100話 ヒモ化計画の終わり?

 レイスが完全に離散するのを確認した所で戦闘態勢を解いた。倒した今だがら思うが身体強化は全力でやる必要はなかったな。その分をライトショットに手数に回せばよかった。頭の中で軽く反省会をして駆けつけたフェリスに声をかける。


「助かったぞフェリス。よく来てくれた」

「むふふ。ご褒美を期待する」

「でももうちょっと早く来て欲しかったなぁ」

「あ~…それねぇ」


 フェリスは満足げな顔でご褒美を要求してきているがどうせチ○チ○だろう。だけど次はレイの番なんだ。だからおでんで我慢してくれ。

 ヒルダの様子から来るのが遅れたのは理由があるみたいだがなんだろう。


「フェリスちゃんがねぇ………」

「あの狭い穴のハシゴ状になってるくぼみにおっぱいが引っ掛かってなかなか進めなかった。あと場所によって縦穴が狭くなってるところもあったから引っ掛かった」

「そういえば狭くなってるところもあった気がするな。俺は普通に通れたからなぁ。だから防具がちょっと汚れてるのか?」


 フェリスの防具はよくわからない縦模様の汚れがついている。おそらくヒルダが無理やり引っ張ったのだろう。まあ………仕方ないか。無事にレイスは倒せたしいいか。


「引っ掛かって遅くなったのは誰かがおっぱいをぎゅうぎゅう揉んで大きくしたのが悪い。だから私は悪くない」

「はいはい。俺が悪かったよ」

「二人のベッド事情はいいから部屋調べるわよ。といってもだだっ広い部屋で何もないからレイスの剣くらいね」


 部屋にはこれといって何もない。一体何に使われていた部屋なのか気になるが今は戦利品の確認をしよう。レイスが持っていた魔鉄の剣だ。大剣とまではいかない直刀だ。


「これ結構いい剣なのかな~? 使おうとは思わんが…」

「アキトくんが使えばいいんじゃない?」

「レイスが持っていた剣だから呪われそうだし、何より調査で得た物に含めればいい金になると思うぞ。柄頭に何かよくわからん紋章あるしよ」

「じゃあお金にしましょう!」


 そういえばヒルダは金欠なんだった。金にするといった瞬間に即答してきたのが金に目がくらんでいる証拠だ。


「ねーねーあの死体はどうするの? 先に来てた冒険者達だよね?」

「あーアンデッドになられても困るし、金目の物だけ貰って燃やしましょう」

「ここで燃やすと面倒そうだから俺のアイテムボックスに入れていって外で燃やそう」

「アイテムボックスって死体も入るのね。どれどれいくら持ってるかしらね」


 ヒルダが死体から金目の物を喜んで物色している。未だに俺はこの世界の倫理観というか常識というか、そういうものにまだ付いていけてないな。物色が終わりヒルダは金と武器を持ってきた。武器は売れば多少は金になりそうだ。


「しっかしこの部屋一体なんだろうな? こいつらもどこから入ってきたのやら」

「多分あれ」

「んあ? ………落とし穴か何かか?」

「そうじゃない?」


 死体をアイテムボックスに入れながら疑問を口にするとフェリスが天井を指差した。天井には大きい四角い穴があった。あそこから落ちて来たのだとすると説明がつくが………ますますこの部屋は何なのかわからない。結構しっかりした作りになっているしなぁ。


「何か悪いことにでも使ってたんじゃないかしら? 面倒な奴を闇に葬るとか実験とかね」

「あ~なるほど。俺達が通ってきた通路はここの管理用ってことか」

「多分そうよ。戻りましょう」


 この部屋にはもう何もないので戻ることにした。戻るときも何かないか見ながら歩いていたが特に何もなかった。螺旋階段を上った先の部屋にある本などは本棚や机丸ごと持っていくことにして後で整理する。上ってきた小さい穴から下に降りたのだが…


「ふぎゅうううううううう! 痛いーーーーー!」

「我慢しろフェリス! レイ! 俺を引っ張れ!」

「はーい」


 降りるとシエラがすぐに心配して声をかけてきて大丈夫だと答え、フェリスとヒルダが降りてくるのを待っていたのだがなかなか降りてこないと思ったらフェリスが途中で引っ掛かっていたようだ。仕方ないので無理やり引っ張る。俺はフェリスの足にしがみつき、下からレイに引っ張ってもらう。その甲斐あってかフェリスは抜けることができた。


