99話 戦闘
久しぶりの全開戦闘だ! 相性は悪そうだがゴリ押す!
レイスはアキトに一直線に接近し剣を振りかざしてきた。アキトは今の場所を動けない。後ろにはヒルダがフェリスを呼びに走っている。ここを空けてしまうとレイスはヒルダに襲いかかるだろう。アキトは魔力に物を言わせて初級光魔法ライトショットをレイスに向かい乱れ打ちする。
その物量に驚いたのかレイスはライトショットを避けようとするが何発かは被弾していた。避けようとする隙を逃すアキトではない。すぐさま駆け出してレイスに切りかかろうとしていた。刀には中級風魔法のウインドカッターではなく初級光魔法のライトショットを纏わせている。アンデッド系なら光魔法の方がいいだろうと思ってのことだ。さらに自身の周りにライトショットをいくつも浮かべている。アキトが本気で戦う時の攻防一体の状態だ。今回はアンデッドが相手なのでライトショットだが、いつもは弾丸にアレンジしたストーンショットをいくつも浮かべてすぐに射出出来るようにしている。
だがアキトの攻撃はレイスの剣で防がれる。
「チッ」(刀だからあんまり鍔迫り合いとかしたくねーんだよ。あいつの剣結構太いし)
アキトは刀に魔力を込めているがそれは向こうも同じようだ。
「荒事ならこっちのほうがいいか!」
刀をアイテムボックスにしまい、師匠の形見である魔鉄製の剣を取り出した。しばらく使っていなかったが感覚は忘れちゃいない。
すぐさま距離を取りライトショットで攻撃しながら移動する。どうにもレイスは斬撃への反応が早い。おそらくだがアキトの取った光魔法を纏わせる選択
は正解だったようだ。幸い部屋は広く遠距離からライトショットで攻撃できる。少しだけ時間を稼ぎ上級魔力ポーションを飲む。予想以上に魔力の消費が激しい。
(相変わらずこの戦い方は魔力消費激しいな。レイスが相手じゃなかったらすぐ終わるんだけどな)
ライトショットを撃ちつつ相手に再びレイスに斬り込む。
ガギィン!
(パワーとスピードに関しちゃ俺の本気の方がかなり上だな…だが剣戟での反応速度は大したもんだ)
ライトショットを撃ちつつ接近戦を仕掛け、互いに斬撃を打ち合う。
ガギッギィンギィン! ザシュ! ギィン!
(相性悪いな………やりにくいったらありゃしねぇ! しかも斬った感覚ねぇしよ!)
ライトショットを含め、斬撃もレイスに当てているがすぐに再生しているようだ。動きの面ではアキトのほうが上だったがレイスの再生能力を上回るほどの攻撃を繰り出すことが出来ないでいた。
(相性最悪じゃねぇか。俺の魔法じゃ大したダメージにはなってねぇみたいだし、斬撃は効くが少しすると再生するしどこに魔石があるかわかりゃしねぇ! 深く斬り込むしかないか!)
魔力の節約のためにライトショットの数を減らし正確に当てることに切り替える。数が減った分レイスは動きやすくなったのかアキトに接近する。しかも黒い靄のようなものを出しながらだ。
(本当にやりにくいな。ありゃ何かの闇魔法か? 触るとデバフ受けますってか? 師匠の言ってた通りアンデッドはやりにくいな。このままじゃジリ貧だ)
再びライトショットの数を増やし、黒い靄に当てる。当てると黒い靄は離散しなくなった。だがレイスはまた黒い靄を出し始めた。それに対応するようにアキトは身体強化を強めて動きを早くし、斬撃の手数で攻める。
(師匠も言ってたからな! レイスとかの類は上級の光魔法じゃない限り1発じゃ倒せないから手数で押せってな!)
アキトは師であるキサラの教え通り手数でレイスを攻める。決して立ち止まらずに動きで圧倒して斬り続ける。近づいては斬りつけすぐに離れる。そしてまた近づき斬りつけて離れる。高速のヒット&アウェイを繰り返しレイスを圧倒する。一回の斬撃ではなく2回斬り、さらに離れるときにライトショットも撃つ。これを繰り返しアキトはレイスを圧倒していた。
だが、それでもアキトはレイスを倒しきれなかった。
「ったく。どんだけ丈夫なんだよ。ぷはっ」
距離を取りライトショットで動きを止めつつまた上級魔力ポーションを飲んでいた。さすがに魔力の消費が激しすぎるからだ。
(早くフェリス来ねーかなー。どんだけ時間たったかわからんねーけど、早く来てくれないもんかね)
先ほどの猛攻で倒せなかったのはアキトの想定外だった。自分だけで倒せると判断したがそれは間違っていた。こうなるとフェリスと二人でやるしかない。
(手数でもダメなら次の手なんだよな。早く来てくれよな)
アキトはライトショットでレイスを牽制し続ける。もう次の作戦に移っているからだ。それにはフェリスが必要になる。
「お待たせ!」
そこへ狙ったかのようなタイミングでフェリスとヒルダが来た。
「フェリス! 俺のことは気にしなくていい! ライトショットをあいつ目掛けて撃ちまくれ!」
アキトの作戦はこうだ。
手数で倒せないならさらに手数を増やして押し切る。ようはさらなるゴリ押しである。策などという上等なものではない。師匠にもそう教えられたのだ。
フェリスがライトショットを撃ちまくる。その数はアキトの倍はあるだろう。弾幕とも言えるような魔力量にものを言わせて撃つフェリスの得意技だ。それに合わせてアキトもライトショットを連発する。2方向からの同時攻撃に加えてアキトの斬撃だ。
「オアアアアア!」
さすがのレイスもフェリスが加わったライトショットの数には再生が追いついていない。逃さないためにアキトがまた高速のヒット&アウェイを仕掛けているので逃げようもない。
だが、このままでは終わらないと言わんばかりにレイスは黒い靄を一気に出した。
「オオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「そのまま撃ち続けろ! あの靄はライトショットで離散する!」
「わかった!」
撃ち続けて黒い靄を離散させる。レイスはフェリスを脅威と思ったのがなりふり構わずフェリスに接近した。
「ギャーーー! こっち来たあああああああ!」
ヒルダが叫ぶ。ヒルダはフェリスの後ろに隠れているがアンデッドには対抗策がないようだ。
なりふり構わずフェリスに接近するレイスの隙を見逃すアキトではない。ボロボロのレイスに今度は深く斬り込むため接近すると赤い核のようなものが見えたおそらくあれが核だと思い、核目掛けて深く斬り込む。すると斬っても斬っても感触がなかったが今度は感触があった。するとレイスが動きを止めて徐々に煙のように離散していった。
「オア………カン……シャ……………スル………」
持っていた剣が落ちて完全にレイスは離散した。何か言っていた気がするがよく聞き取れなかった。
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