第16話
なんの進展もないまま3ヶ月が過ぎてしまった。
その間も、私は毎日諒くんのリハビリに付き合っていた。
「諒くん!スゴいじゃん!
こんなに歩けるようになって!!」
諒くんは、振り返りとびっきりの笑顔で、
「茜ちゃんのお陰だよ!ありがとう!
沙希の一周忌には間に合わせたいし!」と言った。
「そっか。そうだね。頑張ろう!」
沙希ちゃん……
わたし、沙希ちゃんに隠してたことがある……
わたし……
諒くんのこと、好きなんだ……
初めて会った時、ビビってきたの。
だけど、その時は沙希ちゃんと付き合い始めたところで。
諒くんは、沙希ちゃんに夢中で。
わたしが、諒くんを好きだなんて言える感じじゃなかった。
これ以上、好きにならないようにしようって思ってた。
諦めてたけど……諦めきれないでいた……
親友の彼氏を好きなんて、誰にも言えないし。
沙希ちゃん誘ってくれて、諒くんと3人で遊びに行ったり、飲みに行ったり。
どんどん好きになっちゃって、一緒に遊んだりしないで、距離をとって、離れていれば諦められるのかな……なんて考えたり。
沙希ちゃん死んじゃって、諒くんと毎日リハビリ一緒にするようになって、やっぱり私……
諒くんのこと大好きだ!
だけど、諒くんが好きなのは、きっと いつまで経っても、沙希ちゃんなんだと思う。
だから、やっぱり……諦めなきゃいけないんだろうな。
ごめんね、沙希ちゃん
内緒にしてて……
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沙希ちゃんの、一周忌法要
私は、東京駅で諒くんと待ち合わせて一緒に行った。
高崎から、美鈴さんも新幹線に乗ってきて、合流した。
大勢の人が、集まった。
沙希ちゃんの人柄からだろう。
諒くんは、沙希ちゃんの家の前から、ずっと泣き続けていた。
「諒くん!ダメ!ダメ!せっかくのイイ男が台無しでしょ!沙希にいい顔見せてあげてよ〜!
はい!はい!もう泣かないの!!」
沙希ちゃんのお母さんにそう言われたけど、諒くんは法要の間も泣き続けていた。
「諒くん、あなたが沙希のことを大事に思ってくれてたこと感謝してるわ。ありがとう。
でも、いつまでも立ち止まってないで、もう前に踏み出さなきゃダメよ。
沙希は、あなたが幸せになってくれることを願ってるはずだから。
あなたは、沙希のことは、もう過去の人ってくらいに思って、前に進めばいいのよ。
沙希の分も、幸せになってちょうだい。」
お母さんにそう言われても、諒くんが泣き止むことはなく、泣きながらタクシーに乗って帰って行った。
あんな状態の諒くんを1人で帰らせるのは、心配だったけど、私は美鈴さんと帰らずに残った。
せっかく、長野に来たのだから、いろいろと調べたいと思っていたから。
1年も経ってしまったのに、私はまだ沙希ちゃんの忘れられない人を見つけることも、気持ちを伝えることも出来ずにいた。
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