第12話妾はあのお方の所へ行かねばならぬのじゃ

妾はあのお方の所へ行かねばならぬのじゃ



「あゆむから逃げ出して、憑依、逃げ込む先になったら困るからって、可能性のある人は、みんな外に出してん」


 さっき、蚊帳の外だったのが、裏目に出ました。


「この娘、誰かを探してる」

 すくっとあゆむが起き上がって報告します。

「あれ、平気なん」

「こんなん全然大丈夫や。ちょっと意識に潜っててん。

で、この娘、めっちゃ誰かを探してる。半狂乱なくらい。

あと、今日みたいな、雷雨の夜に死んでる。もう、何百年も前ちゃうかな。

今見る着物より、もっと昔なカッコしてるし。

憑依と言っても、

たまたま、夜の雷雨とかの条件と、

二人の恐怖心とかの波長が合って、シンクロしただけやな。

霊も何が起こったか、わかれへんって感じや。

とりあえず、悪意はない」

「じゃあ、さっきの技使わんかったらどーすんの」

「そーやねん、探してる相手とか、もうちょっと知りたいから、今より深いとこ潜ってくる。

そしたら、私の意識なくなると思うから、

急に走り出したりしないように、身体抑えといてほしいんや。

でな、抑えてる人は霊の逃げ込み先、憑依されるリスクが高いから、

○○さんと、○○さんと、○○さん、アトしのぶちゃん、お願いするわ」

 私が、名指しで呼ばれていたのは、このためでした。

「憑依されたらどうすんの」

「だから逃げ込ませへんための、布陣やん!」

 あゆむの表現を借りると、魂がカタい人を選んだとか…。


 スタンバイを確認すると、あゆむは霊の意識へとダイブしていきました。


 しばらくすると、予告どうり、あゆむが暴れ始めます。

「すごいチカラ」

「うん、女の子の出せる力じゃない」

 必死に抑えながら、口々に状況分析が始まります。

 それほどの力やないやろと思っていた私は、

「あんなぁ、自分の気を膨らませて、漬物石乗せるようなイメージで、気を乗せんねん。そしたらそんなに力いらんで」

「そんなんでけへん」

一瞬で却下されました。


 そうしているうちに、あゆむ、霊がしゃべり始めました。


「はなせ! 放さぬかっ! 妾はあのお方の所へ行かねばならぬのじゃー」



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