108話 謁見2
「はい。私たちは遊びに来ました!」
「「は?」」
(こいつなんて言った?)
「見識を広めるなんて建前ですよ建前! どうでもいいんです! せっかくサンドリアス王国の王都に来たんですから好きなように自由に観光したいんです! だから私たち
第二王女の大声が謁見の間に響いた。謁見の間は静まり返っていた。誰もが第二王女の主張に驚いていた。
静まり返った謁見の間で大声で主張した本人は辺りを見渡して皆が静まり返っていることに気づいた。
「…失礼しました。ですが、今のが嘘偽りない本心です。おそらく政治的なものを想像されたかと思いますが、そういった意図はまったくございません。紛らわしい手紙で申し訳ございませんでした」
話の流れは完全に第二王女のリリーナが支配していた。謁見の間の大半が呑まれていたが、とある二人は面白そうにしていた。アキトと宰相である。二人とも目の前にいる第二王女のリリーナに興味を示していた。アキトは気が合いそうな奴だなと思い、宰相は笑いを堪えながら状況を楽しんでいた。アキトが宰相を見て宰相もアキト見てアイコンタクトを交わした。
(おい。面白がるのもいいけど何とかしろよ。進まねーだろ)
(いやー実に面白くてですね。もう少しこのままにしたいですが、さすがに進めないといけませんね)
通じたのかわからないが宰相がオヤジに声をかけた。
「陛下。政治的な意図はないそうですので、警戒する必要もないでしょう。今の主張からは嘘とも思えません。もしあれば制裁を加えればよいだけのことです」
「うむ…そうだな」
おそらく向こう側で一番偉いのはこの第二王女だろう。その一番偉いのがこう言うんだ。政治的なものは本当にないんだろう。後ろの奴らは何か言いたそうにしてるから上にはなくても下には利用しようって気はあったのかな。
「事情はわかった。以前貴国の第二王子が来た時の事もあるのでな。また何かあるのではないかと思っていたのだがな」
「その節は愚兄が大変失礼な事を申してしまい申し訳ございません」
「はっは。よいよい。しかし、先ほどのリリーナ嬢の主張は気に入ったぞ! ワシも子供の時は好きに遊んで回りたいと思ったものだ。種族の年齢のことも考えているのは素晴らしいな。宰相。あの件はよいな?」
(お。合図だな。この王女さんは面白そうだから了承するか)
打ち合わせで決めていた合図だと思い俺はオヤジに目線を向ける。するとこちらに顔を向けていたオヤジは察したのか正面に向き直した。
「例の護衛の者だが、こちらで用意した護衛をつけるとしよう。その者に明日は王都を案内してもらうがよい」
「無理を聞いていただきありがとうございます!」(本当に用意できたのね。というかさっきのあの子よね?)
「ありがとうございます」
王子と王女ともに礼を言っているが、後ろの奴らは物凄く不満がありそうだ。発言を許されてないからか黙っているが物凄く何か言いたそうだ。放っておいてもいいんだろうか。気になるから宰相に聞いてみよう。左手に持ってる刀の柄で宰相をつつく。つつくとこちらを向いたので右手で口元に手を当て小声で話したいというジェスチャーをとると近づいてきたので話す。
(後ろの奴らすげー不満ありそうだけどいいのか?)
(ああ、ここで話すような内容ではないでしょうし、向こうの事情でしょうから放っておいていいですよ)
「む? 二人ともどうした?」
「いえ、問題ありません」
その後は王子がこっちの担当のはずのバカ王子がいないのを聞いてきたがオヤジが体調不良だと誤魔化していた。他に何か王妃や姫さんも何か話していたが王女と王子だけで話していた。最後の方に俺には関係ない予定などを話していた。
「さて、ここで長話もなんだろう。長旅で疲れているであろうし、このくらいにしようではないか。腹も減っておろう。続きはこの後の食事をしながらでよいだろう」
「ありがとうございます。サンドリアス王国の食事も楽しみにしておりました」
「そうかそうか、では下がるといい」
「はっ」
どうやら謁見はお開きらしい。王女たち一行は下がっていった。これで終わりらしいが…あれでよかったんだろうか? いきなり刀突きつけたけど何か意味はあったんだろうか?
「とりあえずはひと段落だな。何もないという言質も取れたし良しとしよう」
「オヤジよー。あれでよかったのか?」
俺は空気も読まずに発言した。あれでよかったのかがわからん。何か考えがあったんだろうけど
「ああ、予想以上だったぞ」
「向こうへの牽制か何かわからんがもうやらんからな」
ヴィクトリアン王国の面々に対しての牽制もあるが、本当の狙いは国内の貴族たちに対してだった。アキトが現れてから約一年と半年程度。最近アキトを疑問視する声がチラホラあがっているからだ。特に武門の貴族たちからだ。レイスを倒してきたという報告がされ疑うものも出てきているのだ。本当に規格外の強さがあるのかという疑問と国王への不信だ。国王が騙されているのではないかという考えが貴族たちの間には出てきている。改めてアキトの実力を示し貴族たちを牽制しようとしたのだ。
結果としては上々の結果が得られた。武門の貴族たちはアキトの動きに戦慄していたのだ。見えない速さで王女の前に移動し剣を突きつけていた。殺そうと思えばいつでも殺せただろうし謁見の間にいる者全員を殺すのも可能だったかもしれない等、彼らの頭には様々な状況がよぎっていた。そして改めてアキトの異常さを実感したのだった。
「はっは。すまんな。この後は食事なのだが、お主も一緒にどうだ?」
「行くわけねぇだろ。俺はさっきの部屋に戻ってるからな。部屋で飯食いながら待ってればいいんだろ?」
「ああ、食事の後に向こうの王女たちにお主を紹介するでな。それまで待っててくれ」
「はいよ」
「では、皆、解散とする」
俺は刀をアイテムボックスにしまい堂々と並んでる貴族たちの間を歩き謁見の間を後にする。姫さんが何か言ってくるかと思ったが王妃に捕まっていた。常に見張っていてくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます