第21話

「あんた細い割に筋肉は重くてしっかりしてるね。

 何か格闘技でもしていたのかい?」


サイズを測るときにお腹や腕、足の筋肉に触れたおばちゃんは俺の身体の感想を見て変な身体つきをしていると評した。


「いえここ数年は運動していませんし特にこれと言ったモノはしていませんが。」

「ふむ、なら後で精密検査とかも受けた方が良いかもしれないね。

 どうせ田舎のダンジョンにでも間違っては行っちまって偶々ダンジョンボスを倒しちまったってところだろぅ。」


俺の場合は都会のダンジョンだったが田舎だとダンジョンに誤って入ってしまうなんて事例あるらしい。


「ええ、酔っていたら穴に落ちて気が付いたらダンジョンボスを倒してました。」

「お国様も田舎の山々に間違ってできる入り口には関与しきれていないからね。」

「実は田舎では無くて都会のダンジョンなんですよ。

 ダンジョン庁の方が言うには鬼嫁の迷宮って言うところみたいなんですけどご存知でしょうか。」


するとおばちゃんはキツネに鼻を摘ままれたような表情をした。

そして頭を抱えていた。


「アンタのいたところは私も行ったが死人が出たダンジョンさ。

 ここ100年で死人が出ていなかったのに久々に死人が出たってことでダンジョン庁が新たな裁定を定めるほどになった大迷宮。

 死神乙女(ヴァルキリー)・挑戦士(ウルズ)が度々資源回収を目的に入っていたのは知っていたけどまさかアンタがその大迷宮を攻略しちまうとはね。

 こりゃあダンジョンエネルギー抽出師のブラック労働以上のニュースだよ。」

「あ、知ってるんですね。

 やっぱりダンジョンエネルギー抽出師の労働ってブラック労働だったんですね。」


こうやって知らぬ人に言われて初めて実感する。

自分の環境が異常であったと。

自分の中でも異常だと思っていたことは異常であっていたと確信が持てる確認作業をするとやっと心が休まってきた気がする。

もちろん涼奈さんたちからの逢瀬も癒しになっているけれども現実から逃げようとしているような気がして休むというよりも逃げているという感覚の方が多かった。

だからこうしてその他大多数の存在であるショップおばちゃんに言われてやっと実感できた。


「なに当たり前のこと言ってるんだ。

 悪い時には1年以上働かされてサービス残業扱いにするところがブラック労働じゃなくてなんて言うんだい。

 しかもあそこはストレスチェックとかも改ざんしていたんだからあそこにいた社員はほぼほぼ洗脳されているさ。

 それこそ何かしらのスキルでもかけられていたんじゃないのかい?

 ……まさかあんたそこに居たのかい?」


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スライム道

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