第6話 魔法練習
王都で魔法適正を調べ無事に帰ってきた。道中は村長と母に魔法のことを教えてもらった。といっても実践はせずに座学だけである。魔法を使うにはまずは魔力を感じることから始めないといけないらしい。
なので今日は母から魔法の実践講座である。
「じゃあアキト。今からあなたの体に魔力を流すからそれを感じてちょうだい」
「………どうやって流すの?」
「すぐわかるわ」
母はそう言い俺の両手を取る。
「いくわよ」
「? ………っ!」
「わかった?」
「うん。なんか暖かいのが体の中動いてる」
「それが魔力よ。じゃあ次はその魔力を意識して動かそうとしてみてちょうだい。体の中を巡らせる感じよ」
「わかった」
体の中にある暖かい魔力を動かすようにイメージする。左手から左腕、左肩を巡り頭に行き右肩、右腕、右手、右腕、右肩、腹、右足、と順に体の中を移動していくイメージ。目をつぶり集中する。5分ほど続け、体の魔力を好きに動かせるようになった気がする。
「ん。これでいいのかな?」
母は俺の右手を取り、
「右手に魔力を持ってきてみて」
「はい」
「………こんなに早く感覚を掴むなんて………属性が多い子って魔力の感覚も鋭いのかしら」
母が頬を膨らまして拗ねている。可愛い。美人はやはり絵になる。
「じゃあ次は母さんに魔力を流してみて。さっきみたいに手を取って、魔力を私の中に注ぎ込むような感じよ」
なんかエロい表現だなと思いつつ母の手を取る。ちょっとだけ流すイメージをする。
「できるかなぁ………ん~~~」
「………っ!」
いきなり母が手を離した。
「え?」
「あ…ご…ごめんなさいアキト。別に嫌だったわけじゃないのよ。ただアキトから流れてくる魔力がすごく多かったから驚いちゃってね」
「今ので多いの?ちょっとのつもりだったんだけど」
「ええ、多かったわ。きっとアキトは魔力の総量が多いのね。これでアキトが魔法を使える段階にはなったはずよ。こんなに早くできるようなるなんて。適正の多い子はズルいわね」
また母が拗ねて頬を膨らませている。可愛い。
「じゃあ………試しに行く?」
「行く!」
「じゃあ村長の家に行きましょうか」
ついに魔法を使うことができる。俺は勢いよく家を出ようとしたが母に捕まった。
「やっぱりお昼ご飯を食べてからにしましょう」
「えー!」
「魔法は逃げないわ」
焦らしてくるとは。だが母に教えてもらう以上逆らえないのだ。大人しく母が昼食を作ってくれるのを待つ。
食事を終え、片付けも済み、いざ村長宅へ!
「こんにちは村長。裏の訓練場使っていいかしら?」
「ん? 何じゃ訓練場じゃと? ………まさかもうアキトに魔法を使わせる気か?」
「ええ。適正の多い子は魔力の感覚も鋭いみたいでして………」
「何となく予想はしとったがのぅ。訓練場は好きに使うがいい」
前からやたら広い庭のような場所があるなと思っていたが訓練場だったらしい。大きい岩もあるし池のように水が溜まっている場所もあるから勘違いしていた。ということはあの水はただの水溜りか。
「アキト。母さんが先にお手本を見せるから見ててね」
「わかった」
すると母は手を前に出し
「我が手に集え炎の力、我が炎にて敵を焼き尽くせ!出でよ!ファイヤーボール!」
詠唱を唱え、前に出した手からバレーボールくらいの大きさの火の玉が出て奥の岩へと飛んで行った。岩にあたり「ボォォォオン!」と火の玉が弾けた。岩がかなり焦げていた。
実際に魔法を目の前で見ることができ、感動したのと同時に何とも言い難い恥ずかしさも一緒に感じた。アキトにとって詠唱は厨二病要素だった。ただでさえオッドアイで厨二病要素が入っているのにさらに追加することになるのだ。
「こんな感じよってどうしたのアキト?」
「え? ………うん。魔法は凄いなって………」
感動と恥ずかしさが混ざった微妙な表情をしていたのだろう。母に突っ込まれてしまった。
「母さん。詠唱って必要なの?」
「必要よ。魔法はそうやって使うんだもの」
ホンマかいな?
「どうしても必要?」
「ほんのごく一部の人たちは詠唱なしでできるって言われてるわ。無詠唱って言うんだけど超高等技術と言われているわ。アキトはもしかしたら将来できるようになるかもしれないけど、いきなりなんて無理よ。それに私は無詠唱なんてできないから教えられないわ」
マジかー………あの恥ずかしいの言わないといけないのか。さらに覚えないといけないってことか………辛たん………
「詠唱は”我が手に集え炎の力、我が炎にて敵を焼き尽くせ! 出でよ! ファイヤーボール”よ。やってみなさい。詠唱しながら魔力を手から出す感じよ。魔力は少しだけよ? 少しだけ出すのよ! いっぱい出しちゃダメよ!」
「わかった」
母に言われた通りに恥ずかしさをこらえ詠唱する。
「我が手に集え炎の力、我が炎にて敵を焼き尽くせ!出でよ! ファイヤーボール!」
「え?」
すると直径1メートルほどだろうか?母が出したファイヤーボールよりもかなり大きいファイヤーボールが岩に勢いよく飛んで行き岩に当たり
ズドォォォオオオオオオオン!
と大きい音を立てて爆発した。岩が大きく抉れている。
「………ええ~あんなに威力出るの?」
後ろを振り返ると母が顔を上に向けて両手で顔を覆っていた。
「この子はもぉ~~~! 少しだけって言ったじゃないのぉ…」
その後村長が何事かと走ってきて魔法の実践は終わってしまった。
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