とにかく、初期研修医頑張ってます。

川線・山線

第1話 前書き

“Time flies like an arrow.”

 中学生の息子が、頑張って基本文を覚えている。「光陰矢の如し」。あっという間に人生は過ぎ去ってしまうが、自分の人生を振り返ると、そこにはいくつかの区切りがあるはずである。義務教育のころ、高校生のころ、社会人になってからのころ、そのように自分の人生をそれぞれの時代で区切ることができるだろう。


 いつの間にか、落ち武者のように頭の中央部のボリュームがずいぶん薄くなり、ごま塩のようにまだら頭になってしまったヤブ内科医である私にも、何をしてよいのか分からず、右往左往したタケノコ初期研修医の時代があった。あの頃を舞台に、少し何か書いてみようと思い立った。


 この物語には、涙が出るようなエピソードも、感動を誘うようなものも用意していない。医学部を卒業し、何もできない初期研修医として仕事を始め、悪戦苦闘した日々が、研修医自身の目を通して書いてある。悩む暇もなく、猛ダッシュで彼は初期研修医2年間を駆け抜けた。たとえて言うなら、新人が受けるブートキャンプであろうか。


 おそらく初期研修制度や、研修のシステム、研修のゴールも彼の時代と今とではずいぶん異なっている。


 もちろん登場する研修医や指導医はみな仮想の世界に生きている。ただ、著者が今でも心に残っていること、そのエッセンスは伝わるように、登場人物みんなが動いてくれている。

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