第23話

 次の日

朝8時 東京駅で石川さんと待ち合わせた。

おはよう!と石川さんは、にこやかに手を振ってきた。

「おはようございます。」

「あはは!めっちゃ にらんでんじゃん!

お忙しいところ、すみませんが、今日はよろしくお願いします。」と頭を下げられた。

「イヤミですか?全然忙しくないので。私は。」

「あはははは!じゃ、行きますか!とりあえず、新幹線で長野でいいんだよね?」


グリーン車!!

初めて乗った!!

え〜〜!!スゴイ!!

シート全然違うんですけど〜!!


普通車の指定席は、混んでいるようだったが、こちらはガラガラだった。

私達以外に、だいぶ離れて2人いただけだった。


「沙希から、君のことは聞いていたよ。

本当に仲良しなんだなって思っていたよ。

だけど、俺とのことを聞いたのは、俺がいなくなってからだったでしょ?

ずっと、口止めしてたからな。

俺とのことは、誰にも言わないでって。

沙希は、君には言いたそうにしてたけどさ。」

「そりゃ、口止めしますよね!取引先の社長の娘さんとの結婚決まってたんだから、バレて破談になんかなったら、困りますもんね。

そんなこととは知らずに、沙希ちゃん黙ってましたよ。私にも。

私が聞いたのは、5月の入社2年目研修の夜でした。4月は、沙希ちゃん体調を崩して何日も会社休んでましたよ。」

「そうか。」前を向いたまま、石川さんはそう言うと、黙り込んだ。

私も、黙ってスマホをいじっていた。

30分くらいたって、

「あれから沙希には、恋人ができたのかな?」と、私を見た。

カチンときた。

「あの!それ、石川さんに関係ありますか?

婚約者いたのに、それを黙ったまま二股かけて、結婚決まりました!はい!さよなら!って、犯罪ギリギリなんじゃないですか?

沙希ちゃん、考えてみたら、石川さんから、好きだって言われてもいなかったって、貰ってばっかりで、お金とられたわけでもないし、騙されたってゆうか、自分が勝手に勘違いしちゃってただけだったのかも。って、そう言ってましたけど、

別れること前提の付き合いだったから、好きだなんて うかつに言わないようにしてたってことですよね!!

本当にゲス野郎じゃないですか!!」

ちょっと、興奮して、マシンガンのように文句を言った。

「確かにな……」

そう言うと、石川さんは、また黙り込んだ。

冷静になってみると、ゲス野郎は言い過ぎだったか……

陰口ならまだしも、本人にそれをぶつけるのは、ちょっとキツかったな。

「すみません……思ってたこと、全部口にしてしまいました。少し言い過ぎでした。」

「いや、もう本人いないからね。代わりに文句言ってもらえて良かったよ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る