2.出会い

「へ~、ほな、同い年ですやん。はぁ・・・・ほんま良かった。なんやめっちゃキレ者でヤリ手の人がこちらのプロジェクトリーダーやて聞いとって、実は今日、めっちゃ緊張してたんですわ。俺、うまいこと一緒にやっていけるやろかって」


俺がリーダーとして任されたこのプロジェクトは、取引先と共同で立ち上げたプロジェクト。

取引先のプロジェクトリーダーは、会社社長の御曹司、恩田 稔という男だった。

プロジェクト進行中、基本的に俺はこのプロジェクトの選任となる。

よって、当面の間、仕事上のパートナーとなるのは、この恩田だ。

だが。


「でも、ええなぁ、こちらの会社。可愛い女の子、メッチャたくさんいますやん!一之瀬さん、ええ男やし、モテはるんちゃいます?」

「・・・・ご想像にお任せする」

「ほな、絶対モテてはるな。間違いないわ。こない仕事のできるええ男、周りの女の子が放っておく訳ないですやん!」


営業トークなのだろうか。

単に、個人的な親睦を深めようとしているだけなのだろうか。

恩田の口からは、次から次へと言葉が飛び出してくる。

打ち合わせの間中、貝のように閉じていた同じ口とは、とても思えない。


「あ~、ほんま良かった。一之瀬さんとなら、なんやうまいことやってける気ぃするわ。これからしばらくの間、よろしゅうお願いします、一之瀬さん」

「あ、ああ。こちらこそ」


顔合わせの場からやたらと愛想が良く、妙に軽い感じのこの男に、俺はあまりいい印象は抱けなかった。

外れクジかもしれない、と思ったほどだ。

しかし、光石さんの期待には、何としてでも応えなければ。

差し出された奴の手を握り返しながら、俺はこのプロジェクトを成功に導くための道筋を、必死に考えていた。



当初、プロジェクトは難航を極めた。

原因は、リーダー同志の意思疎通不足だろう。

何しろ俺は、恩田を全く信用していなかったから。

だが、最初こそ奴を甘く見ていた俺だったが、プロジェクトを進める内に、次第に奴の才覚を思い知らされることとなった。

一見愛想がいいだけの、口先だけの使えない男。

しかし、恩田はその愛想の良さで相手の懐にいつの間にか入り込み、優位に仕事を進めていく。

そのうえ、奴の抜け目の無さは、俺が知る中でも1、2を争うほど。

さすがは、未来の会社社長となる男。

恩田ほど、敵にまわした時にやっかいな奴はいないだろうと、俺はコッソリ舌を巻いた。

そう奴を認めたとたん。

面白いほどに、プロジェクトは順調に進み始めた。

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