第17話

 この前、お正月にきた時に話を聞いた、美術部の河合さんが私達に声をかけてくれた。


「陸上部に好きな人いたのかな?って、この間聞かれたでしょ。

それで思い出したんだけど、沙希ちゃん同じクラスの仲良い子で芳村祐さんって子がいて。」

「あぁ、芳村さんわかるよ!話をさせてもらったから。」

「その芳村さんが、陸上部の酒井俊平くんを好きで追っかけしてて。沙希ちゃんと、砂川さん、応援してたってゆうか、協力させられてたってゆうか。

私は、クラスも違ったし、芳村さんはちょっとニガテなタイプだったから、大変だね〜って、沙希ちゃんによく言ってたのを思い出して。

沙希ちゃんが好きだった人の話じゃないんだけど。」と、言って髪を耳にかけた。

「それで、芳村さんと酒井くんは、付き合ったの?」

「ううん、酒井くん断ったって聞いたな〜。

そういえば、酒井くんて今も陸上やってんのかなぁ。箱根駅伝にも出たくらいで、地元じゃだいぶ盛り上がってたけど、高校は県外の陸上の強豪校へ行っちゃったから、地元から離れてちゃったんだよ。

あっ、全然役にたたない話でごめんね。」

「ううん、河合さん ありがとう。」



「茜ちゃん、どう思う?」

「えっ?どう思うって?」

美鈴さんに聞かれて、慌てて振り向いた。

「陸上部がすごく重要な気がするんだよね。」

「でも、中学も高校も、陸上部の男子とは接点がないみたいだけど。」

「前に、茜ちゃんが会った高校の友達、沙希は他校の陸上部の人を好きだったんじゃないかって思ってたって言ってたよね。」

「あっ、うん。言ってた。」

それから、美鈴さんは目を閉じ、だいぶ長い間考えているようだった。

「想像してみて!接点なんて、そもそも ないんだよ!

片思いで、話もできない。好きだけど、好きって言えなかった。それが心残りだった。」


忘れられない人がいるの。

気持ち伝えたかった……


沙希ちゃんの最期の言葉


美鈴さんがいうように、片思いだったのかな。

「じゃ〜、さっきの酒井俊平くん調べてみる?

陸上部のスター的な人みたいだし。」

「そうだね。医者の息子もみつからないし、初めて出てきた名前だからね。そこから、調べてみるしかないかもね。

中学の陸上部の誰かって、他の名前が出てくるかもしれないしね。」


出身中学と箱根駅伝に出てるってゆうヒントだけで、こんなにも簡単にみつけられるんだ!ってくらいあっさりとヒットした。

今現在は、母校の神奈川の大学で陸上部のトレーナーをしていることがわかった。


「会いに行く?」

「うん、どこまで話せばいいかな?」

「それは、会ってみた感じじゃない?」

「そうだね。」

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