第9話お持ち帰り
お持ち帰り
「もう一回、集まれないかな?」
しげちゃんから電話がかかって来たのは、恐怖の天河キャンプからすぐの事です。
「あゆむがな、みんながあの時の霊をつれて帰ってるから、祓いたいって言うてんねん」
あれ、あゆむってそんな事できたっけ?
と、思いながら、レーサーが行けないと言うので、私はバイクで駆けつけました。
着いてみると、まだほとんどの人が来ていません。
ポツリポツリと集まりだすと、
「あれ? ○○まだ来てないの? おかしいなぁ」
そんな言葉があちらこちらで、聞かれます。
携帯がつながらなくて、こちらからは連絡が取れない。
向こうからも連絡がない。
それでも何とか、遅れてやって来ます。
「何回もかけてたんやけど、全然出てくれないし」
「いや、一回もコール鳴ってないで」
それは、双方どちらからでも言えることでした。
「うわ、霊が得意の電波妨害やっ!」
だれかがおどけて言いました。
そんな話をしていると、一番最後に”ゆう”が遅れて来ましす。
「もう、いっつも使ってる電車やのに、ありえへん乗り間違いした。途中で、あれっ! どんどん離れて行ってないか? って気ぃついて、引き返して来てん。遅なってなってごめん」
「しゃあないわ」
遅れてきた、ゆうを責める人は、一人も居ません。
祓われまいと、霊が抵抗している現象だと、誰もが実感しているからです。
さて、今日の参加者全員がそろった所で、しげちゃんの広い部屋へと通されました。そこで車座になって座ります。
あゆむが一人ずつの前に立ち、じっと見て確かめていきます。
「ユウ、親玉お持ち帰りしてたん、あんたや」
「えっ、うちなん」
「ユウ~。思い当たること…、あーるーやーろぉ~」
「ううん、大火傷しそうになった」
「なんでそれで、自分は関係ないって顔してんねん。で、何があった」
「学校で、毎朝、みんなの飲む分まとめて、麦茶を沸かしてるんよ。15リットルくらいの業務用のでかいヤカンで。
で、その時に限って、沸騰したヤカンの取っ手を、逆手に持ってん。
そしたらヤカンが手に触って、熱っ! ってなって一瞬落としかけたのに、みょーに冷静になってそのヤカンを流しに置いてん。
アレ、逆手に持ってたから手ぇ放してたら、胸から下、熱湯浴びてえらい事になってた。
なんせ15リットルやし。
でなー、一緒にいた友達に言われてんけど、
それまで普通に話してたのに、ヤカンを持つ瞬間急に、うち、ぼーとしてたんやって。
後で友達に、!なんであんな持ち方したん、危ないやんか! って、めっちゃ怒られた」
「ユウー…。まずあんたは、真ん中行って!」
霊が付いている者は中央へ、連れ帰っていなかった者は外へ移動しました。
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