第7話 スキル練習

 あのあと家に帰って母から魔法禁止令を出されてしまった。まずは魔力を少しだけ出せるようになってからだそうだ。納得である。あんな爆発を何度も起こしていては気が気じゃないだろう。父は大笑いして母に殴られていた。


 それからは父の農作業の手伝いが終われば魔力を少しだけ出せるようになる練習。魔力制御の練習をする日々が続いた。

 結論から言うと一月ほどで母からOKをもらえた。母は1日に何度も魔力を出す練習に付き合ってくれた。

 最初の方はすぐに手を離すことが多かったが10日ほどすると回数も少なくなり、20日もするとほとんど手を離さなくなり30日ほどでOKをもらえたのだ。


「何でこの子はこんな早く出来るようになるのかしら………私はここまでに3ヶ月かかったのに………」


 と半分諦め気味の顔をして言っていた。ごめんよ母さん。きっと神様が作った体だからだと思う。せやからワイは悪くない。


 練習の間に聞いたのだが母の魔法適正はこうだ。


 火:初級

 水;初級

 風:中級


 3属性使えて風魔法だけ中級まで適正があるのでそれなりの威力を出せる魔法もあるそうだ。少しずつ教えていってくれるそうだ。


 他にも”身体強化”という魔法もあるらしくそっちもそのうち教えてあげると言われたがワガママを言ってすぐ教えて貰った。人によるが身体能力が2、3倍~5、6倍になる魔法らしい。それを聞いた時あまりにも凄い魔法にテンションが上がりまくったがデメリットが非常に大きい魔法だという。魔力消費が激しく長い人でも3分くらい持てばいい方で、切れた時に反動でとんでもない疲労と魔力切れによる頭痛に襲われるのだそうだ。まさに諸刃の剣、最終手段といえる魔法らしい。


 個人的にはどうやって無詠唱ができるようになるのかも研究していきたい。


 魔法に関してはひと段落ついたと言っていいだろう。だが俺にはスキルがあることを忘れてはいけない。どうやって使うのかさっぱりわからなかったが、今は魔力を制御できるようになったのだ。選択肢が増えたから魔力を駆使してスキルを使えないか試すことにした。”アイテムボックス”と”簡易鑑定”には危険はないので部屋で考える。


「とは言ったものの、どうすればいいのやら………多分魔力を使って使う物だと思うんだよなぁ」


 魔力を手に少し出しつつ「アイテムボックス」と口にするも何も起きない。出す魔力を多くしてみて「アイテムボックス」と口にしても何も起きない。何度かやっているうちに魔力が少なくなってきた。魔力が少なくなるとまともに立ってもいられなくなる。


