第12話
「最初の数着しか買わないのならあんなに長い間着替える必要あった?」
もー、わかってないわね。
結局私達は最初に試着した中にあった数着を買うことにした。
それと、
「結局女の子用の一着買ったし。誰が着るんだよ」
女の子用の服を一着。
店員さんイチオシの服だ。
店員さんの蓮が男だと知ったときの驚愕の表情を私は忘れないと思うわ。
「そりゃもちろん蓮よ?」
「嫌だよ」
「えー着ないなんてもったいないわよ?かわいいのに」
「男にかわいいは禁句だよ?」
「あ、ごめんなさいね」
蓮に睨まれ、私は謝る。
嫌われてないわよね?
「うむ!ところで今どこに向かっているの?」
「えっと。ご飯食べれるところ。ここのショッピングモールで私が一番好きなところに行こうと思っているんだけど」
「へぇー、いいじゃん!久しぶりのご飯だからさっきケバブ食べたけど全然食べれるよ!」
「じゃあ期待しようかしら」
私が向かったのは銀の鍋というしゃぶしゃぶ屋さん。
食べ放題もあるところだ。
「おぉ!」
蓮が目を輝かせながら箸をすすめる。
「戦時中の鍋とは大違いだ」
「そりゃそうでしょ」
戦時中の鍋と比べないでほしい。
「あー、美味しかった」
蓮は時間いっぱい大量のお肉を食べた。
当然野菜も。
最後に新鮮な野菜を食べたのがいつなのかももう覚えていないらしいく、新鮮な野菜を食べて感動していた。
そして、私は知っている。
サクッと自殺して胃の中をリセットしていたことを。
どれだけ食べたいのよ。
「うーん。美味しい!」
そして今も私が買ってあげたサーティツーのアイスを美味しいそうに食べている。
どれだけ食べるのよ……。
私の財布がもう……。
「ふぅー」
サーティツーを食べ終えた蓮が息を吐く。
「美味しかった」
「それは良かったわね。もうそろそろやめてちょうだいね。私の財布がピンチなのよ」
「むっ。わかった」
蓮は少し残念そうな顔をしながらうなずく。プリラブ
「次はどうするの?僕なんかこういうところに来たときはプリラブを取るって聞いたんだけど」
「え?蓮プリラブのこと知っているの?」
「うん。たまたま歩いていた高校生っぽい人がその事を話していたんだよね」
「へぇー」
プリラブとは撮った写真が撮った写真の自分を盛ることができ、その他にも落書きなど色々なことができるものだ。
今どきスマホとかで簡単に盛れるのに、わざわざ400円を払ってまでプリラブを撮るのかは私もわからない。
「じゃあせっかく来ているのだし、プリラブも撮りましょうか」
「うん」
私達はショッピングモール内にあるナムキに向かった。
ナムキの奥に置かれているプリラブに蓮と一緒に入る。
「うん?このポーズを取ればいいのか?……こうか?」
四苦八苦しながら一生懸命ポーズをとる蓮を横目に思いを馳せる。
……プリラブを撮っている人も私と同じように思い出の形として何かを残そうと撮っているのだろうか。
私が普通の女の子で友達もいれば、何回もプリラブを撮っていたのだろうか。
私がそんな事を考えていると、撮影が終わりタッチパネルのところで落書きなど色々なことを行った。
主に蓮が。
聞いたところによると現代の文明の機器を使ったのはこれが初めてらしく、蓮が使った最新鋭の文明の機器は無線だそうだ。
ちなみに蓮はもともとぱっちりおめめなので、プリラブで盛られた結果目がすごく大きくなってなんか化け物みたいになってた。
蓮ほどの美少年だと変に加工するよりそのままのほうがいい、ということがわかった。すごいね。美少年って。
「ふふー」
蓮はプリラブのシールを持ち、満足気にうなずく。
「じゃあそれじゃあ帰ろうかしら。そんなに楽しいのならば、別に今度また来ればいいだけだしね」
私は特に何も考えず発言した、なんでもない普通の一言だった。
だが、
「……そうだね。楽しい、か」
蓮にとって私の一言はなんでもない普通の一言ではないようだった。
「ははは、そう、だな」
蓮は今まで私に見せていた笑顔とは違い、儚くどこか危うげなえ身を浮かべて笑った。
「もう飽きたよ」
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