第11話
次の日
沙希ちゃんのお墓参りに行った。
ちょっと、小高い丘にある霊園だ。
「きれい。」
紅葉が、とても綺麗だった。
沙希ちゃんの絵に描かれてたのも、秋の紅葉の絵が多かったし、お墓から見えるこの景色、沙希ちゃん好きだろうな。
沙希ちゃん
来たよ。ごめんね。遅くなっちゃって。
沙希ちゃんが伝えたかった想いを、伝えたいんだけど、まだわからなくて。
もうちょっとかかっちゃうけど、待っててね。
絶対捜すから。
♪〜〜〜〜〜〜
その時、携帯がなり、画面を見ると、諒くんだった。
「もしもし、諒くん?」
「あっ、茜ちゃん?美鈴さんに聞いたけど、沙希んちに行ってんの?」
「うん、そう。
今、沙希ちゃんのお墓に来てるよ。」
「お墓……」
その後だいぶ沈黙が続いた。
「俺、まだ、行けてなくて……
茜ちゃん、悪いんだけど、携帯お墓に置いてくれない?沙希に話したい。」
「うん、いいよ。置くね。」
「…………沙希…………
ごめんな……
沙希、
俺だけ生き残っちゃって……
一緒に逝ってあげれなくて……
一緒に逝きたかった……
沙希!沙希!沙希……
俺を一人にしないでくれよ……沙希…………」
離れていたけど、静かな霊園に、諒くんの嗚咽がいつまでも響いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数日後
「ごめんね!茜ちゃん!この間。」
美鈴さんからの電話だった。
「茜ちゃん、長野に行ってるって、諒くんにポロっと喋っちゃって。
でも、例の話は、絶対絶対内密にするから、信用して!」
「信用してるよ〜!美鈴さんのことは。
だけど、諒くんまだ全然立ち直れてないんだね……」
「そうだね。……なんかさ、わたし、弟2人いるからさ、なんか、諒くんって弟みたいな感じがしちゃってて、超説教しちゃったよ。
“あんたがそんなんでどうするんだ!沙希が悲しんでるのがわかんないのか!”って
そしたらさ、泣いちゃってさ……」
「えっ?」
「励ますつもりで会いに行って、泣かしちゃうんだから、世話ないよね。
一番辛いの諒くんだってわかってんだけど。
ついつい説教になっちゃうんだよね私。
当分の間、諒くんに会わないどこうって思ってるよ。悪いんだけど、茜ちゃん、慰めといて。」
「あっ、うん。それは、いいけどさ。
もうじき、5ヶ月経つけど、リハビリどんどんしないと仕事だって復帰できないよね。」
「それ!
だからさ!そもそもインストラクターなんだから、なんなら職場でリハビリしてればいいのよ!プールでも、ジムでもさ!とにかく、やろうって気がないんだよ!」
「そうだよね……」
諒くんと沙希ちゃんの出会いは、スポーツジムだった。
若くてカッコイイ インストラクター入ってきたんだよ〜!茜も一緒に行こうよ!って誘ってくれて、私も行ってみた。
「中山さんのお友達ですか?山村諒です。
よろしくお願いします!」
それが、私と諒くんの出会いだ。
私は、一言で言うと、平凡な人。
これという特技もないし、熱中する趣味もない。
就活で、何十社も受けては落ちて、奇跡的に入れたこの会社でも、配属された部署は、重要な仕事もなく、割りとノンビリとしていられる。
やりがいがある仕事ではないけど、普通にそこそこのお給料が貰えて、そこそこの生活ができる。
だから、別に不満もなかったし、それでいいじゃん!!と思っていた。
高望みはしない。
ムリっぽいことには、最初から手を出さない。
好きな人ができても、片思いで告白もしない。
告白してもダメだろうから、諦める。
そんな生き方をしてきた。
東京生まれ、東京育ち。
共働きのサラリーマンの家庭で、3人姉妹の真ん中で育った。
姉はとてもしっかりした人で、優秀な人だ。
妹は、とても愛嬌があり、みんなから可愛い可愛いと言われるような子だ。
私は、なんの取り柄もなく、普通な人だった。
中学校時代は、バレーボール部に入った。
部員数も多くて、レギュラーにはなれなかった。
男子バレー部のカッコイイ先輩を好きになった。
片思いで告白もできないまま、先輩は卒業してしまった。
それから、今度はクラスメイトを好きになった。
同じクラスにいて、告白して断られたら気まずいから、告白はできなかった。
片思いのまま、卒業して、その人とは別の高校に進学して会えなくなった。
高校では、テニス部に入った。
誰でもエントリー出来るような大会に出させてもらうくらいで、大した活躍もなかった。
同じテニス部の男の子を好きになった。
仲良くなって、何人かで一緒に遊びに行くようになった。遊園地とかカラオケとかゲーセンとか。
でも、個人的な付き合いにはならなかった。
高校3年の夏に、同級生に告白された。
初めて告白されて、嬉しかったから、付き合ってみることにした。
だけど、お互いに受験生で忙しく、デートらしいことは5回だけ。映画を観て、ファミレスで食事やお茶するくらいのデートで終わってしまった。
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