「仕方ない。今日はもう寝よう」


 寝れば魔力は回復するため。寝ることにした。そのまま待ってても少しずつ回復していくが時間がかかる。寝るほうが効率的だ。


 いつもの農作業の手伝いと魔力制御を昼間にして、寝る前のスキル練習を行う日々が続いたが一向に”アイテムボックス”が使えるようになる気配がない。


「あ~~~迷走してるなぁ」


 魔力を使ってということに拘りすぎているのかもしれない。


「こういう時は初心に戻ってみるか。魔力を使わずにな」


 そう思い頭の中に異空間に手を突っ込むようなイメージをして手を伸ばす。


「は? ………うそん」


 手がよくわからない空間に入っていったのである。これが”アイテムボックス”なのだろうか? その空間から一度手を引き、もう一度試してみる。


「………よくわからない空間に手が入っていってる。境目?はなにかボヤけててわからないけどこれがアイテムボックスってことは何か入れられるんだよな?」


 近くにあったコップを持ったまま同じことをして手をアイテムボックスに入れてコップを手放してを引き抜く。するとコップを消えてしまった。


「………マジか」


 実際に体験すると喜びよりも戸惑いのほうが大きい。正直混乱しているのだ。どうすればいいかわからず少しボーッとしていたのだが


「ヤバイ………コップ取り出さないと」


 ふとそう思いまた手をアイテムボックス突っ込む。コップのことを思い浮かべていたからかコップを掴むことができた。


「ああ………よかった」


 無事にコップを取り出すことができて一安心である。これで母に叱られなくてすむ。

 だがこれでアイテムボックスが使えるということがわかった。なぜ使えるようになったのかはわからないが………………そこに一気に喜びの感情が溢れてくる。


「~~~~~~~~~~っ!!」


 言葉にならない。だが体には出ていたようで飛び跳ねていた。


「コラ! アキト! ドタドタうるさいわよ! 静かにしなさい!」

「はい! ごめんなさい!」


 結局母には叱られてしまった。


 母には”アイテムボックス”のことは言わないことにした。言うとまた母が頭を抱えるだろうしあまり負担はかけたくないと思ったからだ。父は言ってもまた笑い飛ばすだろう。


 ”アイテムボックス”を使えるになったので次は簡易鑑定である。

 ”アイテムボックス”が使えるようになった今、これは結構簡単にいくのではないかと思っている。


 知っとるで。魔力を左目に込めて注視すればええんやろ?


 エセ関西弁が出るほど余裕綽々である。俺”簡易鑑定”の使い方がわかったらグッスリ寝るんだ。

 さあ! いざ”簡易鑑定”だ! そう思いベッドの横にある小さい机を見る。


『木の机』


 おそらく机の名称だろうと思われる文字が机の上に浮かび上がっているのが見える。


 ………拍子抜けである。せっかくフラグまで立てたのに。あっさりとできてしまった。

 せっかくなので部屋にあるものすべてに”簡易鑑定”をかけてみるとすべて名称が表示された。

 最後に自分にもかけられるのかと思い自分の手にかけてみる。


 アキト

 成長性:S


 ………は? 成長性って………何ぞ? 何の成長性だ? しかもSって高いの? 低いの? 高いイメージはあるけどどうなんだろう?

 そういえば神様が「適当によくしておいてあげる」ってって言ってたっけ?

 ………あの神様達のことだから適当に決めただけなんじゃなかろうか? 「これ付けとけば長生きするんじゃないかな? 知らんけど」みたいなノリじゃないかこれ?

 不思議ちゃん系な神様やったしなぁ………考えてもわからんから寝よう。


 翌日、朝起きて両親も”簡易鑑定”してみると


 アルフ

 成長性:D


 ララベル

 成長性:C


 どうやら母のほうが優秀のようだ。いや、これだけ判断するのは良くない。それにあくまで成長性なのだから今どうこうということではない。

 ………あれ? これ表示される意味ある?この情報何に使えばいいんだろう………何の成長性かわからんしなぁ。前世ではすごく役に立ちそうだけども………企業の社長さんとか採用面で大活躍しそうではある。


 う~ん………でもこういうステータス的なのはないって言ってたと思うんだけどなぁ。

 本当に適当につけただけ説が濃厚になってきたな。なんていうかポンコツ説も考えられるな。言い忘れてたし………。

 聞こうにも30年くらいたったら会いに来るって言ってたけどまだまだ先だしなぁ。


 そんなこと考えつつ朝食を食べ終わり今日も父の農作業の手伝いだ。それが終わったら村長の家だ。今日は母が新しい魔法を教えてくれる日だ。


 母と一緒に村長宅につき訓練場に行こうとしたのだが、摘み取られた草がたくさんまとめて置いてあった。試しに”簡易鑑定”をかけてみる。


 『トリプト草』 ※


 ………なんか名前の横に記号ついてる。なんぞ?


「村長。この草なーに?」

「ん? ああそれは触ってはいかんぞ。害虫を駆除するために使う毒草じゃ。それをすり潰して水に溶かして使うのじゃ。弱い毒じゃがわしらにも少し影響あるからの」


 この記号毒かよ!

 いや………これはとても助かる! 神様グッジョブ! さすがですわ!

 俺は神速で手のひらを返した。

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