[19]呪い 十八日目、そして -六年一組-

 朝。太陽が昇った普通の朝。


 目覚ましで、親の声で、あるいは自発的に目を覚ました児童たちは、朝ごはんを食べたり、身支度をしたりして、そして玄関から外に出る。

 雲ひとつない快晴の青空と、さんさんと輝く太陽の光に照らされて、彼ら彼女らは通学路を歩く。そして学校に着くと、下駄箱から上履きを取り出し、履き替え、階段を上り、上り、廊下を進む。

 教室に入る。

 教室には、クラスメイトがいる。挨拶を交わし、席に着いてランドセルを机に掛けて、教科書を机にしまって、本日の時間割を確認する。それが済んだら、僅かばかりの自由時間を、話したり、読んだり、寝たりして潰す。

 そんなことをしているとチャイムが鳴り、先生が来て、朝の会が始まって、挨拶と読書タイムとがあって、プリントを回したりして、先生のつまらない話を聞き終えたら、ちょっぴり退屈な授業が始まる。

 それが、小学生の日常。その筈だった。


「山根が亡くなった」


 担任の先生が、いつになく重い口調で告げる。


「自殺……だそうだ。それ以上のことは分からない。事実として、亡くなったということだけが確かだ。今日の授業は、行われない。……ああ、すまない、少しだけ席を外す」


 飾り気の一切ない平坦な口調で伝えると、担任は静かに教室を退出する。

 誰も口を開こうとしない。

 重い、重たい空気が、クラス中を流れる。


「なあ、さ」


 星野が、口を開く。


「これって本当に――“呪い”なんじゃねえのかな」


 お調子者の、笑えない冗談。

 けれど、そのジョークを否定する言葉は、ただのひとつも発せられない。


「私だ……」


 愛川が、ぽつりと口に出す。


「次は私だ! 私が殺されるんだ……あいつに、美月に手を出した奴から! 私が! 殺される……みんな死んじまうんだ!! あ……ああああぁぁぁあああ――っ!!!!」


 狂ったように叫び出す愛川を、しかしあるものは怯え、あるものは慄き、あるものは泣きながら、見ていることしかできない。

 愛川は、その日を境に学校へ来なくなった。

 他のクラスメイト達は、この話題を封印した。

 先生達でさえも、事が風化するのを待つと決めた。



* * *



 美月と六花は、六年一組の“呪い”となった。

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