第3話 仲間

「ユキ、朝の散歩に出るわよ。ヤクーをお願い」

「はーい」

「尚子、勝春ってもう来てる?来てたら港に行くからって、連れて来て」

「御意に」


 今回もついて来てくれている7人の間では、そんなに人目が無ければ、言葉使いはナアナアになってる。良い悪いは別としてね、今後、命のやり取りをする場面があるかも知れない。その時に一瞬の躊躇いが運命を分ける場合があるからね。上下関係なしです。


「おはよう御座います。大変お待たせ致しました」

「おはよう、ちょっと港を案内して貰えぬか?漁師の頭とか船大工を紹介してくれ」

「承知致しました」


〜・〜


「では呼んでまいりますので、暫くお待ち下さい」


 と、勝春は行ってしまった。


「キヨ、誰か手の者を目ぼしい商人に使いを出して、申の刻に集まるようにと伝えて」


 で、良いか。さてと、時間が余ったから、朝餉替わりの浜焼きよ!


「海辺と言えば浜焼きよね。フブキとセトで焚き木を集めて来て。カエデとユリは魚介類を分けて貰って来て。ユキは調理器具ね」

「ねえ、キヨ。こう言う場合、魚って何で焼くの?」

「串刺して、塩焼きではないかと」

「じゃあ、3人で石を集めよう!おー!」


 フブキとセトが焚き木を集めて来た。早速、自作したファイアピストンで、火を着ける。ふーふーふーふー。空気を送って火力を上げる。カエデとユリは魚を買って戻って来た。おお、イカも鮑も居るよ。大き目の石を焼くか。


「皆んな、ありがとう。さあ、美味しく食べよう」


 もう、全部塩焼き。


「ただいま戻りました。美味しそうですね」

「海鮮なんて直ぐに火が通っちゃうから、どんどん食べて」

「グジだ〜!グジの干物を焼いて下さい、お願いします。お願いします」

「聖良様、そんな謙らなくても」

「だって……食べたいんだもん」

「お〜、来た来た。波平!勝男!こっちこっち」


 首が引きちぎれるくらいの勢いで振り向いてしまった。普通に日に焼けたガタイの良い親子だった。バット持って無いのかよ!その後も、海平、ノリ助、マスオ、タラオなどなど。


「食べながらで良い、話を聞いてくれ。……やっぱり、食後にしよう」


 でも、漁師に色々と現状を聞いたり、船大工の伊佐坂さんにも舟の納期だったりね。さて、そろそろ食事も終わりかな。


「片付けはうちの者に任せて、話を聞いてください。この度、ここ若狭を治める事になり、皇室より下向して来ました、聖良です。宜しく頼みます」

「宜しくお願いします」

「この度、我が皇室では水軍を設立する事になりました。ついては、この若狭国及び近辺で水夫を募集します。募集は50人前後。合格者は、私、聖良の直属の家臣になります。国中に知らせて下さい。試験は明後日になります。皆さんには船の操縦の先生になって貰います。これは命令です」


 そして、船大工に向き直り、


「船大工さんには、船を発注します。取り敢えず見た事の無い様な大きい船を一艘お願いします。お金を惜しみません。手が足りなければ言って下さい、用意致します。まずは、見積もりをお願いします」


「皆さん、今日はお集まり有り難うございました。ちょっと中央に集まって下さ〜い。では首を垂れて下さい」


 いつもの、ひふみ祝詞を唱えて、『皆に神様のご加護が有ります様に。海の上も安全で事故に遭いませんように』右手で頭を払って、


「はい、良いよ〜。今も祈ったけど、海の上でも安全第一で仕事してね」


 ん〜毎回の事だけど、全員で平伏するの止めてよ。少し街中の店先を冷やかしながら、ヤクーで歩き回った所為か、いろいろ貰っちゃった。


〜・〜


 申の刻が近くなると、パラパラと商人風の人々が集まり出す。木下、組屋、古関、田中、よしっと。


「聖良です、面を上げて下さい」

「はっ」

「この度、朝廷が親王領としてこの若狭国を治める事になりました。堺の時は確か、祝いに1万貫、商家一軒につき月ごとに10貫を納めてるけど、小浜はどうする?」

「さて、如何致しましょう」

「あ、終了です。残念でした。貴方達4名がっかりね。他人を試そうとする癖に、自分達が試されるって想像しないのかしら?今月から倉庫代として毎月20貫納めなさい。矢銭が払える店が出て来たら、そちらの店に倉庫使用の優先権が与えられるからね。では、下がって良いわよ」


 組屋さんには期待してたんだけど、期待外れだったわ。


〜・〜


「勝春!先ずは人を10人貸して。20歳以下の文官で良いわよ。キヨ、黒板に成りそうな壁を探して来て」


「では、皆さま、此方になります」

「キヨ、でかした。使いやすそうな壁だ」

「皆さ〜ん、これから勉強をします。椅子と出来たら机を持って再集合ね。パンッ、解散」


「はい、集合。これから、ここで計算の勉強をします」


 まず、アラビア数字を教える。これは覚えるしか無いからね。四半刻の時間を与えて、ただただ覚えて貰った。次は四則演算と九九を教える。あ〜、これも覚えるだけか。でも、アラビア数字と九九は絶対に役に立つから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る