第17話


 しばらく奥へ奥へと進んでいっていると、だんだん鬱蒼と木が生え並ぶ人の手が全く入らない原生林に近いような場所になっていく。

 湿気もすごくて、あまりいい気分はしない。

「うへー!ジメジメしてる!」

「くくく」

「気持ち悪い笑顔を浮かべているんじゃないの!キモいよ!」

 興味深そうに辺りを見渡し、目を輝かせていた弘樹先輩をひな先輩が足蹴りする。

 若干八つ当たり気味だと思う。

「八つ当たりはや」

 弘樹先輩がひな先輩に足蹴りされたことに対する不満を告げようとした所、その途中で言葉を止める。

 いや言葉どころが、動きすらも止めていた。

 それは弘樹先輩だけでなく、私や部長、ひな先輩も同様だった。

 パッと見、何も変わらない。

 しかし、何かが変わったことだけはわかる。

 背筋に悪寒が走り、足がすくむ。

 何かここにいてはいけない。

 そんな錯覚を覚える。

「ん?どうした?」

 そんな中、一人平然としていた蓮が首をかしげる。

「く、くくく。と、とりあえずはここから離れようか」

 引きつった笑みを浮かべた弘樹先輩がここから離れるように促す。

 みんなは弘樹先輩の言葉に従い、その場を離れた。

「くくく、面白いものが見れた」

 弘樹先輩は心底楽しそうに笑う。

「ねぇ!あれは何なの!」

 一人詳しそうな弘樹先輩にあの現象が何なのかひな先輩が聞くが、弘樹先輩は思案の海に沈んでしまっているため、聞いていない。

「……?」

 蓮も蓮であれが何なのか考えているのか、さっきから黙り込んでいる。

「……聖域」

 蓮がぼそっと何か言った気がしたが、声が小さくて聞こえなかった。

「もう!何がなんだがわからないわよ!」

 ひな先輩が不満の声を上げる。

「ごめんなさいね。私海外のほうのオカルトが好きで日本のオカルトは知らないのよ」

「別に部長が気にすることではないよ!何も教えてくれないひろくんが悪いんだよ!」

 ひな先輩が弘樹先輩に対する怒りの意をを示す。

 無言の二人を引き連れてみんなでノロノロと白神山地を進んでいく。

 そして、

「あれ?ここはどこかしら?」

 迷った。

 え?

 やばくないかしら?

 確かに部長とひな先輩はさっきのやばかったねーとか言いながら歩いていて、何も考えていないように見えたし、私達三人は一言も喋らずただ二人の後をついていっていた。

 ……何も考えていないように見えたけどしっかり元の道を通って帰っていると思っていたのだけど、本当に何も考えていなかったとわね。

 本当にどうすればいいのかしら。

「ちょ、蓮。蓮」

 なんとかしてくれそうな蓮のことを呼ぶも、ガン無視される。

 ……。

「ど、ど、ど、どうしよ!」

「お、お、お、落ち着くのよ!」

「蓮!!」

 黙り込んでいる男衆を除く女三人が全力で慌てふためき、うろたえる。

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