方が性的興奮を得られるという染子の都合で服を脱がされ、洗濯機に投げ入れられた。
下半身に感じる心地よさと相手を満足させなければいけない使命感の板挟みへなりながら長く味わせるように腰をゆっくり振っている。
彼女が着ているゴシック・アンド・ロリータドレスの上から右乳房を揉みながら反対の手で直接、淫豆を撫でた。
立っている2人の身長差が10センチあり、彼女は前屈みになりながら浴室の扉へ両手を置いている。
「あぁぁっ! はぁっ…、あぁんっ! …、気持ち良すぎてちーちゃんに手を上げられていた頃みたいに逆らえなくなっちゃう…、やんっ!」
熱い吐息を吐きながら時折、だらしなく舌を出して淫らに鳴く染子は、彼の加虐性を掻き立てていた。
ピアノを演奏している時はとても美しい彼女が薄汚れた情欲で染まっている。すっかり彼に支配されてた。
深い孤独に苦しんでいる彼女にとって、これが痛みを和らげるモルヒネのようなものだ。
いつも以上に発情している彼女の体から汗が吹き出し、甘い香りを漂わせている。
「こんな時に幼児退行するんじゃないよ。あぁ…、ソメちゃんをいじめたくなってくる」
鶴飛染子の成熟しつつある子作りに使う器を白濁で汚せば彼女は知努の所有物となる。
「あっうぅっ…、あぁんっ! あんっ! 好きな男の子に甘える時くらい…なってもいいじゃない…、受け止めてあげるからおいで…」
しばらく女性が悦ぶ箇所ばかり刺激していた事もあり、彼女の体は弓なりになって透明な汁を噴き出す。
体を小刻みに振るわせている彼女の片足を持ち上げ、淫茎を奥まで入れて無数の突起がある天井を小突く。
彼女の反応から先程と同じく女性が悦ぶ部分のようだ。痛くさせない強さで何度も刺激する。
快楽や充足感を得るために行う自慰行為で指が届かない部分へ刺激されると更に乱れた。
「あぁ! んっへぇっ! あぐぅっ! もう…、染子のスケベな雌〇ンコにトドメ刺して! 頭おかしくなってちーちゃんに貰われるしかなくなっちゃう!」
腰が疲れるまで動き、何度も汁を噴き出させてから避妊具の中へ堰を切る。抜いた途端、彼女は知努にもたれかかる。
打ち上げられた魚のように痙攣している彼女は口からだらしなく涎を垂らし、未知の快感のせいか泣いていた。
「元気な状態ですら、ちーちゃんの虜になっちゃうくらいだから…、初体験でこんな可愛がられ方されるとメロメロに堕とされて絶対、家へ帰れなかったわ」
「同人やエロゲじゃあるまいし、精神が弱っていた女の子を食い物にするような事するか。快感で物事を考えるのは獣と一緒ですよ」
彼は使い終わった避妊具を洗面台の縁に置いて、彼女の服を脱がしている。目の前で知努の白濁汁が飲まれた。
「絶対、こんな光景を染子の両親に見せたくないなぁ。ちょっとちーちゃん、頭が痛くなるよ」
うがいをさせながら飲み干された避妊具が不燃ごみで出せるように洗浄する。
あと2時間で日付が変わる時間帯という事もあり、彼は少し眠気に襲われていた。
「映画見て、泣いた後に慰め目的で初体験するのもなかなかいいものだと思わない?」
「求める側はそれでいいかもしれないけど、弱っている女の子に手を出したドクズなんだよな、俺」
2人が歯磨きをしていると少し開いている脱衣所の扉が軋む。彼はそれに気づいて振り向いた。
暗闇に紛れ、硝子玉のように透き通った碧眼と金色の波打つ髪で妖怪の正体を知る。
白色の寝間着を着ているユーディットだった。2人の様子が気になり、観察していたようだ。
「な、め、こ? 心が弱っている事を盾にして私の大事な彼へ迫ったの? 私が欲しかった彼の初体験を奪ったの?」
激しい嫉妬心に囚われている事は彼女の無表情が物語っていた。噛みしめる様に1歩ずつ近づく。
普段と違い、全く冗談に見えないユーディットを見た染子が彼の背後へ隠れる。さすがに煽れない。
「ムカつくわ。彼が人に言えないような初体験をさせるなんて。二田部くんがそんな話をチー坊から聞いたらどう思う? 軽蔑されるわよ」
右の拳を握り締め、これから染子の顔に殴り掛かろうとしていた。いつもからかわれている温厚な彼女らしからぬ行動だ。
早く入浴したいと思っている彼は左右の人差し指で口角を上げていた。威嚇のつもりのようだ。
子供のような仕草を唐突に見せられたユーディットは破顔してしまう。彼女から嫉妬心が消えた。
「威嚇のつもりなら適当過ぎるわ。でも、レッサーパンダの威嚇みたいでとってもかわいい」
「ありがとう。そういえばあの映画をディーちゃんと一緒に観た後、1時間ぐらい抱き着いていたね」
