1-4.Annunciazione
レオの横に並ぶと同時に、レオはマキシマに嫌味ったらしく笑み、そして同時にマキシマは舌打ちする。
レオにとっての彼は弄び甲斐のある後輩だが、彼にとってのレオは目の上の瘤だ。
《よぉマキシマ。レオへのリベンジの準備はできてるか?》
《リベンジも何も、僕はレオに負けてないよ》
《あ? テメェは先週俺とのレースで二位だっただろうが》
《レースではね。でもジジが言っていたように今月のフォロワーの伸びは君の三倍、今週だけを見れば五倍だ。速けりゃいいって思ってるだけなら脳が古いよ》
《はぁ!? テメェ言わせておけば!》
マキシマを睨みつけるレオ、仕返しを見舞って鼻を鳴らすマキシマ、レオを宥めるジジ。
アンプを運びながらせせら笑うバックの仮面バンド。
背丈は大柄なレオと小柄なジジのちょうど間くらいだろうか。
アジアの血を引くマキシマは黄色の肌で、センターパートの黒髪にアンティークな丸眼鏡を合わせている。
レーサーだが白シャツにチェックのベストとスラックス、白無垢のスニーカーと、ラフなレオに比べて格式高い。
新参の彼がここまで人気を博しているのは恵まれた才だ。
レオの出ていないレースにもほぼ全出場、全てのレースで好成績を収め、先週のレオとのレースでもあと一歩のところまで追い詰めた。
レオの王座陥落という歴史的瞬間を目の当たりにすべく、多くのフォロワーが付きはじめている。
いまだレオが自分を甘く見ている自覚はあるが、マキシマから見たレオは既に射程範囲内だ。
《ここで勝てばレオへの勝利だけじゃなく、最強の車も手に入る。流れをものにしろよ、マキシマ》
《ああ。レオから僕に乗り換えてくれたファンのためにも頑張るよ》
《うるせえ!!!! クラッシュしちまえ!!!!》
《まあまあレオ、白黒はレースで付けな。……そして3人目のレーサーだ、待たせてすまなかったな。インテリジェンスとマッスルの融合、デレク・ナトリ!!!!》
居心地が悪そうにステージ袖から現れる男。
気弱く縮こまっているが、レオより大柄な彼はそれでも圧倒的な存在感がある。
ストリートレースランキング、レオとマキシマに続いて第3位、デレク・ナトリ。
メディオストリートで唯一の黒人だ。
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