第15話

 

「そろそろかしら」

 弘樹先輩が胃の中のモノすべてを吐き出して顔を真っ青にし、げっそりとなっていたころ、部長がみんなに告げる。

「どこに向かっているの?」

 そういえば目的地を聞いていなかったことを思い出した。

 東北だとは聞いていたけど、詳しい場所までは。

「白神山地よ」

「白神山地!私、知っているよ!」

 げっそりした弘樹先輩に膝を貸しているひな先輩が手を挙げる。

 うん。白神山地くらい高校生なら誰でも知っていると思うわ。

「なんであの森に?」

「あぁ。……あそこ、なら。なにかあってもいい気が、な」

 蓮の疑問にひな先輩に膝枕してもらっている弘樹先輩が弱々しい声で答えた。

 ……大丈夫なのだろうか?

 病人も真っ青なくらいにぐったりとしているけど。

「あぁ。確かに霊力があそこらへん多かった気がする。最近全然行っていなかったからうろ覚えだけど」

「あら?故郷の方なのに全然行かないのかしら?」

「あんまり行きたいものではないからね」

「あら?そうなの?」

「……僕は昭和恐慌期のときも生きているからね。そんときに僕の可愛がってた甥の娘が……」

「あっ!娘の身売り。ご、ごめんさいね」

 部長が申し訳なさそうに謝る。

 そうよね。……蓮は戦争も経験しているんだものね。そういう嫌な思い出の1つや2つ持っていてもおかしくはないわよね。

「……東北になんて来ないほうがよかったかしら?」

「いや。いつまでも逃げているわけにはいかないからね。いい機会だと思うことにするよ」

「そう。ならよかったわ。あ、着いたわよ」

 目的地であった白神山地に到着し、車を止める。

「私達が行きたいのは誰も来ることがないような奥地よ。そんな場所でもないと面白いものが見つけられない気がするしね」

 ……世界遺産でしょ?白神山地って。勝手に奥地に行ってしまっていいものなのかしら?

「そうだね!……ひろくん?行ける?」

「も、問題ない」

 弘樹先輩は体を震わせながらなんとか立ち上がる。

 足は子鹿のようにプルプル震えている。

「さぁ、行こうか」

「うーん。死んでリセットできないのは不便だなぁ」

 ……蓮。

 人殺しの私が言うのも何だけどその考え方やばくないかしら?

 

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