第7話★いろいろな畑★
農家にとって、畑というのは土の事ですが。
営業マンにとって、畑とは担当エリアのことです。
会社にとって、畑とは、部署のことです。
言葉は表現の畑に伸びる樹の葉です。
言葉の畑には、いろいろな土壌があります。
男性にとって、女体は、畑です。
女性にとっては、自分の体が畑です。
人にとって、立場によって、耕し世話をする畑は、変わるものです。
水や肥をやり
虫取や病気の見回りをして
花が咲いたと喜び
実がついたと喜ぶものですから
苦労も報われるというものです。
金(職)や知識をやり
悪い奴をひっぺがし、
病気になっていないか確認する。
話が通じると喜び
身に付いたと喜ぶものですから
苦労も報われる。
私は、老いの扉を開けたとき
そういう世界が見えていることを
知っています。
そういう世界が見えない人は
よほど、言葉を知らずに過ごしたのだと
思います。老いを知らない人が、老いてしまったわけですね。情けないことに。
バーナーを使って火をつけるばかりでなく
時にはマッチを擦ってみればよかったんです。
労を惜しむから、老いの扉を開けるのが
ますます怖くなるでしょう。
私は、それは、怖くない。
知っているから。
怖いのは、時の流れを知らずに
そのときの気持ちのまま、
ものを操ることです。
老いた身で、若い恋をする姿は、恐ろしいです。
老い楽の恋というものは。
老いにふさわしい技を持っています。
きれいな白髪に、ときめいてもらえたら
髪を愛してもらえばいいのです。
それを、体の関係を求める老いは醜い。
考えを愛してもらえたなら
思いを交わし会えばいいのです。
姿を見せる必要はない。
そういうことが、老い楽の恋です。
断定的な表現では有りますが
私の老方は、そういうものです。
…続
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