104話 バカ王子
翌日、朝食を食べて城へとやってきた。ミルファはパーティメンバーではなくメイド代わりなので留守番だ。
「城に入るのなんて初めてだから緊張するわね」
「私は楽しみ」
「私奴隷なんですけどいいんですかね?」
「別に大したことない場所だぞ。レイも気にしなくていい」
俺以外は城に来るのは初めてなのでそれぞれ違った反応で見ていて面白い。平民の場合普通なら緊張するのかな。シエラの反応が普通なんだろう。
門番にも連絡は入っているようで俺が3人を連れていても普通に入れてくれた。城の中に入りいつも通り案内のリーネを待っていると、姫さんと一緒に来やがった。
「アキト様! ようこそお越しく」「むふーん」「………退いてください」
さっそくフェリスが姫さんの前に立ちはだかる。姫さんの前でファイティングポーズのような感じで両手を胸の前で握っている。フェリスなら王族が相手でも気にせずに相手するだろうと予想したが予想通りだ。それに一度会っているからな。
「アキトのチ○チ○は渡さない」
「ち! ………下品です!」
「チ○チ○くらいで狼狽えるなんて。フンッ」
フェリスは勝ち誇った顔で顔を真っ赤にした姫さんを見ている。そこへリーネが割って入った。
「殿下。話が進みませんのでお辞めください。アキト様。ようこそお越しくださいました。ご案内いたします。どうぞこちらへ」
姫さんを無視していくリーネ。かなり雑に扱っているがいいんだろう。リーネに付いていくが俺の後ろでフェリスと姫さんが攻防を繰り広げている。少し歩いて客間に付いた。リーネ曰くここで打ち合わせするそうだからここで待っていて欲しいと。大きいソファーがあったので真ん中に座り両サイドにシエラとレイを座らせてこれで対姫さん防備は完璧だ。今もフェリスが姫さんと取っ組み合っている。はたから見ると戯れているようにしか見えない。身体強化があるぶんフェリスが圧倒している。
「ふんー!」
「ふんぎぎぎぎぎぎ!」
今は手四つでフェリスが押している。お茶を出してきたリーネもただ戯れているように思っているのか全く止める様子がない。
「ああ、緊張するわね」
「大したことないからもっと落ち着きなよ。茶でも飲んでさ」
「そうは言ってもやっぱりお城なんて緊張するのよ。フェリスは遊んでるしレイは緊張してる素振りすらないし」
「全部ご主人様にお任せするんで~私はただ居るだけって感じですから~」
「私もレイみたいにすればいいかしらね…」
「そうすればいいよ。気になることがあれば聞けばいいよ。俺通してでもいいし」
「そうするわ。緊張してても仕方ないものね」
どうやらシエラは諦めてレイと同じようにすることにしたようだ。俺としてもずっと緊張されているのも困る。おそらく依頼中にも城に来ないといけないだろうから慣れてもらわないといけない。レイは俺任せだしフェリスは何ともなさそうだ。
しばらく待っていると
「待たせたなアキトよ。依頼を受けてくれて感謝するぞ」
「金欲しいだけだ。手間賃もくれるみたいだしな」
「ハッハッハッハ。別に構わん。アキトはまだ会ったことないだろうからまずは紹介しよう。ワシの息子のアルスターだ」
知らない銀髪のエルフがいると思ったら
「初めまして。話は聞いているよ。今父上からご紹介に預かったアルスタ………」
「どうした? アルスターよ。止まるでない」
「そ…そちらの女性は………」
急に止まったと思ったらシエラを見て止まっていたようだ。シエラは美人だから見てしまうのはわかるが自己紹介の途中で聞かなくてもいいと思うが…
「あなたを私の側室に迎えたい。いや! 迎えるとしよう!」
「ええ!?」「は? お前何言って」
「君は黙っていたまえ! 平民だろう! 王族の前で無礼だろう!」
いきなり何を言い出すかと思えばシエラを側室に迎えたいと意味のわからないことを言い出した。
「やめなさいアルスター。何を言っているのかわかっているのですか?」
「やめよアルスター。お前はこの場を台無しにするつもりか?」
「殿下。今はそういう話をする場ではありませんよ」
「3人とも黙っていてください! 私の将来の妻を」 パァン!
王妃が怒ったのか物凄い形相で王子にビンタをしていた。いい気味である。腹が立っていたが少し気が晴れた。できれば俺が殴りたかった。
「来なさい! あなた。少し任せます」
「ワシも行こう。カインズ。先に進めておいてくれ」
「わかりました」
王妃が王子を連れて部屋を出て行った。それに続き
「一気にやる気がなくなったな」
「私も………嫌になってきたわ。権力にものを言わされるなんて…」
「大変申し訳御座いません。王子殿下はちょっと………変な影響を受けて帰ってきまして…再教育中なのです」
宰相が言うには王都に来る王子と王女の国にある魔法大学に留学していたそうで、そこで悪い影響ばかり受けて帰ってきたということらしい。正直どうでもいい。
「そんな理由なんてどうでもいいっつの。やる気なくなったしやめるか」
「まあそう言わずに………おそらく王子殿下はこの件からは外されるでしょうから。アキト殿達には一切関わらせませんので…報酬も上げますから」
「まあ………思えばもう受けるって言っちまったしなぁ」
「そうなのよねぇ………言っちゃったのよねぇ」
「受けないといけないよなぁ。口約束だからって反故にするのもなぁ」
「申し訳ない…」
正直かなり頭にきている。王家が俺だけを狙うんだったら別にいい。
だが今回の王子が権力にものを言わせてシエラを狙うというのなら話は別だ。権力にものを言わせようというのなら俺も『力』を使ってシエラを守る。シエラでなくてもフェリスやレイ、ミルファを狙うんだったら俺は『力』を使うことを躊躇ったりはしない。
「まあ………
「ええ。苦労してるんですよ。アキト殿を時間をかけて取り込む策も今ので全部パアです。もう諦めますよ」
「そうか。諦めてくれ。騎士団長も大変だな。そっちの女の騎士も」
「私は…軍事関連ですので…まあそれなりには苦労してます。というかサフィーには会ったことがあるのでは?」
「そこの女の騎士か? 知らん」
「そ…そんなぁ………」
俺のことを知っているらしいが全く覚えていない。女性騎士はがっくりと肩を落としているが知らんもんは知らん。
「あの………王女殿下を助けて頂いた時に馬車でご一緒させていただきました。サフィー・ディ・シンドールです………」
「サティならわかるんだがな」
「それはベルベット商会の女性でしょう」
「おーい姫さん………はいいか。リーネ。こいついた?」
「…はい。居ました」
「わりぃ。思い出せん」
シンドールは何か聞いたことがあるような…姫さんに聞こうと思ったが未だにフェリスと取っ組み合いをしている。終始フェリスが優勢だが姫さんも負けず嫌いなのかずっとフェリスに挑んでいる。ちなみにさっきの出来事の間もずっと取っ組み合いをしていた。そこへ
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