第22話

「あー。そろそろかな」

「何が?」

「ひな先輩が目覚めるまで」

「え?そんことがわかるのかしら?」

「うん。まぁ、とりあえず戻ろうか」

「えぇ、そうね」

 私達は部長たちが居る方に戻った。

 あいも変わらず部長はぼーっとしていて、弘樹先輩はひな先輩に夢中である。

 なので、私達が少し移動していたことに気づいてはいないと思う。

「ん、ひろ、くん?」

「あ、やっと起きたのか」

 閉じられていたひな先輩のまぶたが開かれる。

「ひろくん!ひろくん!ひろくん!ひろくん!ひろくん!ひろくん!ひろくん!ひろくん!ひろくん!ひろくん!」

 ひな先輩は弘樹先輩に抱きつく。

 そして、ひろき先輩の名前を連呼し始めた。

「落ち着け」

 弘樹先輩は容赦なくひな先輩の頭に手刀を撃ち込む。

「痛い!」

「いちいちうるさい。耳に響く」

「えー!いいじゃん!私の声がひろくんの心に響き、振るわせるんでしょ?最高じゃない!」

「そんなこと言ってないよ?飛躍させないで?」

「口ではそんなこと言って、本心は違うんでしょ?」

 ひな先輩が弘樹先輩をからかうように肘で突く。

「ちっ」

 それに対し、弘樹先輩は舌打ちを一つ。

 その表情は嫌悪に染まっている。

 弘樹先輩の目がまるでゴミを見るかのような目となっている。

「いや〜ん」

 そんな視線を向けられたひな先輩はくねくねと腰をふる。

「そんなカッコいい瞳で見ないで!」

 えぇー。

 弘樹先輩の瞳はかっこいいと言えるのかしら?

 結構目つき悪いのだけれど。

 まぁ、そういう人もいるのだろう。

「うわぁ」

 弘樹先輩が本気で引いたよう声を出す。

「そろそろ限界だろう」

「え?何が?というかさっきからどこを見て?」

 なぜかはわからないが、ずっとひな先輩の上空を眺めている。

 一体何をしているのだろう。

「説明するのが面倒。見てて」

 蓮が私の質問にそっけなく返す。

「わかったわ」

 私は素直にうなずく。

 しばらくの間、弘樹先輩とひな先輩のやり取りを眺めている。

 すると、


 ぽん!

 

 という軽快な音がなる。

 そして、ひな先輩の頭上から謎の狐のようなものが飛び出してくる。

 ひな先輩の頭上から出てきた狐はくるりと私に背を向け、一目散に逃げ出した。

 だが、

「逃さない」

 逃げられない。

 蓮がいつの間にか手に持っていた刀で狐を一刀両断してみせた。

 え?はっや。

 一瞬で距離詰め……。

 蓮って本当に何ができるのか何ができないのか、底がわからなくて若干不気味ね。

 まぁ、蓮がなんであれ、私は蓮を受け入れるけどね。

 私には蓮しかいないのだから。

「終わり」

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