「ふぐうううううう! おっぱい痛い!」

「ちゃんと抜けれたんだからいいだろ」

「行くときもこんな感じだったのよねぇ」

「おっぱい大きいと大変だねぇ~」


 フェリスは防具の上からおっぱいを少し動かしながら治癒魔法をかけて痛みを取っている。行くときはどうやって来たのか気になるがフェリスを見る限りロクな目に合わなかったんだろうな。ロープでフェリスを縛って無理やり引っ張ったのだろうか。


「行くときは思いっきりおっぱいを壁に押し付けて無理やり進んだ。凄く痛かった。アキトが不味いっていうから頑張った。ご褒美を要求する!」

「はいはい。俺が悪かったよ。おでんで我慢してくれ」

「おお! おでん! 許す!」


 チョロいぜ。ヒルダも降りてきて持ってきたものを整理しながら皆に隠し通路の先であったことを報告する。こっちでも変化は感じていたようで嫌な感じがなくなったそうだ。おそらくはレイスを倒したからだろう。


「しかし、本物のレイスですか…う~ん」

「何か不味いのか?」

「依頼主がレイスがいることを把握していたかどうかですよ。それによって依頼金は大きく変わります。本来ならばアンデッド専門の討伐隊が組まれるほどですよ」

「あ~そういうことね」


 確かにいるかいないかで変わるだろう。討伐隊が組まれるほどなら金も大層な額が動くことになる。おそらく金貨100枚では済まないからギルバートは気にしているんだろう。


「まあ、今それを考えても仕方ありません。結論も出ませんからね。レイスの相手をしてお疲れでしょうから今日の調査はあと少しにして早めに切り上げましょう。あと1日ありますからね」

「その切り替えの早さは見習わせてもらうよ」

「ええ。これでも先輩ですからね」


 ギルバートには見習う点がいくつもある。冷静な判断といい、切り替えの早さといい優秀だ。ただ聖人かと思うほどの他人に対する甘さはちょっと行きすぎな気もするがこれもギルバートの良い所なんだろう。


 その後は落とし穴に気をつけつつ調査を再開。やはりこっちが本館なのか備品等がかなりの数残っている。用意した箱が二日分の調査でいっぱいになる程の量があった。主に記録していた本や魔道具らしきものが多かった。使い方もよくわからない物ばかりだ。アンデッドも少し出てきたが特に問題なく倒していけた。


 調査を終え帰路につく。帰りは印を辿るだけだから早いものだ。魔物も出てきたが半日かからず森を出ることができた。村で一泊し王都に戻る。その際先に来ていた奴らの馬車も一緒に持っていく。さらに死体を燃やすのを忘れていたので道中で燃やした。帰りは何事もなく予定通りに王都に戻って来ることだ出来た。


「予想以上に早く帰ってこれたな~。まだ昼だぜ」

「その分ゆっくり休めるよ。ギルドで捕まらなければだけど」

ギルドマスターハゲがうるさそうだな。レイスまでいたからな」

「おそらく報告は明日になるでしょう。依頼主の貴族にも報告しないといけませんから一度に纏めた方がギルドとしても楽ですからね」


 ギルドに馬車を返すのと報告に行くとギルバートの予想通り報告は明日の朝ということになった。先払いで1パーティ分の依頼料金貨30枚を受け取ることができた。持ち帰って来た物はギルドには預けずに明日報告の時に渡すことにした。あのギルドマスターハゲにチョロまかされたら適わんと俺がゴネた。報告した受付がエルナさんだったので普通に通った。俺がアイテムボックスから出さん限り何もできんからな! 主導権は俺にある。


 打ち上げ代わりに昼食を全員で食べに行き今日は解散となった。別れ際にギルバートから明日は好き放題言ってかまわんと言われた。なら好き放題言わせてもらおうじゃないか。貴族相手に言えるのも俺くらいだしな。

