第9話
中学のクラスメイトで仲の良かった2人に会う約束が出来た。
「さーちゃんが死んじゃったなんて、未だに実感わかない……」
そう言って俯いたのは、砂川奈津江さん
「私だってそうだけど、いつまでもメソメソしてると、きっと さーちゃん怒るよ!
ねっ?」と、私に話を振ってきたのは、芳村祐さん
「そうだよ!私も辛かったけど、沙希ちゃんの最期を看取って、望みを託されたから。叶えたいんだ。」
「で?さーちゃんの最期の言葉って、何だったの?」
「ちょっと、それは言えないんだけど、いろいろ教えてほしいんだ。」
ふ〜ん、と芳村さんは怪訝な顔をした。
それでも、2人はいろんなことを教えてくれた。
小学校の時に、大きな病気で大手術をして、中学の時も体育はずっと見学だった。
沙希ちゃん本人は、すごくやりたくてやりたくてって感じだったけど、ドクターストップだった。
部活動は、美術部だった。
美術部の人たちは、だいたい教室の中で描いているのに、沙希ちゃんはいつも外で風景画を描いていて、運動部の人並みに日焼けしていた。
「私、テニス部だったから、ほんとヤなくらい日焼けしてたんだけど、さーちゃんと腕 見比べて、どっちが黒いかなんて勝負してたくらい。」
「それ、懐かしい……」と、砂川さんは小さく笑った。
「当時、沙希ちゃんが好きだった人って、誰かなぁ?」
「えっ!好きだった人?
基本的には、さーちゃんって、オトコ嫌いで。ね〜!誰とも仲良くしてなかったよね?」と、芳村さんは、砂川さんを見た。
「うん、そう!あっ、でも、オトコ嫌いなんじゃなくて、テレるって言ってたよ。私も、男子苦手だったから、なんかわかる〜って言ってたな。
だけど、ほら!あの人!えっとね〜、名前忘れちゃったけど、隣町の中学の1こ上の先輩!
私、会ったことはなかったけど。」
「そうそう!なに先輩だっけ〜!かっこいいんだよ!って言ってたよね。」
「芳村さんも会ったことはなかったの?」
「うん、ない!
確か、さーちゃんが行ってた塾で、毎回会う人なんだって!」
「あれっ、お医者さんの息子じゃなかったっけ?」
「あっ、そうかも!」
「じゃ、さ、同じ中学の同級生とかで好きな人とかはいなかったのかな〜?」
「いなかったと思うよ〜!ほんと、男子をさけてる感じだったもん。」
ファミレスで3時間くらい話をして、2人と別れた。
その日の夕方、今度は高校時代の親友と会うことができた。
根本詩織さん
物静かな感じの人だった。
「高校時代の沙希ちゃんは、勉強もできたし、部活もすごい頑張っていたよ!」
「何部だったの?」
「陸上部。私もだけど。」
「えっ!だって、小学生の時に大手術して、中学では体育もやれなかったってゆうのに、陸上部!?」
「そうなんだってね〜。親にも内緒で始めちゃたみたいで、秋の競技会にエントリーされてるの知って、親ビックリしてたって、沙希ちゃん笑ってたよ。
陸上部のマネージャーだって嘘ついてたんだって。」アイスティーの氷をストローで動かしながら、薄っすらと笑った。
「で、走れたの?」
「入ったばかりの時は、グランド一周で倒れ込んじゃって。こんなひどい新人いないって言われてたんだよ。
そりゃーそうだよね。5、6年も走ったことなかったんだから。
でも、どんどん走れるようになって、秋には競技会出たんだもん。すごいよ〜!」
「陸上って、よくわかんないんだけど、短距離走とかマラソンみたいな長距離走とかいろいろあるんだよね?種目ってゆうの?」
「うん、沙希ちゃんは5000メートル。
5000メートルってキツい種目でさ、もう最初から全力疾走くらいのスピードで5キロだからね。フィールドを12周半。
あれは、メンタルやられるもん。私はムリだったな。
沙希ちゃんは、すごい頑張り屋さんだった。」
そう言うと、手に持っていたハンカチで涙を拭った。
“沙希ちゃんは、すごい頑張り屋さんだった”
そうだよね!すごいわかるよ。
「沙希ちゃん、好きな人いたのかな?」
「いたんだと思うけど、教えてくれなかったな〜。いつも、私の相談にのってくれる感じだった。
でも、……ずっと思ってたけど、好きな人は、陸上やってた人だったと思うんだよね。」
「えっ?なんで?」
「うーん……なんで?って言われると……ただなんとなく、そう思ってただけだったけど……
好きな人がやってることを自分もやって、少しでも近づきたいってゆうのか……
近づきたいとは違うかな……
理解したいってゆうのか、なんか そんな風に感じたなぁ。
走り終わって、芝生に寝転がって、
“なるほど~、空がキレイ、楽しいな やっぱ”
って笑って。
誰かのことを思い出してるみたいだった。」
「先輩とか?」
「ううん、同じ高校の人じゃないと思う。
なんとなくだけど、他校の人じゃないかな〜」
他校の陸上部……
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