第14話

 お正月

美鈴さんと2人で、長野の沙希ちゃんちへ行くことにした。

沙希ちゃんのお母さんは、相変わらずのハイテンションで喜んでくれた。

「今年のお正月、沙希はいないし、お父さんと2人でどうしようかと思ってたのよ〜!いっそのこと、ハワイでも行っちゃおうかなんて思ったりしたけど、さすがにそうゆうわけにもいかないじゃない!あはははは〜!」

「なんの遠慮もなしで、自分の実家のつもりで、くつろいでいってくれよ。」と、お父さんも言ってくれた。

「おじさま、ありがとうございます。」


 地元の友達が何人かお線香をあげにきた。

帰りがけ、声をかけて、少し話を聞かせてもらった。

小学校の時に同じクラスだったという、三浦さん。

「中山さんは、明るくて元気な人だったな。

元気だったけど、おとなしくしていたよ。

病気のせいで、おとなしくしてなきゃいけなかったんだけど、ほんとは体育もやりたかったんだろうな。

私、体育 得意じゃなかったから、中山さんに見学でいいよね!って言っちゃったことあって。

そしたら、ツーって涙流したの。

大きな声で怒ったり、ワァワァ泣くんじゃなくて、ツーって流して、俯いて……

その時、ほんとに言っちゃいけないこと 私言っちゃったんだ!って思って。

その後、すごい反省して、謝ったんだ。

そしたら、中山さん、全然いいよ!気にしてないよ!って言ってくれて。

やれるのに、やらないのは もったいないよ!やれること、精いっぱいやれば、楽しくなるよ!って言ってくれたの。

それ、ほんと忘れられないよ。

その言葉、スーーっと胸に落ちてね、イヤだなと思っても頑張ってみることにしたの。

そのおかげで、嫌いだったけど、好きになったってこと沢山あって!

ほんと、中山さんのお陰って思ってる。

そんな気持ちも伝えられないままだったけど……」

「ありがとう!大丈夫!沙希は、わかってるよ!

全然いいよ!!って笑ってるよ!」

美鈴さんの言葉に、私はただ泣いていた。


「沙希ちゃん、いい人だったんだね!」自分で言って、いい人だったって言葉に笑ってしまった。

「うん、そうだね!いい人だったよ。

私が出会うずっと前から いい人だったってわかって、ほんと良かった!」

「そうだね。」



次の日

中学の美術部で一緒だったという、河合さんが来て、話をすることができた。


「美術部ってさ、絵を描くのが本当に好きな人って半分くらいで、あと残り半分は運動苦手な人がしょうがなく入るんだけどね。

沙希ちゃんは、病気のこともあったし、完全に後者だと思ってたの。あんまり やる気ないんだろうな〜って。

でも、全然違ってたの。

誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで残って描いてたよ。

ここの景色が好きなんでって、雨の日以外は外に出て描いてたなぁ。」

「校舎の横の土手ですよね?」

「あっ!そう!桜並木だから、綺麗なんだけどね。

普通スケッチは外でして、色づけは室内が当たり前なんだけど、沙希ちゃんは色付けも外でするんだもん。どんだけ日焼けしたいんだ?って笑われてたけど。

高校に入って、陸上部に入ったって聞いて、あぁやっぱり!そうか!って合点がいったってゆうか。」

「どうゆう意味?」

「ずっと走りたかったんだろうなって思って。

陸上部が土手を走ってるから、私なんかは陸上部ジャマって思ってたくらいだったけど、沙希ちゃんは、景色と一緒に陸上部を見ていたんだなぁって思った。

走りたいなぁって思ってたんじゃないかな〜。」

「そうだったんだ。」

「ねっ、陸上部に好きな人とかいたのかな?」

「えっ?う〜ん……考えたこともなかったけど……沙希ちゃんは、男子とほとんど喋らない感じだったから。

美術部員だって、男子とはあんまり喋ってないんじゃないかな。

沙希ちゃんが好きだった人って思い浮かばないや。」

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