ユーディットにとっても思い出深い映画だったらしく、頬を赤らめながら脱衣所から逃げ出す。
従姉の地位を悪用し、彼と2人きりで何度も映画鑑賞した事は染子に敵愾心を抱かせる。当分、蔑称しか呼ぶつもりがない。
浴槽に浸かるまでの間、染子が無言だったせいか彼から会話を発展し辛い雰囲気を漂わせている。
ヘアゴムで束ねている後ろ髪を肩から垂らしている染子と一緒に彼が浴槽へ浸かった。前髪を2つのヘアピンで留めている。
大人びた印象を見る者に抱かせる彼女とあどけなさがある彼は、どこか親子か姉妹のようだった。
仏頂面の染子が対面にいる知努の顔を執拗に眺めながら右足で彼の柔らかい頬を撫でる。また覇気のない威嚇で彼は対抗した。
「
「それはこっちのセリフ。もしかして今、拗ねているの? お互い距離を取っていた間、ディーちゃんが好き放題していたから」
質問に答えたくない彼女が取り付けられている給湯器のリモコンを足で操作して誤魔化す。
中学生時代の2人は顔を合わせば些細な事で喧嘩するような形骸化した関係性だった。彼の方から極力関わろうとせず、3年間が過ぎる。
その事を思い出した彼女はつい悪い癖が出てしまう。言いたい事は遠慮せず言ってしまう性分だ。
「中学3年間、私は全く知努と作った楽しい思い出が無いわ。それに辛くて苦しい時、そばにいてくれなかった」
「今は付き合うとか付き合わないとかまだ考えられないかもしれないわ。出来れば元の関係に戻りたい」
優しい彼がその申し出を受け入れる事は予想していた。交際出来なくて逆上する様な人間をそもそも染子は好きにならない。
だが、彼女は三中知努の悍ましい人間性を引き出してしまう。そこに怒りも悲しみも存在していない。
「鶴飛さんがそうしたいなら俺は身を引く。ただし、元の関係に戻りたいなんざ眠たい事は無しな」
「俺がお前と友達でいる理由はない。1つ面白い話をしてやるよ」
彼は染子の耳元で囁いてから浴室を出る。追いかけられない程、悲しい秘密を打ち明けられた染子が嗚咽した。
数年間、隠してきた知努の秘密は心の闇に大きく関わっている。一生涯、付き合っていかなければならない。
2度と会えない女性の未練に苦しんでいる彼を支えたい気持ちが彼女の中で強くなっていく。
浴室から出ると残酷な現実が待っているため彼女は出られなかった。弱々しい声で彼を呼ぶ。
ゆっくり扉が開いて目を逸らしている知努は湯船へ再度、浸かる。昨夜の意趣返しされてしまう。
「もう、昨日の夜、知努をからかったから仕返し? 生意気なクソガキね」
「知努? 僕はそんな名前じゃないよ。染子姉ちゃんの弟の鶴飛庄一郎だけど?」
向かい合わせで自称染子の弟が染子を膝へ座らせ軽く口付けする。先程と打って変わり、染子は強く抱き締めた。
「弟でも犬でもいいからソメちゃんの傍にいたい。薄っぺらい友達関係なんて耐えられないよ。どうしたら許してくれる?」
「辛くて苦しい時に絶対、慰めてくれるなら許してあげる。か弱い女の子は辛い事ばかりが待っているのさ」
追い焚きした湯が冷えるまで2人は何度も口づけし、再び愛を確かめ合う。悲しんだ後に感じる愛は格別だった。
入浴から戻って来た染子と知努はベッドに横たわっている。何故か2人の片手同士に手錠をかけていた。
「これは、縁の紐というおまじないなんだ。これで君は私になったのさ」
「やだ! 鶴飛おしっこになんてなりたくない。どうせ、また夜中、おしっこで起こすつもりでしょ」
勝手に名前を変えられた染子は、片足で反対側にいるユーディットの胸を触る。眠りが浅かったせいですぐ目覚めた。
見つからないように足を戻して、彼がユーディットから平手打ちされる。親しき中にも礼儀ありだ。
もう少し彼に恥をかかせたい染子は更なる濡れ衣を着せる。当然、彼が1度も言った事ない発言だった。
「流石に私でもユーディットの髪はおしっこで染めたなんて言わないわよ。知努もなかなか毒舌ね」
ユーディットの親指と人差し指の爪が頬に食い込む。彼女も将来、母親と似て気の強い女房へ育ちそうだ。
「なめこの悪い影響を受けたみたいね。しっかりと私好みの王子様へ再教育してあげるわ」
「洋物〇Vに金髪女が出る度にディーちゃんと呼ぶのもやめて上げなさい。みっともないわよ」
何度も彼女から腹部を殴られた彼は、相変わらず染子の玩具扱いとなっている。痣が出来るのも時間の問題だった。
十分楽しんで飽きた染子は勝手に就寝してしまう。
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