 俺達は家に着き各々休憩する。フェリスが風呂に入りたがったので風呂にした。15日も入ってないとやはり気になるものだ。


「ふ~さっぱりした。次シエラいいよ~水足したからちょっと温いかも」

「温めるからいいわよ~」

「じゃあ俺晩飯の前にちょっと出掛けるね」

「休めばいいのに。どこ行くの?」

「城。ちょっとレイスの件裏取ってくるよ」

「ああ、なるほどね。陛下なら知ってそうよね」

「そういうこと~じゃあ行ってくるよ」


 結果としてオヤジは何も知らなかった。宰相も来たがそういう報告はなかったそうだ。どんな報告が上がってくるか楽しみにしているそうだ。ただ案内がリーネではなくモニカだったのだが、聞きに来ただけというと残念そうにしていたので仕方ないから作り置きの唐揚げを口に一つ突っ込んでおいた。満足したようだが来る度に餌付けしないといけないのかと思うと少し嫌だな。姫さんに捕まらないうちにとっとと帰るのだ。帰りに野菜等を買ってから帰る。


 夕食はフェリスがうるさそうなのでおでんだ。美味しそうに食べてるからいいだろう。夜這いはなかったがシエラがフェリスにかけていたようだが俺は何も聞かなかったことにした。


 翌朝ギルドに行くとさっそくギルバートが声をかけてきた。何でもレイスがいたことの証明のためにレイスが持っていた剣を鑑定の魔道具にかけるそうだ。何でもどんなものか調べてくれる便利な物らしい。さすがファンタジーの世界だ。便利なものがあるなと思っていたが使うには魔石が多く必要なようで料金も金貨1枚と高い。だがあの剣を買い叩かれるよりはここで使った方がいいとギルバートは判断したようだ。まだ依頼主が来ていないのが幸いだ


 職員にギルドの奥の部屋に連れて来られて剣を出すよう言われたので出す。鑑定の魔道具は大きな台のようなものだった。台の上に置けば調べてくれるような仕組みらしい。きっと中になんかいろいろ術式とかあるんだろうな。剣を台の上に置くと、職員は横に紙を置いて何かしらのスイッチを押したのか鑑定機の台が光った。


「「「「おお~」」」」


 四人揃って声を上げてしまった。すぐに終わったのか光はおさまった。職員が横に置いてあった紙を確認している。


「確かに、レイスの剣ですね」

「それはよかった。これで不安材料がなくなりましたね」

「どんな風に書かれてるのか気になるから見せてくれ」

「お待ちを。今署名をしますので。ギルド職員の署名がないと無効になってしまうんです。どうぞ。これが鑑定書になります」


 署名された紙を見せてもらうと


 エアハルトの剣

 材質:魔鉄

 レイスとなったエアハルトが所有していた剣。レイスとなり魔力を長い年月帯びたことによって魔鉄に変化した剣。


 と簡単に書かれていた。もっと詳しくいろいろ書かれているのかと思ったが名前くらいのようだ。魔道具とかだったら下の説明欄に詳しく書かれるのかな? 試しに俺の”簡易鑑定”でも見てみる。


 剣


 としか表示されなかった。俺の”簡易鑑定”は物に関してはあまり効果はないようだ。そのあと会議室に移動して待機だ。ティル達はもう来ていた。待っていたらルカさんが入ってきた。


「あれ? 何でルカさんが来たの?」

「ああ。この依頼アキト君達だったのね。実は昨日からギルドマスターの補佐役になっちゃったの。給料は上がるけど嫌なのよねぇ。それで私は揃ってるか確認に来たのよ。もう1パーティいるはずなんだけど知ってる?」

「ああ。そいつらなら死んだよ。レイスに殺されてたみたい」

「え? レイスがいたの? ………まさか…倒したの?」

「倒したよ。なあ?」

「うん。倒した」「ええ。私も見てたもの」


 ルカさんは目を見開いて信じられないといった表情でこちらを見ている。ついでだから追い打ちで剣とさっきの鑑定書も見せよう。


「これ証拠ね」

「! ………本当見たいね。わかったわ。もう少し待っててちょうだい。依頼人も来てるからギルドマスターと一緒に呼んで来るわ。もう1パーティは全滅でいいのね」

「ええ。全滅です。レイスがいるとわかっていたなら、こんなことにはならなかったでしょうね」


 ルカさんが確認をして、ギルバートが追い打ちをかける。どうした聖人ギルバート。お前が追い詰めるなんてらしくないじゃないか。でもわかっていたら回避できたかもしれないもんなぁ。多分聖人であるがゆえに知らないあいつらでも情報があれば死ななくてよかったかもしれないのに死んでしまったのは腹が立つんだろうな。


