第7話
「あのー、失礼します」
突然、コンコンと部室の部屋をノックする音が部室に響き、がちゃりと部室のドアを開けて、一人の男が入ってくる。
「あっ……」
「あれ?」
「お?玲香ちゃんと蓮じゃないか!そうか!玲香ちゃんはオカルト部だったな!蓮もオカルト部に?」
「そうだよ!それで?天下のサッカー部様がこんな弱小部活に何のよう?あ、もしかしてサッカーが嫌になってオカルト部に逃げたきたの?新入部員なら歓迎するよ?春木」
春木、松岡春木。
クラスの中心人物で、学級委員長も務める陽キャ。
頭はとてもよく、運動神経も抜群でサッカー部に所属している。
顔も整っていて、女子からの人気も高く、もうすでに二桁の女子から告白されているという。
ムカつく人だ。
何もかもを持っている。
欠点なんてない。
私と違って。
あぁ。神様は理不尽だ。
「いやいや、俺はサッカーが好きだからな。やめたりはしねぇよ。ただ、うちの学校の七不思議を知っているか?」
「あぁ、うん。知っているよ。それで?七不思議がどうしたの?」
私達の学校の通っている七不思議。
旧校舎、魔の十三階段
動くへなっしー
誰もいない音楽室で囲碁・将棋を打つ音がする
動く創立者である山口さんの像
水中に教師を引きずり込む生徒の霊
鏡の中の恋人
そして、トイレの花子さん
これが我が校に伝わる七不思議である。
まぁそんなにこの学校の七不思議なんて有名じゃないけど。
「いや、うちのマネジャーが用事で夜遅くまで残っていたらしんだけど、そのときにトイレの花子さんに会ったらしくてな。本人はすっかり怯えてしまってな。それで、オカルト部のことを思い出したやつがいて、そいつがオカルト部に実際のところを確認してもらおうかと。確認しようとしたやつもいたが、その子が全力でそんなことしないで、って訴えるから手詰まりでよ」
「なるほどね」
……バカバカしい。
それくらい自分たちで探せば良いものを。
「いやーそれにしてもよかった。ここにいたのが玲香ちゃんと蓮で。これなら安心して任せられる」
……ん?
「あはは、僕はともかく玲香なら頼りになるよねー」
……んん?
「ハッハッハ!そうだな!」
……んんん?
んんんん!?
え?ちょっと待って。私一言も行くなんて……!
「ちょ」
「いやー、これであの子の不安を取り除いてやれるわー」
「いや、ま」
「よかったよかった」
「あ、だから」
「じゃあ、任せるわー」
「わ、わた」
「おう。そっちも部活頑張れよなー」
「や、やらな」
「おう!任せろ!全国まで突っ走ってやる」
「き、きい」
「応援してるよ!」
「だ、だから」
「ありがとよ!じゃあな」
結局私の声が届くことなく無視されて終わってしまった。
……結局私なんて眼中にない、ってことね。
はぁー。
「はー、体の良いお払い箱じゃない?これ」
今まで浮かべていた嘘くさい笑顔をとき、素の表情で吐き捨てる。
「……私は断りたかったのだけど」
「はぁ?断ったときのメリットとデメリットが釣り合ってないよ。人間関係ってのは思っているより重要なんだ。社会に出たら嫌でも人間関係は大事にしないといけない。その備えとでも思っておけば?」
……私は……。
いや。
今、私には蓮が居るのだ。
前とは違うのだ。
そう、なのよ。
「はぁー、とりあえず今日中に探すかー」
「え?本当に探すの?」
「おん?当たり前だろ。受けちまったんだから」
「どうせいやしないわ。明日、そんなモノいませんでしたっていえばいいじゃない」
「ん?……あぁ」
蓮は一度首を傾げた後、納得したようにうなずく。
「そかそか。普通は感じないんだったね」
「え?」
なんか嫌な予感する。
いや、でもオカルト部からしたらいい予感?
「人ならざるものなら意外といるぞ。この学校にもちっちゃいやつの気配をひとり感じるからな」
「え?えぇぇぇぇぇええええええええ!」
予想していたとはいえ、実際に聞くとかなり驚かされる。
ほんとにいたんだ……。
いや、今私の前にいたか。
「だから、受けちまったんだからしっかり対処しないと」
「……本当に居るの?というかいたとしてもあなた以外の人に感じれるの?」
だが、今までこの学校でトイレの花子さんを見た。なんて人は見たことないし、話すら聞いたことない。
「一部なら。ごく僅かにそういうのを感じれる人がいるよ。僕は結構前にそういうのが見えてしまう少年に会った事があるし。でも、なんとなくわかる人ならともかく、はっきり分かる人は普通の世界にいないから。霊媒師ってのはだいたいインチキ。お坊さんみたいに長年修行してればなんとなくでの感覚くらいは身につくが……」
へぇーそうなのね。
じゃあテレビかとの人にも本物の人がいるってことね。
ふふふ。
本当に今更ではあるけど、非日常って感じがしてとても楽しいわね。
「あ、そういえば聞きたいんだけど、この学校の七不思議ってどんなの?」
「あれ?知っているって言ってなかったかしら?」
「ん?あんなの嘘に決まってるんじゃん。まだ僕はここに転校してから一ヶ月も立っていないんだよ」
「……そういえばそうだったわね」
「ときには嘘も必要なんだよ。それで、どんなのなの?ここの七不思議は」
「旧校舎、魔の十三階段。動くへなっしー。誰もいない音楽室で囲碁・将棋を打つ音がする。動く創立者である山口さんの像。水中に教師を引きずり込む生徒の霊。鏡の中の恋人。とかね」
「ふむふむ」
「へなっしーとかは確かなしの誘惑に耐えきれず拾ってしまい、退学になってしまった人たちの怨霊の固まりの化け物らしいわよ。別にどっかのご当地キャラじゃないみたいよ。ここははしゃぎまわるなしが居る市ではないからね。知名度は周りの市と比べてものすごく低いし。」
「なるほど。……え?ここってなし拾うと退学なの?」
「えぇ、そうよ。学校の近くのなし園のなしを勝手に拾ったり採ったりしたら普通に退学よ」
「へぇー。それにしても個性的なのが多いんだね」
「まぁ。この七不思議自体オカルト部がこの学校と絡めて考えたものらしいしね」
「あ、オカルト部が考えたんだね」
「えぇ、そうよ」
この七不思議がオカルト部の歴史の中で唯一学校に干渉したことじゃないかしら。
……あら?だったらトイレの花子さんは?
よくあるやつだけど。
もしかして昔のオカルト部の人にそういうのを感じられる人がいるのかしら?
いや、考えすぎね。
「ふーん。まぁとりあえずは花子さんだね。今日の夜に探そう」
「わかったわ」
不本意ながら、初めてオカルト部らしい活動をすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます