eunice -ユニス-
ノアの居ないシェルターでユニスは独り歌う、春を探す歌を。
自重で遅くなる足を強く踏ん張って一歩ずつ道なき道を進みながら、毒の胞子を撒き散らし悪意を持って絡め取ろうとする棘だらけの原生林を掻き分けながら、見たこともないような恐ろしい光景にくじけないよう強く心を奮い立たせるノアに届くように歌っている。
明くる日、今日もユニスは独り歌う、春を願う歌を。
人間が生きる地球ではなくなった事実に「もうどうでもいい」と心がくじけてしまわないように、どんなに地獄だったとしてもまた再びシェルターに戻って来られるようにと、願いながら歌っている。
次の日も、そのまた次の日も、ユニスは歌う、春を待つ歌を。
愛という感情を知ったノアに、その先にある希望の灯火を消してしまわないようにと、待つことしかできない鳥かごの中から歌っている。
それからもユニスは歌い続ける、春を望む歌を。
ノアの名を忘れないように信じ続けながらユニスはずっと歌い続ける、春の歌を────。
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