第5話 冒険者ギルドにて
冒険者ギルドは簡単に言えば冒険者を管理し、持ち込まれる依頼を一括管理する組織である。他にも情報を管理し緊急事態と判断したときは冒険者達を集め、国と一緒に問題に対処したりとやっていることは多岐にわたる。また、冒険者には15歳からなれるので俺がなるのはまだまだ先である。
そこへ俺たち親子は俺の魔法適正を調べるために来た。どうやって調べるのか非常に楽しみだ。
「アキト。ここが冒険者ギルドだぞ」
「おおーデカイ!」
王都の冒険者ギルドだからだろうか。かなりデカイ建物である。3階建てだと思うが高さもかなりある。
中に入ると人はそれほど多くはなかった。昼間のこの時間帯は空いているのだろうか。それでも人はそれなりにいる。酒場も併設されているのか昼間から酒を飲んでいるような者達もいれば、受付のようなところで話している人もいる。情報交換でもしているのだろうか何人かで話している人たちもいる。掲示板のようなところには紙がたくさん貼ってあった。
………絡まれたりしないだろうか? そういうのは定番なきがするけど…さすがに親子で来ている者に絡んでくる者はいないだろう。そんなことを考えていると受付まで来た。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか?」
「この子の魔法適正を調べに来ました」
父が受付の耳の尖った薄い緑色の髪を後ろでまとめたお姉さんと話し硬貨のような物を一緒に置いていた。ハーフなのだろうか? 耳が母に比べ短い。受付のお姉さんが美人というのはやはり定番なのか案の定美人である。胸もデカイ。
「そちらのお子さんですね。フフ。これはまた将来が楽しみなお子さんですね」
俺のオッドアイと黒髪を完全にスルーして捕食者の目を受付のお姉さんが向けてくる。どうやら俺は整った顔立ちをしているらしい。ちょっと引いていると父が話し出した。
「この子目の色が左右で違うのですが、左右で目の色が違う方はよく見ますか?」
「少なからずいらっしゃいますよ。なので気になさる必要はないかと思います。この国の王女殿下も左右で目の色が違いますからね。ですが…黒髪のエルフは初めて見ます。人族の方でたまに見かけはしますが…」
「そうですか…」
OH………やはりこの世界では黒髪のエルフはかなり珍しいようだ。父も母もどこか心配そうな表情をしている。宿からの道中も結構見られてたもんなぁ………2人とも俺をあまり目立たせたくないのだろう。
「では魔力適正を調べる準備をいたしますのでしばらくお待ちください」
そういって受付のお姉さんが席を立った。髪は気にしても仕方ない。切り替えよう! どうやって適正を見るのか気になるしな!
しばらくするとお姉さんが小さな台の上に砲丸玉くらいの大きさの青い玉が乗った物を持ってきた。
「ではこちらの玉に手を当ててください。しばらくすると下の紙に適正が映し出されます」
スゲエ! さすがファンタジーの世界だ! どういった理屈で調べられるのかさっぱりわからん! きっとお姉さんも両親もわかってないんだろうな! 多分その玉か台に術式かなんかあるんだろうなぁ。
机と台の高さで手が届かないので母に抱えられ玉に触れる。
「………何も起きないよ?」
「もうしばらくお待ちください。来ましたね」
待っていると。玉の中心がぼんやりと光出した。
「お…お…お!」
驚いて声を上げるが手はいつの間にか父に固定されていて離せなかった。しばらくすると光が収まった。
「これで完了です」
「今ので?」
「はい」
驚いていたら終わってしまった。さて結果はどうなんだろうか。知ってるけど。
「っ! ………凄いですね………お子さん」
「そんなに凄いの?」
そう言い母がお姉さんが持っている紙を覗き込む。
「え!? 6属性!?」
「あ! おい!」
母が大きめの声で結果を言ってしまった。それを父が咎めるように声をかけた。すると母は口に手を当て「しまった!」とでも言わんばかりの顔をしていた。
え? 何? 6属性って珍しいん? 初級3つに上級3つやで?
