109話 顔合わせでの出来事
謁見に行く前にいた部屋にノックしてから入る。
「戻ったよー。何もなかった?」
「おかえり。何もなかったわ。謁見はどうだった?」
「王女は面白かったな。気が合いそうだから案内中も話は弾みそうだよ。あと、受けることにしたからよろしく」
「わかったわ。王子様のほうはどうだったの?」
「今のところだけど引っ込み思案って感じ? 謁見中は王女の言いなりだったな。でも話せないやつではなさそうだったよ」
アキトの目には王女は活発で常識にとらわれない性格をしているように見え、王子のほうは大人しく姉の腰巾着な印象だった。この二人に関しては特に問題はなさそうなのだが、不満そうにしていた家臣団? の奴らのほうが気になる。俺やシエラたちを見て何か言ってきたりしてこないか不安だ。
「向こうは昼飯食ってから俺らと顔合わせらしいから、俺たちも弁当食べようか」
「お腹空いた」
今日の弁当はミルファ任せだ。俺は食材を渡しただけで何もしてない。丁寧に箱に入れてあるがここまで綺麗にしなくてもよかったのにな。簡単なサンドイッチとスープだったが美味しく食べることができた。俺のアイテムボックスに出来たてのスープを入れてきたから温かいままだ。最近はミルファに作ってもらってるからか食事は新鮮な気分だ。あと俺が作ると肉が多くなるがミルファはちゃんと野菜も入れてくれるので健康的だ。作り方を教えたのは俺だが同じレシピでも作る人によって個性が出るのも料理の楽しみの一つだ。匂いが残りそうだから窓開けて換気しないとな。
弁当を食べ終え借りていた騎士服を脱ぎ着替えて待っていると扉がノックされ、モニカが入ってきた。
「失礼いたします。皆様、もうしばらくしますとヴィクトリアン王国の方々と顔合わせになります。皆様はこのままこの部屋でお待ち下さい」
「わかった。さすがに全員来たりはしないよな?」
「はい。王女様と王子様と側近の方が数名です。陛下も来られますのでご安心ください」
「はいよ了解」
「それと陛下から一つ伝言がございます」
俺はモニカの発言に露骨に嫌な顔をした。嫌な予感しかしない。
「『好きにしていい』とのことです」
「またかよ。
「嫌な予感するわねぇ」
「何かあるんですかぁ?」
「あるんだよ。レイは大人しくしてればいいぞ。俺が対応するから」
「は~い」
「では、失礼いたします」
そういってモニカは部屋を出て行った。今日のモニカは何か雰囲気が違うなぁ。仕事モードだとあんな感じなんだろうか? 俺が城に来た時も仕事中な気がするが…
ソファーに座りしばらく待っているとまた扉がノックされて今度は
「待たせたな! アキトよ」
「またなんか企んでやがるな?」
「ワシではないぞ。入ってくるといい」
「失礼する」という声と一緒に人族の男が二人入ってきた。おそらく30歳くらいだろう。その後ろに先ほど謁見の間で見た王女と王子が居て、そのさらに後ろに人族の男二人がいた。この前後にいる男たちが向こうの護衛なのだろう。謁見の間でも見たがこの国の騎士が来ている騎士服とは違う騎士服を着ていることから向こうの国の騎士だと思う。雰囲気的には貴族っぽい感じで俺を見るなり敵意を向けてきた。ちょっと露骨すぎやせんかね?
「この者たちが我々が用意したそなたらが求めた護衛の者だ」
「やっぱりそうだったのね!」
オヤジが俺を紹介すると王女は興奮した声をあげる。この反応を見る限り王女は謁見の間で俺のことを見た時から護衛につくのは俺だと思っていたようだな。こっちに歩いてこようとしたが前の護衛っぽいやつの一人に止められていた。
「殿下、お待ちを」
「…………はいはい」
「君が我々と護衛する者か。冒険者か」
「
護衛に止められた王女さんは露骨に不機嫌そうな顔をしている。止めた男が俺の前に歩いてきた。こっちが名乗ったんだから名乗りくらいして欲しいものだ。
そして俺の目の間に来ていきなりナイフで俺の顔を目掛けて突いてきた。警戒はしていたし動きも大したことなかったので難なく躱した。少し驚いているようだ。さすがにこれには文句の一つや二つ言わないといけないだろう。
「なんだこれは?」
「………合格だ。明日から我々とともに殿下の護衛についてもらう。だが勝手なことはするな」
そう言ってナイフを引いた。なんかわからんが俺は勝手に試されたようだ。合格らしいが気に入らんからこっちも試してやろう。
油断しきってるからとりあえず腹パンをお見舞いしよう。
ドスッ
「うぉえっ! ……貴様……何を…?」
強めに腹パンをお見舞いすると男の体がくの字に折れ曲がった。苦しそうに俺の方に顔を向けて質問してきた。王子と側近たちはかなり驚いているようで目を見開いている。ただ王女だけはニヤついていた。
「不合格だ。不意打ちに対応できるかどうかを見たようだが俺の軽い不意打ちに対応できないんじゃダメだ。護衛にいても邪魔なだけだ。護衛には来なくていいぞ」
体がくの字に折れ曲がっていて顔が殴りやすい位置にあったのでさらに追加で顔を殴り跳ばしておいた。殴られた男は前にいたもう一人の男に受け止められた。王女の顔は先ほどの不機嫌そうな顔と打って変わりとても機嫌が良そうなニッコニコの笑顔である。
「これでよかったか王女さん? 明日からの護衛にそいつは連れてくるなよ」
「ええ! 大満足よ!」
「そりゃよかった。他の3人も似たようなもんなら来なくていいからな。サンドリアスからは騎士団長もつくしな」
「聞いてのとおりよ。あなたたちは明日からの観光には付いて来なくていいわ。命令よ」
「しかし…殿下」
「命令」
「………はっ」
う~む。自分で言ったもののなんか悪い気がしてきたな。あの騎士達も仕事なんだろうしなぁ。
「立ち話も何だ。座って落ち着くといい。モニカが茶と菓子を持ってくるでな」
「ありがとうございます。失礼致しま………」
すでに一人用のソファーに座っている
「ん?」
どしたん? といった感じでフェリスが顔を上げた。誰が来てもマイペースなフェリスだ。
「えーっと…座っていいかしら?」
「いいよ」
王女さんに普通に答えて寝転んでいる姿勢からソファーに座りなおした。そのままだとフェリスの両隣に王女と王子が座ることになる。フェリスがそっち側みたいになってしまう。ふと気づいたが宰相が必死に笑いを堪えていた。
「フェリス。こっち来い。そっち座ってるとややこしい」
「ん。わかった」
とりあえずフェリスをこっち側に来させて例の隣に座らせる。これでこっち側のソファーは
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