126話 賊退治
無粋な輩の殺気をいち早く察したアキトは
「空気読めってんだよ! おい!
「了解です! 出来れば賊は捕らえてください!」
「善処する!」
「い…いったい何があったんだ……」
困惑する
「いきなりここまで来ただと!?」
「化け物かよ! 逃げるぞ!」
そう言って賊の一人がナイフを数本投げてきた。アキトにとっては至近距離で投げられようと避けるのは容易い。地の利を取るために屋根の上の方に避ける。移動を読まれていたのかもう一人の男がナイフを投げてきたので剣で叩きおとす。
「最初から叩き落とせばよかったな」
「くっ…クソ!」
「下に落ちろ」
そう言ってアキトは初級雷魔法のサンダーを賊の二人に飛ばす。射線を考えるとこれが一番良いと判断した。下の広場にいる無関係の者を巻き込むわけにはいかない。
「ぐっ…」
「くそっ……」
意外にも耐えているのでアクアボールを二つ大きめに放つ。下の広場にいる奴らには悪いが濡れるのは我慢してもらおう。大きくて勢いのあるアクアボールをまともに受けた二人はそのまま広場に落ちた。アキトは追い打ちをかけるために自分も飛び降りる。二階建ての建物の屋根から落ちたのだから普通はどこかケガをして動けないだろうし、周りには護衛の騎士たちもいる。そのままにしておいても大丈夫だろうが念には念を入れての追い打ちだ。
素早くアキトも飛び降りるとちょうど賊二人が地面に叩きつけられる直前だった。空中で軌道を変えて一人に突っ込む。地面に叩きつけられた男の脛の部分を踏み潰す様にして折る。
「ぐああああああ!」
「まず一人。これで動けないだろ」
「う……ぐっ…」
もう一人の賊は地面に叩きつけられて苦しんでいる。このままでも大丈夫そうだがこいつの足も折っておこう。同じ様に脛の部分を踏み潰すように折る。
「あああああああああ!」
「これでここはひとまず片付いたか。
シエラたちのほうがどうなっているか心配だ。こっちが襲われたってことは向こうも襲われているかもしれない。むしろ向こうが本命かもしれない。こんな街中で二人で襲ってくるのはさすがに少なすぎる。もっと大勢で来てもいいくらいだ。
「わかりました! お前たち! こいつらは任せる! 二人付いて来い!」
「「「「「はっ!」」」」」
周りに五人私服の護衛騎士がいたようだ。私服というよりは冒険者風だ。そのうちの二人がすぐさま騎士団長の元にかけつけ
「
「あまり速くないが…」
「面倒くせぇ! 俺が担ぐ!」
「うわっ! ちょ…ちょっと待ってくれアキト!」
「やかましい! 急ぐんだよ! お前のねーちゃんもあぶねーんだぞ!」
店は広場から3軒ほど離れた所ですぐだ。シエラたちのいる店の前に着く直前に店内から一人すごい勢いで吹っ飛んできた。勢い余って反対側の店にまで吹っ飛んでいった。
「ちっ! やっぱりか!」
「どうした!? 何か壊れた音が!」
答えてる暇はない。正直な所
「うおっ! シエラ! 大丈夫かって………大丈夫そうだな」
「ああ、アキト来てくれたのね。私たちは大丈夫よ」
「心配して急いで来たんだけどなぁ」
店内に入るとすでに賊は無力化されていた。4人の賊と思しき男が転がっている。一人は泡吹いてるし顔潰れてるのもいれば腕と足が数カ所曲がらない所で曲がってるのもいる。誰だよこれやったの。
「アキト殿。こちらは大丈夫です。そちらも大丈夫の様ですね」
護衛で一緒だったサフィーが声をかけてくる。一人押さながらだがかなり余裕がありそうだ。
「こっちは大丈夫だ。すぐに騎士団長も来る。というか………やりすぎじゃないか?」
「6人もいきなり押し入ってきて攻撃されたのよ。咄嗟に反撃したらこうなっちゃって」
「私はちゃんと手加減した。ストーンジャベリンの先端尖らせなかった」
「思いっきり殴ったら相手がうずくまりました」
「まあ……3人の言ったとおりよ。私も焦って加減抜きに魔導連接剣で突いちゃったし……生きてるかしら……」
「…最初に店内から一人吹っ飛んでいったのは?」
「シエラが思いっきり蹴飛ばしてたわ」
「……咄嗟だったから」
無事で何よりだが……身体強化の手加減を覚えさせないといけないか。ある程度は普段の修行でできているのはわかっていたが咄嗟になると手加減出来ないか。まだ必要ないかと思ってたからさせてなかったけどもう必要か。どのくらいでどうなるかを把握させないとな。組手しかやってないから自分がどんな威力で打撃を繰り出せるかわからないんだろうな。しかも相手が俺だ。今のシエラが身体強化を全力でかけて組手しても俺はなんともないからその弊害か。
あと考えられるのは賊が弱すぎるってことか。焦った
「まあ……無事で何よりだよ」
「アキト! いい加減下ろしてくれ!」
そういえば
「ふう。姉上。無事で何よりです」
「ルーカスも無事で何よりよ。そっちは何ともなかった?」
「こちらに来ようと思った時に賊が二人襲ってきましたがアキトが倒してくれました」
「女物の下着見に行きたいっつーからよ」
「……え~」
女性陣が
「えっ……いや…その………もう買い物は終わったかなと思って………」
「将来のベッドの上での事を想定して勉強したかったらしい」
「アキトォ! 何を言うんだ! そんなこと言ってないだろう!」
「でもそういう意味だったろ?」
「…………」
「
「ご無事ですか!?」
ちょうどいいタイミングで騎士団長が店に入ってきた。よかったな
「どうやら大丈夫の様ですね。これから城に戻りますのでしばしここで待機願います」
「…仕方ないですね。もっと観光したかったのですがね」
「こういったことが起きた以上続けることはできません。申し訳有りませんがご理解ください」
「わかりました……」
「はい…」
残念なのはわかる。だけど襲撃されたちあっちゃ続けるわけにはいかないよな。まだ他にも潜んでるかもしれない。身の安全を考えると当然そうなるだろう。待っている間に
その後、しばらくしてから騎士団の馬車が大勢で来た。全員で城に戻った。城の一室で今回の襲撃のことをいろいろと聞かれた。嘘偽りなく全部答えた。
長い時間質問され
「はあ~………やっと終わったわ」
「お疲れ様。
「聞かれてもわかんないわよ~。私何も心当たりないんだもの。派閥争いとは言ったけど、私何も関わってないから全然わからないわ」
「派閥争いだとしたらサンドリアスでしなくてもいいと思うけどな」
「本当それよ。ヴィクトリアンの者として申し訳ないわ。それにもっと観光したかったわ……最終日だったのに…」
「初日じゃなくてよかったじゃない。初日に起きてたらきっとその後のこと全部中止になってたと思うもの」
「そうねぇ……まだマシだと思うことにするわ」
最終日に余計なことが起きたせいで
捉えられた賊に関しては聞くつもりはない。面倒ごとに首を突っ込む気はないのだ。そういう問題は
その後、
そして家に帰ってきた。
「やっと護衛依頼も終わりかぁ。なんだかんだで疲れたなぁ」
「私はあんまり疲れなかったわね。今日の襲撃に驚いたくらいだわ」
「アキトは警戒しすぎ」
「そうなのかもなぁ。今日のを除くと警戒しすぎなのかもしれない。もしくは慣れないだけか」
「いつものベルベット商会の護衛とは違ったものねぇ」
それから今回の護衛の反省会を軽くした。反省会と言っても皆初めての依頼だったし俺たちだけに限ると至らない所だらけだ。国から騎士団長たちがいたからまともに護衛できていた様なものだろう。正直俺たちだけじゃ赤点もいいところだ。上げ始めるとキリがないので終わろうということで終わった。
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