第3話

 その日の夜、石川さんから電話がきた。

「明日、なんか用事ある?」

「特になにもないです。」

「じゃ、ドライブに付き合えよ!」

そんな強引な誘いも、イヤな気がしなかった。


 次の日、待ち合わせの場所に車で迎えにきてくれた。

「ランクル、意外ですね。」

「えっ?意外かな?」

「あっ、なんとなくスポーツカーみたいなタイプなのかと思ったので。」

「そっかぁ?意外にアウトドア派なんだよ。」

そう言えば、ドライブって言われたけど、どこへ行くのか聞いてなかった。

年末だから、都内は道もすいていた。

高速にのり、3、40分くらい走ったのか。

私の左側に海が見えた。

「わ〜〜!!海!!海!!海見えましたよ!!」

「あはははは! 中山!おまえの出身地 当ててやろうか!」笑いながら、

「そうだな〜、長野だろ!」と言った。

「えっ!!なんでわかったんですか?」

「あはははは!一発目で当たったか!3択だったんだけどな。海見えただけで感動するのって、

海ナシ県の人だから。近畿でもないし、関東じゃないとすれば、長野、山梨、岐阜のどれかかな〜ってさ。」

「なんか、馬鹿にされてます?」

「あはは!馬鹿になんかしてないよ。今日のドライブ、海にして正解だったなって思っただけだよ。」

石川さんに的中されても仕方ないくらい、海を見るとテンション上がる。

それが、海ナシ県の特徴なのかは わからない。

ただ、長野の友達は、「うみ~〜!!」って、みんな絶叫してたな。

しかも、馴染みがあるのは新潟のザ、日本海!って感じの海だ。

荒々しい波が岩に打ち寄せる。

12月の海なんて、荒れてるイメージしかない。

だけど ここは 太平洋の海。

この辺りのことを湘南エリアって言うのかな〜。

真冬の海だとは思えない光景。

サーフィンをしてる人が大勢いて、海岸の砂浜を犬の散歩をしている人がやたらいる。

その砂浜では、キャンプ用みたいなタープを張って、テーブルとイスを置いて、ビールを飲んでいたりする。

一言で言うと、『オシャレな光景』だった!

「中山、おまえ上京したてか?」

「あ、いえ、大学は都内の大学なので、上京したてではないのですが、考えてみたら、こっちでドライブしたのって初めてです。いつも電車か、バス移動なので。」

「へ〜可愛いな〜!」

「どうゆう意味ですか?馬鹿にしてます?」

「あはははは!怒るなよ!だから、馬鹿になんてしてないって。」


車を停めて、海岸通りのカフェのオープンテラスで食事をした。

ここが日本だと言うことも、年末だということも忘れさせられるような感じだった。


4月に入社してから、石川さんと同じ部署にいたけど、仕事以外の話をしたこともなかったし、ってゆうか、石川さんは超仕事の出来る人だったから、仕事の話すら私みたいな新人が出来るような人ではなかった。

石川さんの私服姿も初めて見たな。

普段は、スーツをピシっと着こなしている。

髪もいつもは、ワックスか何かであげてるってゆうのか、流してるっていうのか、おでこを出してる感じだけど、今日はナチュラルに前髪をおろしている。

割りと、よく話すし、私の話も聞いてくれる。

あはははは!って楽しそうに笑う。


なんだか、すべてが新鮮だった。





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