第23話
狐の体が粒子へと変わっていき、宙に溶けていった。
「え?何?」
「あれが今回の騒動の原因。あまり力を持っていない人ならざるものだね。多分僕よりも若いんじゃないかな?」
蓮はおそらく100は生きていないだろうと教えてくれる。
どうやら人ならざるものは精神力が強さに比例するらしく、生きた年数が多ければ多いほど強いらしい。
「くくく。なるほどね。ところであれはなんて言うんだい?」
「さぁ?僕はそこら辺詳しくないから」
「……ッ!そうか。残念だ。もっとちゃんと見たかった。あれじゃ狐だということくらいしかわからない」
「いや、正直な話ちゃんと見ていたとしても理解できないと思うよ。日本には八百万の神がいるのだから。人間が知っているのは空想の存在のやつなどもあるから、実際に日本にいる人ならざるものの10000分の1も知らないんじゃないかな」
「え?本当に神が八百万もいるのかしら?」
「正確にはもっと多い。なんか新しく増えてもいるし、今は一千万はいるんじゃないかな?」
「えぇ!そんなにいるんだ!すごいな!」
「……くくく。やはりいい」
……八百万の神。
実はさっきの悪寒の正体は神様だったりするのかしら?
そんなに神様がいるのなら、悪寒を走らせるような神様も居るような気がしてきたわ。
いや、というかそもそも蓮は人ならざるものとひとくくりにしているけど、実際はどうなのだろう?
神様とさっきの狐や花子さんなんかを比べると全然違うのかしら?
どうなのかしら?
聞いてみようとしたとき、
パン!
という音がその場に響き渡る。
「「「「え?」」」」
音がしたほうを振り向くと部長が手と手を合わせていた。
え?何事?
「あら?どうしたの?そんなにみんな驚いたような表情で私のことを見て」
呆然とする私達を見て、部長が首をかしげる。
いや、首を傾げたいのはこっちよ。
「え?いや、部長。何を?」
私達を代表して弘樹先輩が部長に話しかける。
「え?私の目の前を虫が飛んでいたから潰しただけよ?」
あぁ、そういうことなのね。
微動だにしなかったのに急に手を叩いたから無い事かと思ったわ。
人ならざるものにでも取り憑かれたのかと。
「なんでここに虫なんか飛んでいるのでしょうのか」
「いやここは山なんだから虫くらいいるでしょ?」
「あ、確かにそうね」
えぇー。
さっきから虫が飛んでいるじゃない。
何を今更。
「まぁいい。で」
弘樹先輩は部長をに睨みつける。
「ここはどこだ」
「へ?」
「通ってきた道と違う。もう一度聞く。ここはどこだ?」
あ。弘樹先輩もわかるのね。
ほんと、なんで分かるのだろう?
ずっと同じ景色が広がっているというのに。
「えっと。……その、迷った」
「………」
重苦しい沈黙が続く。
「はぁー」
そしてため息を一つ。
「どうすんの?」
「………」
部長は何も答えられない。
「えっと。こっちか」
弘樹先輩はあたりをぐるりと見渡し、ある方向に向かって歩き始める。
「「え?」」
弘樹先輩の後をひな先輩がいち早く追いかけ、蓮もその後に続く。
「「え?」」
そして残されるのは何もついていけてない私と部長。
顔を見合わせ、うなずく。
私達は急いで弘樹先輩を追いかけた。
追いていかれるわけにはいかない。
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