「…………驚かれるのも無理はないかと。私も見たのは片手で数えられるほどです。それに上級の適正が3属性もありますから………」
お姉さんが小声で話してくる。
しまったああああああああああ一点特化型にすればよかったあああああああああああ! あの時地味に欲張った結果がこれだよ! だがどうしようもない。父よ! 母よ! なんとかこの状況を乗り越えてくれ! 俺はどこぞのバー○ーのように機転が利いたりせんのだ!
「ありがとうございました。では私たちはこれで」
父が適正が書かれた紙を持って回れ右した。
おお! 父よ! ナイス判断だと思う! すぐ帰ろう! 今すぐ帰ろう!
「もし、よろしいでしょうか?」
だが、そうは問屋がおろさない。エネミー登場である!
そこには父もよりも背が高く、ガタイもいい一人の男がいた。耳は尖っているが父の半分くらいの長さだ。どこか高級感のある服装だ。貴族だろうか?
「何かご用で?」
「私たちに何か用ですか?」
両親が威嚇するように話しかけてきた男に答える。
「6属性という言葉が聞こえたものでしてね。そちらのあなた方のお子さんがそうでしょうか?」
両親の威嚇など意にも介さず男は話してきた。
「違います」
「おや、おかしいですね? 確かに聞こえましたよ。多くの証人がここにはいますので聞いてみましょうか?」
「………息子にいったい何の用でしょう?」
………今のやり取りだけでもこいつは怪しさしかない。何を考えているのかわからないがろくなことじゃないだろう。ていうか誰だお前?
「息子さんを私に預けませんか? 素晴らしい魔法使いに育て上げてみせますよ?」
「………お断りします」
「何故です? 私はAランクの冒険者です。信じられませんか?」
「信じられるわけがないでしょう!」
母が激昂している。貴族ではないみたいだが俺をいいように利用しようという考えなのはわかる。ていうかお前誰だよ。
気に入らない。そういう思いが自分の中に出てき始め、自分で行かないと言おうとした時、父が前に出た。
「お断りします。Aランクの冒険者様であろうと愛する息子を渡すようなことはしません。それに初対面のあなたを信じろというほうが無理があります」
「………彼のためを思って言っているのですよ? 彼の将来を考えてください。私の元で魔法を学んだ方が彼のためになります」
「息子のため? あなた自身のためでしょう! 都合のいいように利用しようとしているようにしか聞こえませんな!」
「っ! ………そんなことはありませんよ。彼のためを思ってです」
「名乗りもしないあなたに息子を奪わせるわけにはいきません!」
お…おお! 格好いいぜ父さん。ていうかハッキリ言いすぎぃ! だがそれを功をなしているのか相手の男が若干焦っているように見える。ていうかマジで誰だお前!?
騒ぎを聞きつけたのか人が集まってきた。
「なんだなんだ? 喧嘩か?」
「なんか揉めてるのか?」
「あの男が子供を攫おうとしてるみたい」
「なんか6属性とか聞こえたけど」
「あら~男の子可愛い~」
「あの男そういう趣味なのか?」
「最低ねあの男」
旗色が悪いと思ったのか男は気まずそうに喋り出した。
「………申し訳ございません。才能のある子を見つけ頭に血が上っていたみたいです。さきほどのことは撤回いたします」
「そうですか………」
そう言い男は去っていき、騒ぎを聞きつけた人たちも元の場所に戻っていった。
「ふう………行こうか2人とも」
「うん!」
「ええ。行きましょう」
両親とともに冒険者ギルドを後にした。
「アルフ! さっきはすごく格好良かったわよ!」
「父さん格好良かったよ!」
「はは………ありがとう。正直手足がガクガク震えていたよ。今も手が少し震えている」
「それでも本当に格好良かったわ! 素敵だったわ!」
母は父をベタ褒めである。実際本当に格好良かったのだ。父として息子を守る姿などなかなか見れるものではない。父親としてのあるべき姿を見たような気がする。
父さん。本当に格好よかったよ。いつも”爆ぜろ”なんて心の中で言っててごめんよ。もうそんなことは思わないよ。
「アルフ………」
「ララ………」
2人の桃色空間が形成されていた。爆ぜろ。
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