第13話成仏

成仏




「はなせ! 放さぬかっ! 妾はあのお方の所へ行かねばならぬのじゃー」


 それが一番印象的な言葉です。

 聞き取れない言葉もたくさんありました。

 もう、覚えていない言葉も。

 でもそれで、探している相手というのが『あのお方』という事が、誰にでも分かります。


 暴れていたのがゆっくりと静かになって、あゆむがダイブから戻ってきました。

「よっしゃ、だいぶわかったわ」

「なんか、妾はあのお方の所へ行かねばならぬのじゃあー、とか言ってたで」

「はははっ。あのお方は、恋人みたいな感じかな。

よっぽど、離れ離れにされるのが、耐えられへんかったみたいや。

これで、あのお方の気配わかったから、呼び出して連れてってもらう。

ちょっと、またダイブするから…。


んー。


いや、おる。この気配、そばにおるわ。


そーかぁ、ずーっと傍に付いて、居たんや」


「えっ、どーゆう事。一人で納得してないで教えて」

「ごめん。

あんなぁ、あのお方は、いつからか知らんけど、妾の傍にずっと居ってん。

でもな、妾は死んだ夜のまま時間が止まってんねん。

あのお方が隣に立ってても、いる次元が違うから、見えてないんや」

「じゃあ、どうすんの」

「探して連れて来るのは、結構大変やなと思てたんや。

見つけられるか、どうかと思てたけど、

むしろ好都合や。

そーいう事で、もう一回行ってくる。

行って妾に見せてくる」


 再び押さえる準備をしましたが、その必要はなく、あゆむはすぐに帰って来ました。


「行ったわ」

「成仏したん」


「まぁ、そんなトコ」


 

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