 確認を終えたルカさんは会議室を出ていきしばらくしてギルドマスターハゲと依頼人のなんとか子爵だったかと一緒に来た。なんとか子爵は今日は執事と一緒に何人かの男性達と一緒だ。確か歴史の研究してる所の副所長だったはずだからそこの職員だろう。


「待たせたな。軽くルカから報告を受けたがレイスがいたと聞いた。無事で何よりだ」

「本当にレイスなどいたのか怪しいがね」「君達の虚偽の報告では? その場合は法に則り裁かれることになるだろう」

「何も報告聞いてねぇじゃねぇか。剣と鑑定書あるって聞いてねーのかよ。そっちこそ本当にレイスがいたのを把握してなかったのか怪しいもんだ」


 どこぞの職員らしき男達が疑ってきたのでこちらも反論する。何か言いたそうにしていたがなんとか子爵に止められていた。


「レイスがいたことに関してはこちらではまったく把握していなかった。このことに虚偽はない。これは信じてもらうしかないね」

「こっちはちゃんと証拠を出してるんだ。それを信じられないと言うんだったらこっちにも考えがある。ちなみにそっちがレイスの事を把握してなかったのは裏取ってあるから気にしなくていい」

「………そうですか。ではまず剣と鑑定書の確認をさせてください。それから報告を聞きましょう」


 俺のことは知っているらしいから俺の後ろについてる奴を示唆する。さすがに察しているのか大人しく確認だけするようだ。確認しそれぞれ納得したようだ。その後はギルバートがいろいろと説明していた。俺はだいたいの説明が終わった後で持ってきたものを全部出した。出すと子爵と職員らしき者達はかなり驚いていた。


「………予想以上の成果です。これはすべて買取させていただきたいのですが、明らかに予算を超えてしまいますね。ですのでしばらく時間をいただけますか? 上に通さないといけませんので」


 というので全員これに了承。チョロまかされる心配もないだろう。何せ国王を味方につけている奴がいるのだからな。その二日後にはギルドに買取金額が渡されたようだ。オヤジが動いたのかわからんが仕事が早い。


 何と合計で金貨500枚となった。ギルバート達と相談して金を分配する。俺とフェリスでレイスを倒したからかこっちの取り分を多くしてくれた。こっちが金貨300枚で向こうが金貨200枚だ。向こうは5人だが均等分配しても一人金貨40枚だ。十分過ぎるとティルとヒルダが喜んでいた。さらにヒルダ達は全員ランクが上がったようでBランクになっていた。ビッグスとウェッジはCランクだ。俺達の方は俺が特例で上げるなというふうな感じになっているため特に変化なしだ。別にゆっくりやるからランクはいいのだ。


 ティルとヒルダがランクが上がったことで祝えとしつこかったので家で飯を作ってやることにした。ついでにギルバート達男性陣も一緒だ。せめて食材は買ってこいと言って、夜に家に来ることになった。その間に俺達は家で報酬の分配だ。単純に一人頭70枚で残りの金貨20枚は生活費やパーティ用の資金行きだ。シエラとフェリスの二人とも俺に金貨50枚ずつ渡してきた。


「これで借金は返済ってことでいいかしら?」

「これでヒモ生活から脱出だね」

「二人がそれでいいならそれでいいよ」

「私のはまたご主人様が持っててくださーい」

「レイの武器用に取っておくよ」


 そのあとシエラがワインを買いに行きたいというので一緒に行ってきた。金貨1枚のワインを4本に金貨3枚のワインを1本買っていた。聞くと今日の夜に飲む用らしい。そういえば酒豪なんだった。帰ると夕方くらいになっており、家にはもう全員集まっていた。肉と酒ばっかり買ってきていたので楽して唐揚げにしようとしたら凝ったのを作ってくれとティルとヒルダがうるさかったので仕方なくハンバーグを作ったり、牛丼のような肉炒めを作ったりした。さらにギルバートが依頼中に食べた生姜焼きをリクエストしたので作った。ついでに米も炊いた。生姜焼きと米の組み合わせは最強だからな。作った料理は概ね好評だ。ティルとヒルダも買ってきた酒をガバガバ飲んでいたが、それ以上にシエラが飲みまくっていた。フェリスとレイは基本的に酒は飲まないから食べてばかりだった。

 こうやって大人数で騒ぐのも楽しいものだ。

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